転生 -1-
初投稿で拙い文章ですが読んでいただけたら嬉しいです。
俺は親友と飲んだ帰り、交差点を渡っていた時に急に発作が起きてそのまま世を去った。25年の人生、とくに悩みも不満もなかったけれど最期はあっけないものだった。
一緒にいた親友には悪いことをしたと思う、最後まで面倒をかけてごめん……。
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まぶしい……
白いカーテン、白い壁、白い寝具、白を基調にしたこの部屋には光がまぶしいくらいに入り込んでくる。
最初は天国かな? と思ったがどうやら違うようだ。まぶしさから腕で顔を隠した時に気が付いた、腕も指も妙にむちむちしている。まるで乳児のような……
というか乳児だった。言葉は話せないし寝返りも打てない。
うそだろ?
最近まで成人男性だった記憶のある俺には乳児として対応される日々はなかなかに辛いものがあった。が、それも過去の事。努力の甲斐もあり大人の手を離れるのはかなり早かったのではないだろうか。
寝返りの練習は頑張ったし、立ち上がる練習はもっと頑張った。そして今ではひとりで歩けるようにもなり、乳幼児のあの巻くタイプのあれも卒業できた。
とはいえまだひとりで部屋から出ることはできないから、もよおした時は連れて行ってもらっているが気持ち的にはだいぶ楽になった。
着替えとしゃべることはまだ苦戦中だ。それとうすうす感じてはいたが、俺はこの世界の言葉を理解できていない。練習を重ね、今朝試に「おはよう」と言ってみたら驚かれたけれど通じていないようだった。
言葉も一から覚えないといけないということは、文字もか。
まじかよ……。
そんな俺の成長速度に何か期待を込めた目を向けてくる者や、さみしそうにしている者もいるが後者は隣にいるお姫様を俺の分まで存分に可愛がってやってくれたまえ。
この屋敷にはたくさんの使用人が働いていて、最初母親だと思っていた人は乳母だった。前世では一般家庭に生まれたのだが、こちらではどうやら貴族の家に生まれたようだ。
父親は整った顔のかなりの美形で、母親は色白のはかない感じの美人だ。
そして俺、アルバートはこの家の長男で、隣にいるのは妹のアデル。なんと双子なのだよ。
アデルはちょっとおっとりしているが見た目も仕草もとにかく可愛い。笑顔なんて天使なんじゃないかと思うくらいだ。
将来は美人になるに違いない。お兄ちゃん悪い虫がつかないか心配だよ。お嫁に行くときは泣いちゃうだろうね。
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この世界に転生してから三年が経った。
前世の事はもううろ覚えになってきているがそれでいいと思う。これからは公爵家の長男として覚えることがたくさんあるのだ。
公爵家には絵本がたくさんある。乳母にその中の一冊、この国の英雄の物語を読んでもらっている時だった。
くらりとして視界が歪み、目をつぶると頭の中に忘れていた記憶が流れ込んできた。
英雄の物語、この国の国名、公爵家の家名、公爵家の双子の名前……。ここは前世で好きだったマンガの世界によく似ている。
もしそうであれば、この平和な世界を脅かす存在が今は眠っているが目覚める日もそう遠くないのかもしれない。
それからこの家には家宝の入った小さな箱があるのではないだろうか。
確信はない、でも、もしもの時のための準備はしていた方が良いだろう。子供を溺愛する両親はケガを心配して渋ったが「物語の英雄みたいになりたい」と子供らしくお願いし、まずは剣の稽古を始めた。
この世界には魔法もあるけれどコントロールを誤れば危険なため、魔力が安定してくる10歳頃までは習うことはできない。なのでそれまではひたすら剣技を磨くとしよう。
アデルはいつも俺と同じことをしたがるが、女の子には危ないからやめておこうね。
5歳になると家庭教師がついて勉強が始まった。この世界の貴族の子供たちは13歳になると学校に通うことになるのだけれど、その前に家庭教師を雇い文字の読み書きや簡単な計算、この国の歴史、マナー、その他に女の子はダンス、男の子は剣術等を学ぶのだ。
ある日、書庫でこの国の歴史と封印された悪しき者の事を調べていると、古い本棚の奥にある隠し部屋を発見した。
長いこと誰も入っていなかったのだろう、埃だらけのその部屋には壁際に大きな箱が積まれていて、あとは小さな戸棚が一つ置いてある。
戸棚の中には小さな箱がひっそりと置いてあった。
金色の細かい細工の施された青い箱を開けると全身にとても嫌な感覚が走り、アデルも不安そうにしている。
箱の中には大きな赤い鱗のような物が一枚入っていて、見た目はきれいなのだけれどとても嫌な感じがしてすぐにふたを閉めた。
やはりここはあのマンガの世界なのだろう。