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4話 メイドなの?



底がわからない沼の中で必死に俺は上へと泳ぎ続ける。そこは汚く、光が届かないために俺が今、どの辺りにいるのかさえ検討もつかない。


それでも諦めない。諦められない。

何故と問いかけられても困るのだが、それでも何故か上を目指す事は当たり前だと思っていた。


すると、一筋の光が突如として現れ、俺を優しく包み込む。

その光を浴びたと同時に俺は何か引っ張られるかのように上へと引き上げられていった。


「あれ、ここは」


目が覚めるとそこはベッドの上で、久しぶりの柔らかさに安堵してしまう。


「やっと起きましたか。愚かなる人間様」

「おい、様付けすれば敬意を払ってると思ってるなら間違ってるぞ。それよりここはどこでお前は誰だ」


確か俺は魔王に斬り裂かれ死んだと思ったが、生きているみたいだ。そして起きて体を起こしてみれば目の前には謎の女が居た。

年齢的には俺と大差は無いようだが特徴的なのが頭に羊の角みたいなのが生えている事だ。


「あら、一応、魔王様の客人という事ですが力を持たない人間に払う敬意などございません。私に限らず、魔族は弱い下等生物が苦手なので」

「ボロクソに言ってくれるな」

「それでここは何処かでしたね。此処は魔王様の城の客間です。私は魔王様から面倒を見るように命令されたライアです」


ライアはそう言って綺麗に腰を折ると完璧な礼をしてみせた。しかし、その後に元の姿勢に戻した時の顔はすごく嫌そうな顔だったが。


「でもなんで俺は生かされたんだ?」

「それは魔王様の気まぐれによるものなのでなんとも言えません。そればかりは魔王様直々に聞くしか無いでしょうね」


俺はゆっくりと自分の身体を確認してみたが目立った外傷は無かった。

しかし、それより気になるのがーーーー


「俺の服は?」


触れてはこなかったが俺は元の世界の制服、ブレザーを着ていたはずだったのだが、今来ているのはどう見てもこの世界の衣服らしきものだった。

不満は全く無いのだが、やはり変わると気になってしまう。


「あー、それでしたらボロボロ過ぎて、とてもじゃないですが修復が難しかったので廃棄致しました。本当は服など着せずに奴隷のような扱いでも良かったのですが魔王様の命令で」

「うん、もう文句は言わないよ」


魔族は皆、力が全てなのだろう。今のライアの発言も俺が弱いからで、そこに嘘偽りは決してないのが見て取れる。


「でも、服がボロボロだったという事はあれは夢じゃなかったんだな」

「はい、死ななかったら奇跡だと仰っていましたが人間の生への醜さを観察したかったのかもしれませんね」

「そうだとしたら魔王の趣味を疑うよ…」


グゥゥゥウウ


そこで俺の腹が大きく鳴った。

思い返せばこの世界に来てから何も食事を取っていなかった。そして思い出すと更に腹が減り出した。


「滑稽ですね…。この状況下で、魔王様の城なのにケロッとしてるばかりか緊張感のかけらもない。いつ殺されてもおかしくないというのに。食事は用意してあります。移動しますよ」


ライアは鼻で笑ったが実際、余裕がある訳ではなく、情報が少なすぎる故に何が何だかわからないと言った方が正しい。


「まぁ、どちらにせよ情報が必要だ。魔王にもう一度会えるかはわからないけど最悪ライアに聞こう。まずは飯…。」


俺は鳴り止まぬ空腹の音を耳に挟みながらライアの後をついて行くのだった。



ーーーーーーーーーー



俺の前には豪勢な食事がある。

既に俺は空腹を抑え切らず、食べているのだがどうしても気になってしまうことがある。


「よく食べるものだな」


そう俺と机を挟むように魔王が席に腰掛けているのだ。

確かに魔王ともう一度会いたいと思っていたが、こうも簡単に会えてしまうと魔王って暇なのかと思ってしまう。

ちなみにライアは席に座ることなく扉の近くで佇んでいる。


「そろそろいいだろうか?」


結構な量は食べ、満腹に近い状態だったので頷きながら最後の咀嚼を終え、飲み込んだ。


「まぁ、君が寝ている間に身体を調べさせてもらったが魔力というものは無いし、使える見込みもなかった」


ファンタジーといえば、魔法なのに。魔法が使える世界なのに魔法が使えないなんて!と俺はあまりの衝撃に放心状態に陥る。


「つ、使えない…だと?」

「あぁ、だが疑問に思う点がある。君と一緒に来たゴブリンキングだが嘘をつくような奴ではない。つまり、君には何か力が隠されていると我は思っている。それも君自身使いこなせていない何かがね」

「でも自分で言うのもなんだが、魔王に斬り裂かれた時は何も出来なかったんだよな」

「その力の発動条件が何かわからないし、魔力を介してで無いとなると正直私でもお手上げだ。まぁ、今はそれを異能(スキル)という事にしておこう」


魔王はそうして立ち上がると窓を眺めた。


「さて君は一見、情報に疎いと見える。我は自意識過剰などではなく強い。それは人間の大陸で1番に恐れられているくらいにだ。それに対して君はどうだろう?」


魔王はそこで俺の方へ視線を戻すと不敵な笑みを浮かべた。それは答えろと言わんばかりだ。


「信じてもらえるかわからないが、気付いたら草原にいたんだ。でも、この世界の住人じゃない事はわかった。理由はわかんないけどな」

「ふむ…。興味深い話ではあるな」


魔王は何か考えるように顎に手を添えながら何かを考えた後に何か考えついたかのように口を開いた。


「可能性の話をしよう。この世界に召喚された勇者についてだ」


何故、ここで勇者の話が出でくるのかわからなかったが俺は不思議と吸い込まれるかのように頭を縦に動かし、頷いたのだった。



今日から新生活がスタートし、当初の予定通り2日置き更新になるかと思いますが、書けていたら毎日更新していきます

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