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それも気になったが、人形のほうがより気になる。
俺は入口近くの日の光が一番当たっている人形に近づき、じっくりと観察した。
近くで見てもやはりまだらに黒ずんでしわだらけの肌。
ぼさぼさの髪に不自然にめくれ上がっている唇。
そしてなによりも、その人形には目がなかった。
そこには黒い空洞があるだけだ。
――なんなんだ、この不気味な人形は?
さらに観察を続け、肌に触ってみたりもした俺は、ある考えられない結論に達した。
一度その考えが頭をよぎると、なにをどう見てもそうとしか思えなくなっていた。
そのとき俺が人形を見て思ったこと。
それはここにあるのは人形なんかではなくて、人間なのではないか。
人間の剥製なのではないのか、ということだった。
いわば死体である。
もしそうだとするならば、ここには若い女の死体が十数体あることになるのだ。
俺はベッドの上にあるさまざまな器具を見た。
あれで人間の剥製を作ったのだろうか。
もしそうならば、この小屋の持ち主は俺が最初に考えていたような特殊な性的趣味を持つ者ではない。
連続殺人鬼ということになるのだ。
そして俺は、ここかから南にある市と西にある市において、若い女性が突然行方不明になる事件が多発していることを思い出した。