能力は最強でも、とてもゆる~く生きている。 そして食べる。
最強過ぎる魔王は、敵がやって来る前にもう倒していた。 だから敵も来ないので、別に人間とかも怨まないし、とてもゆる~く生きている。 そんな魔王は、やっぱり食事を食べるのだった。
大陸にある一国。 王座の間に、王と、その家臣が集まっている。
そしてその王が、家臣たちに尋ねている。
「お前達、誰かあの魔王を倒そうとする者は居らぬのか? 何時までもあれを放っておいては、我が国の恥なのだぞ。 誰か手を上げぬか」
王の声に、誰も反応していない。 今まで手を上げて、生き延びた者は居なかった。 王に誓った瞬間、その者の命が失われるからだ。
しかしこの日、初めてこの場に足を踏み入れた男、新兵であったその男が手を上げた。
「ならば王よ、この私めにお任せください! この私が、見事魔王を、この手で撃ち破って見せましょう! ・・・・・うッ・・・・ぐはぁ!」
そして、その男は死亡した。
「はぁ、やはり駄目だったか。 この男は丁重に葬ってやれ。 家族にも病気だと言ってやるが良い。 他に行きたいものは・・・・・居らんだろうな」
そんな事になっているともしらず、この間食事をした店で、魔王はラーメンを啜っていた。
「んむ、このラーメンというものは、とても美味いぞ親父、また腕を上げたな!」
「気に入ったなら良かったよ。 この間は、あんたには助けられたからな。 しかし、あんな大金をポーンと出しちまうとは、アンタ相当金持ちなのかい? まあ今更返せ何て言われても、家には返す金なんてないからな。 その代わり、たまに来た時ぐらいなら、タダでメシ作ってやるさ」
「そうか、それは良い心がけだ。 ただし、もう二度目は無いと思え? この私が助けてやったのは、タダの気まぐれなのだからな。 もし次何か有ったとしても、私は気にせず通り過ぎるぞ」
「分かってるよ。 俺だってそう馬鹿じゃあないんだ。 そう何度も同じ事はしないさ。 まああの借金だって、俺が作った訳じゃあないからな。 友人だった奴の借金を、肩代わりさせられただけなのさ」
「お前の事情など知らぬわ。 しかし美味いなこれは、もう一杯貰おうか」
「あいよ!」
そしてまたラーメンを啜り始めた。
アルザード・ジューダス・ジェイドレッド(魔王)
ラーメン。