7話 初戦闘なの?
魔王が見てる中、俺とゴブリンキングは闘技場みたいな場所に来ていた。
ゴブリンキングとは会うのが久しぶりだがどうしていたのか気になる。
「アキトお前の力のことは聞いている。だが、俺は魔王幹部として負けるわけにはいかない」
「わかっているさ。だけど俺も負けられないんだよ」
仮にこの戦いに負けてしまえば、俺は4日後には来訪した魔族に殺されるかもしれない。
「ほんと魔族の実力主義って嫌だよな」
正直、体術に関してはゴブリンキングに勝てていないとライアに言われ、現状、毒を使用した戦いは10分が限界だ。
「では、お互い悔いのないようにやるがよい」
今回は魔王監視のもと、殺し合いは無しで行われる。魔物は魔族と違い実力を重視しているわけではないので納得してくれるが、魔族は殺し合い無しでも殺してしまう奴もいるらしい。
それも耐えられなかった相手が悪いとなるのだから質が悪い。
「では、始めッ!」
魔王の掛け声によりゴブリンキングは手に持った剣を構えながら走ってくる。
非常に単純な攻撃だが、ゴブリンキングは一撃の重さが大きいので当たってしまえば大ダメージになることは間違いない。
最初から毒を使って戦うでもいいのだが俺には時間制限があるため、ここぞという時まで、とっておいた方がいい。
ゴブリンキングが振り下ろした剣を転がりながら躱し、そのままゴブリンキングの足首を蹴り飛ばした。
しかし、予想より体幹がしっかりしているのかビクともしなかったので俺は一度距離をとった。
この毒を活かす上で1番大事なのは相手の情報が集まるまでに相手の攻撃を躱せるかどうかだ。
ちなみに俺の腰には小さい短剣が滞納されている。これは俺の毒を活かす上で最適な武器だと思っている。
ライアは短剣は剥ぎ取りに使う道具ではと疑問を抱いていたが俺にはある考えがあった。
それをするには尚更、相手の攻撃を見極め、尚且つその隙を突くしかない。
そこからは一進一退の攻防だった。
俺はゴブリンキングの攻撃を躱し、隙を見つける。一見、俺は逃げているだけと決定打が無い点から追い詰められているかのように見えるだろう。
しかし、段々とゴブリンキングの癖や攻撃モーションがわかるようになってきた。
「逃げているだけじゃ勝てないぞ。さっさと毒を使ったらどうだ」
毒に関して追記すべきことがある。
それは物理攻撃が防げないことだ。魔法の場合は魔力に干渉しているのか消すことができるのだが、物理攻撃だと武器を破壊できないことはないが時間がかかりすぎてしまう。
「そういうお前こそ攻撃当てられてないじゃん。まさかそれが本気とか言わないよな?」
「…。お前の最後の言葉はそれでいいみたいだな!」
挑発にかかった。
ゴブリンキングは怒りに身を任せでは無いが剣をしっかりと握りしめ走りこんできた。
「そんなに躱す自信があるなら躱してみろ!周り一帯を消し飛ばしてくれる!」
「ッッ!!。魔法かよ!」
剣や身体からユラユラと漂うのは間違いなく身体強化であり、スピードも桁違いに上がっている。
「躱すのは無理か…」
もし躱したとしても地面に当たった時の衝撃波により吹っ飛ばされ隙ができてしまうのは確実。
「ならッ!」
俺は腰から短剣を引き抜くとゴブリンキングが振り下ろして来た剣に触れさせる。
これにより魔法は消え、蒸気が発生したが、ゴブリンキングの素の威力が襲いかかるのは確実だ。
「力勝負はしねぇッ!」
「なんだと!?」
俺はそこから剣をいなし、うまく躱すと先程から見てきていた隙ができた場所に蒸気が蔓延する前に回り込み、敵の後ろについて首に短剣を触れるか触れないかのところで止めた。
「勝負ありッ!勝者アキト!」
魔王の言葉により俺は緊張が解けたようにその場に倒れこんだ。
「アキト強かったな。体術の心得でもあったのか?」
確かにたった3日でここまで戦えてたら誰もがそう思うだろう。だが、俺は今まで護身術の経験はない。
恐らく勇者が異世界に来た時に身体能力が高くなっているように俺も高くなっているのだと思う。
「いや、特にはないけどライアのおかげさ」
「そうか。どちらにせよお前の実力は俺より上だったのは確かだ。ちなみに最後の短剣で何をしたんだ?」
ゴブリンキングは俺が毒を使える事は知っていたがその使い道までは考えていなかったようだ。
「簡単な話さ。俺の毒は例外は無く俺の意思にしたがって魔法を消したり、傷を癒す薬みたいになったりするが短剣にその毒を流し込んだんだ」
あのまま毒を撒き散らして魔法を消すことも出来るが燃費が非常に悪い。
ならばと考えたのが魔法で武器に付加できるように自分も毒を付加できると思い、何かを媒介に消費を抑える方法だ。
この場合必ずしも武器である必要はないので力がまだ十分ではない俺でも楽に扱える短剣を選んだというわけだ。
「なるほど、それで俺の剣は途中で力を無くしたのか」
「まぁ一回限りの不意打ちのようなものだしな」
俺が言った事は本当だ。もし躱されて仕留め損なったら二度は通用しないだろう。
「どちらにせよ、俺の負けだ。これからお前が序列100位だ。しっかりとな」
「あぁ、ありがとう」
最後に俺はゴブリンキングと握手をして自分の勝ちを噛み締めたのだった。