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それを見て男が言った。
「やらないのかい。まんざら馬鹿でもないようだな。ただいくら賢かったとしても、助かる方法はないんだけどなあ」
「……」
「男の剥製を造る趣味はないんでね。あんちゃんはその命だけもらうことにするよ」
そのときである。
いきなり女の声が聞こえてきた。
「ユルサナイ」
――えっ?
「ヨクモコロシタナ」
小さくささやくような声だったが、間違いなく女の声だった。
男にも聞こえたのか、不安げに首を左右に動かしていた。
そして声の主を確かめようとしたのか、ライフルを俺のほうに向けたまま中に入って来た。
するとまた声が聞こえてきた。
「ユルサナイ」
「コロシテヤル」
すると十数体いる女の剥製が一斉に動き、男に向かって行った。
「うわっ!」
男は先ほどまでとはうって変わって、甲高い声をあげた。
その間にも女の剥製は男に迫っていた。