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――やばい!
すぐさまここを離れるに限る。
しかし間に合わなかった。
入口のほうへ振り返ると、そこに男が立っていた。
逆光となっていたためにその顔を見ることは出来なかったが、その男は背が高くてがっちりとした体格であることと、その手にライフルが握られていることがわかった。
男が言った。
「油断してたな。ここは滅多に人が来ないから、ちょっと出てすぐ戻るから大丈夫だと思って鍵をかけていなかったんだが、まさか不法侵入者とご対面することになるとは思いもよらなかったぜ」
低くて重い声だった。
「……」
俺がなにも言わないでいると、男が言った。
「おまえさん、見ちまったね。人のプライバシーに土足で踏み込んでくるなんて、悪い子だなあ。もちろん悪い子には、ちゃんとお仕置きをしないとな」
俺は一瞬、ベッドの上にある大きなはさみやメスに目をやった。
あれを使って反撃することを考えたのだが、ベッドまでは少し距離があった。
仮に全速力で取りに行っても余裕で背中を撃たれるだろうし、たとえ取ることが出来たとしても、男に近づく前に撃たれることになるだろう。
男が俺の視線に気付いて言った。
「ほう、解体器具を使って、俺とやりあおうってのかい。おもしろい。やれるもんならやってみな」
もちろん俺は動かなかった。
絶対に負ける勝負なんて、やるわけがない。