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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋愛短編シリーズ『恋心』

令嬢たちの華麗な一日

作者: 恒石涼平

乙女ゲームの主人公を友達に持つ令嬢のお話。

 ここはとある貴族の館の一室。今日もこの部屋の主である令嬢、リズベルは紅茶を片手に書類を閲覧していた。何処か憂いを帯びた表情に肩まで伸びた鮮やかな金髪、その前髪を耳に掛けるその姿はまさに貴族に相応しく、文字がビッシリと書かれた一枚の書類に対し数秒で閲覧を終えるその所作は、二十に満たない子供ながらも領地経営を任せられた手腕を物語る。顔立ちはまるで理想の王子様のように整っており、高い鼻と切れ長の瞳は男性よりは女性に好かれる容姿をしている。そんな彼女の一室に、迷える子羊がやってきた。


「リズーっ!助けて!」

「……そう慌てないで。何があったのかしら、サユリ」

「あのねっ、お兄ちゃんと第二王子様と、あと留学生さんが怖いのっ!」

「そう、よかったわね」

「よくないよーっ!」


 彼女はサユリ。リズベルのクラスメイトであり、中等学園の頃からの親友である。彼女の兄であるシャールは自他共に認めるシスコンであり、現在王宮の法務部署で働いている。どうやら近親での結婚を認めさせる法律を作るために部署に入ったようだが、そのような法案は全て却下されている悲しい人である。サユリにお願いされたリズベルが裏で画策しているのだが、当の本人はそれにも気付かず法案制作に夢中である。


 そしてこの国、エンデバルト王国の第二王子であるアルディ王子。頭脳明晰でカリスマ溢れる第一王子と違い、こちらは戦うことばかり考えている、通称脳筋王子。この国は隣国たちを束ねている中心国であり、現在は敵対勢力の無い平和な国である。危険な魔物もいることにはいるのだが、そこは冒険者ギルドの領分で討伐してもらっているので、王子が戦う必要は一つもない。脳筋王子にはそろそろ書類仕事を覚えて欲しいところだ。そんな脳筋王子に見初められたのがサユリで、サユリの行くところ行くところに先回りして現れるストーカーになっている。もうヤダこの王子。


 私たちが通っている学園、エンデバルト第一学園。小等から高等、八歳から十七歳まで通える学園で、毎年卒業生の三割は王宮へ就職しているほどの学園で入学資格に貴賎はない。十年前までは貴族の裏入学が目立っていたが、これにもリズベルによって制度が見直された。理由はサユリが傲慢な貴族たちに虐められたという、優しいリズベルであった。


 そんな学園でリズベルたちは現在最上級生。そのクラスに隣国のレガスタ共和国からやってきているのだが、これまたサユリにゾッコンなのである。レガスタ共和国にある冒険者ギルド本部で働いているギルドマスターの一人息子であるヘンリー。私の国の第一王子にも絶賛されたリーダー性だが、この学園に留学してきた理由がひどい。王国に遊びにきたときに街中で見かけたサユリに一目惚れ、その数日後に留学というハイペース。恋が盲目すぎる。彼はサユリに対して肩を組んできたり、理由も無いのに顎をクイッとしてきたり、壁ドンしてきたりととりあえずスキンシップが激しい。その度撃退するリズベルの苦労も一入(ひとしお)である。


「それで、サユリはまた逃げてきたの?」

「うん、家にいたらお兄ちゃんがベタベタしてくるしっ!」

「あいつ今日は仕事じゃなかったかしら?」

「休んだって」

「……また給料減らすように指示しないといけないわね」

「第二王子様はリズの家の前まで着いてきてたよっ!本当にどうかしてる!」

「じいや、まだいたら追っ払いなさい。あと塩も撒いておいて」

「王族だけど大丈夫なのっ!?」

「いいのよ、ストーカーに人権はないわ」

「や、やっぱりリズは頼りになるね」

「そろそろサユリにも自立してもらいたいのだけれど?」

「嫌です」

「そう。で、留学生は?」

「ここに来る途中でぶつかってきたの」

「ぶつかった?」

「それで私がこけて手を差し伸べられたんだけど、顔がニヤけてたから怖くて逃げちゃった」

「……メイド長、暗部に連絡して」

「ダメだよっ!?完全に殺る気だよね!?」

「いえ?お話するだけよ。少しだけね」

「た、頼りになるけど時々怖いんだよねリズって」

「あら、もう助けてあげないわよ?」

「すんませんでしたっ!」

「ふふふ、床に這い蹲って謝らなくてもいいわよ。私がサユリを助けないわけがないでしょ?」

「う、うう、リズぅぅぅっ!!!」


 サユリが土下座という状態から立ち上がり、勢いよくリズベルの胸に飛びついていく。サユリは残念なことに胸部の装甲は薄いのだが、その分栄養を奪ったのかリズベルはとんでもない大きさへと成長した。しかしサユリ以外、メイドにも触らせた事がないという。スベスベな肌、フカフカなクッションに沈みこんでいるサユリはまるで天国へいるかのような表情で、蕩けている。それを優しく抱きしめるリズベルは教会にある女神像のような微笑みを浮かべ、先ほどまでの書類に向かっていた表情とは違った女性らしい、母が娘を見るようにサユリを撫でていた。


「ねぇリズぅ」

「どうしたのサユリ?」

「実は男の子だったりしない?」

「サユリが埋めている胸に聞きなさい」

「うぐっ、どっちかというと男の子っぽいのは私の方かぁ……」

「まぁでも、大丈夫よ」

「ほぇ?何が?」

「私、こんな法案を作ったのよ」

「えーっと、なになに?」


 そして数年後、その王国では一つの法律が制定された。その法律によって研究部署では新たな研究が開始され、街では新しい光景を見ることになる。女性同士、男性同士が寄り添い、愛を持って過ごす日常を。そしてここ、とある貴族の館の一室でも。


「ねぇーリズぅ」

「何かあったの?サユリ」

「えへへー、なんでもない」

「そう、よかったわ」

「ねぇリズ、私のこと好き?」

「好きじゃないわ」

「ええっ!?」

「……愛してるわ、サユリ」



『同性婚』をテーマに書きました。

現実でも同性婚やパートナーシップ制度が話題になったりしてますが、どの結婚式も楽しそうでいいですね。特に花嫁同士の写真は綺麗だと思いました。

感想、評価お願いします。


連載中の小説もありますので、ユーザーページから是非見てくださいね!

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