エピローグ
ヤハトラの神殿に……一人の少女が佇んでいた。
ヤハトラの巫女、ネイアの娘……セイラだった。
セイラの碧の瞳は、神殿の闇と……その向こうに微かに映る、祈り続ける女性の姿を捉えていた。
「……ミズナ」
セイラは声をかけた。
「ソータが……もうすぐ、帰ってくると言うておった。ベレッドの……雫を集める旅を終えて……」
“……”
「母さまは……最近ずっと調べ物をしている。ソータが海を越えて旅立つためには、どうしたらよいか……と……」
セイラは俯いた。
「わらわに神殿を任せてくれるようになったのは嬉しいが……ソータがすぐに旅立つのは淋しい……。ミズナもそう思わぬか?」
そのとき……水那の瞳がうっすらと開いた。
「――え?」
セイラは自分の目を疑った。
水那の瞳が淡く青色に輝いている。そして――唇が微かに動いた。
“……剣……十馬……”
「――えっ……」
ベレッドの神殿の螺旋階段を登っていたソータは、思わず振り返った。
壁の穴から、遠く離れたヤハトラの方角を見る。
胸の中にある勾玉の欠片から……懐かしい声が聞こえた。
――十七年ぶりだった。
『――水那……!』
ソータの声が、ジャスラの白い空に舞い上がり……溶けて消えた。
※改稿前、連載終了時のあとがきです。
「双子は何で隠れてたの?」というNの疑問に答える形で始まったお話です。
……さて、読み終えたNとの会話。
N「……なるほど。続編ってことか」
優「ソータの旅には関係なかったから前は触れなかったけど、双子のこと聞かれたから書いてみた」
N「普通に教えてくれればよかったんだけど」
優「まぁ、そう言わんと」
N「……」
優「でもおかげでいいクッションになった気がする」
N「クッション?」
優「この後、3つの話を一つにしていくからさ。その前段階として」
N「でも……時系列がよくわかんないな。ソータとトーマはまぁいいとして、朝日は……」
優「次でわかる」
N「あ、朝日とソータがついに出会うんだ」
優「……どうだろう?」
N「何じゃ、そりゃ……」
優「……とりあえず、それぞれのその後、みたいな感じ? だから本チャンの前段階というか……」
N「……」(←まだまだ先が長そう、と思っている)
優「責任持って付き合ってね」
N「……」(←言い出しっぺとはいえちょっとめんどくさいらしい)
……という訳で、次は“本チャンの前段階の話”「異国六景」です。
※改稿後のあとがき
1話あたりの分量を減らし、一部書き加えました。……少しだけ。
この続きは……『異国六景』の「ソータの章」にて。
読んでいただき、ありがとうございました。