チャーハン、餃子
どうあっても最強である魔王は、ただのんびりと食事を楽しんでいる。 彼に敵対しても、誰も勝てないから。
魔物の犇めく闇の城の中、黒衣の魔王デルドラと、天啓の勇者レム、その仲間である戦士グラハム、癒しの使い手アリエスが、対峙していた。
「魔王デルドラよ、天の導きにより、お前を倒す為に此処までやって来たぞ! この勇者レムの手により、天に召されるがいい!」
「ハハハッ、この魔王グラハムを倒すだと? お前達がか? やれるものならやってみるが良い。 どれ程の勇者であろうと、この私の敵ではないわ! さあ、掛かって来るがいい!」
黒衣をバッと翻し、魔王デルドラが不適な笑みを浮かべている。 自分の力に、相当な自信があるらしい。
「行くぞ皆、俺達の力を見せてやろう!」
「おう! 任せておけレム!」
「後方支援は任せて、絶対死なせたりしないから!」
レムが聖剣を、グラハムが戦斧を構え、魔王デルドラへと走り出す。
「「魔王! 覚悟おおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
走り出した二人は、魔王に向かう途中で膝を突き、目を見開いたまま倒れ伏した。 それを見たアリエスは、恐怖し、立ち竦んでいる。
「あはははははは、これが魔王の力というものだ! お前達が勇者であろうと、この私に触れる事すら出来やしないのだ! ふはははははは!」
二人を失ったアリエスは、逃げる事も忘れている。 そんなアリエスを見て、デルドラは、いやらしい事を考えていた。
「さて、残されたお前には、この我の妾にでもなって貰おうか? 心配することはない。 ただ毎日、愛してやるだけだからなぁ、ふはははははははははははは!」
「ひっ・・・・・。」
「助けを呼んだところで無駄だぞ? この場には魔物しか居やしないのだから! さあ、この我に、その肌を堪能させてみよ! 死にたくないのならばなぁ!」
「お、お前に襲われるぐらいなら、私は自分の手で、この命を絶ってやる!」
アリエスが、震えながら、短剣を自分の喉に当てている。 だが、そこまでだった。 死に恐怖しながら、その腕を止めてしまっていた。
「どうした? 出来ないのか? だったらこの我が手伝ってやろうか? ふふふははははは!」
魔王デルドラは、アリエスの短剣を握り、その腕を進ませていく。
「い、嫌、やっぱり、死にたくない! 止めて、止めてください! 嫌あああああああああああ!」
「ふはははは、この魔王に逆らうからそうなるのだ、この魔王に勝てるものなど、この世には居りはしな・・・・い・・・・・あがッ! く、苦し・・・・・なんで・・・・・ガッ!」
アリエスが魔王を確認すると、先ほどの二人と同じように、目を見開き、苦しみながら、死んでいた。 魔王というワードと、短剣を握り、殺気があったために、”別の魔王の力により”死んだのだ。
「一体何故? それより、今は逃げないと。 ごめんなさい二人共、貴方達を助ける事が出来なくて・・・・・」
辺りから、強烈な魔物の気配が感じられる。 彼女一人では、勝つ事が難しいだろう。 その城の中を、一人必死で逃げるアリエスは、ボロボロになりながらも、無事に城を脱出した。
国に帰った彼女が、勇者と称えられているけど、そんな事を知らないもう一人の魔王は、何時もの親父の店で、チャーハンを食い漁っていた。
「うむ、親父、このチャーハンとやらは、ラーメンと一緒に食うと良い感じだな」
「だろ? 俺は他にも、餃子なんてものも作れるからな。 一回食ってみると良い」
「ほう、そうさせて貰おうか。 勿論、それは美味いんだろうな?」
「あたぼうよ! この俺が作るものに、ハズレなんてものはないんだぜ!」
「ほほう、では出してみるが良い。 さあこの俺を満足させられるか?! 出来るものならやってみるがいい!」
「ふ、この俺の料理に、倒せないものはないんだぞ! さあ、覚悟するが良い!」
魔王は出された餃子を、美味そうに口に放り込んでいる。
「こ、これは、う、ま、い、ぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
そして魔王は、中華を堪能していた。
アルザード・ジューダス・ジェイドレッド(魔王)
チャーハンと餃子を堪能する。
何処かで別の魔王が倒されたり、それで勇者が誕生しても、この魔王には関係のない話。