牛丼っていいよね。
ゆる~く生きてる魔王だが、その能力は他の追随を許さない。 だって戦う前に終わっちゃうから。 そんな魔王は今日もまた、美味しい物を食べるのであった。
町の中に、二人の姉妹が男に追われたいた。 一人は十七、もう一人は十二ぐらいというところだ。 ボロボロの服を着て、男に追いつかれない様に、逃げ惑っている。 その男の手にはナイフが握られていた。
「ふぅ、はぁ、待って、アリ―お姉ちゃん、もう足が痛いの、ちょっと休みたいの」
「はぁ、はぁ、駄目よ、急いでミラ! あの男に追いつかれたら殺されるわよ!」
大勢が歩いている大通りであっても、彼女達を誰も気にもしないのは、彼女達が奴隷の服を着ているからだろう。 殺されたからといって、物が壊れた程度にしか思われないのだ。
「ミラ、こっちよ。 あの建物に隠れましょう! さあ早く!」
「う、うん」
男の姿はまだ見えない。 二人の姉妹は、大きな廃屋の中へと入って行った。 彼女達は、建物の奥で動かず、男が居なくなるのを待ち続けている。
その二人の鼓動以外は、音もない廃屋の中に、カツ―ン、カツ―ンと、誰かの足音が響いている。 妹の口に手を当て、声を出さない様にと震えながら待っていた。
その足音が、この部屋の前で止まり、部屋の中に一歩ずつ踏み入れて来た。 二人の姉妹が隠れているのは、古びたクローゼットの中、その中の壊れた隙間から目をのぞかせていた。
男の姿が、少しずつ近づいて来ている。 もう二人の姉妹には逃げられる場所はなかった。
カチャリと扉が開き・・・・・。
「みぃつけたあああああああ」
「「いやああああああああああああああああああああああ!」」
男はアリーの喉をグッと握り、右手に持ったナイフを振り上げている。
「神様にでも祈ってみるか? それとも、魔王にでもお願いしてみるか? どうせ助けてはくれないだろうけどなッ。 どの道お前達は此処で死ぬことになる。 さあ、魔王にでも懇願しながら、死ねええええええええええ!」
「ああああああああああ・・・・・」
しかし何時まで経ってもそのナイフは振り下ろされなかった。 男は痙攣しながら苦しみだし、床に倒れて動かなくなってしまった。
魔王というワードと、その殺気に、魔王の力が反応したのかもしれない。 姉のアリーは、何故か祈ってしまった魔王に感謝し、再び追ってが掛かる前に、妹と共に、この町から逃げ出したのだった。
しかし、そんな事が起こっているとは、全く知りもしない魔王は、何時もとは違う店で、牛丼という物を食い漁っていた。
「う~む、新鮮な生卵が美味いな。 牛肉の味を引き上げている気がする。 うむ、今日の店は当たりだったらしい。 親父、代わりを持ってこい!」
「ありがとうございま~す!」
「よし、今日はこの牛丼で、満足したぞ! では帰って昼寝でもするとしよう!」
牛丼を三杯食い漁り、魔王は腹一杯になって、城へ帰って行った。
アルザード・ジューダス・ジェイドレッド(魔王)
牛丼
何処かの誰かが救われたとしても、この魔王には関係ない話である。




