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2話 襲わないの?



ひとまず、ここは危険だとなぜかゴブリンに言われ、俺は森の中に入り身を隠すようにゴブリンと向かい合っていた。

先程から自分でも不思議なのだが、ゴブリンという見た目が恐いファンタジーな生き物に遭遇しているにも関わらず、ちっとも怖くない。


「アラタメテ、オマエ、ニンゲン?」

「人間に決まってんだろ」


俺は自分の容姿を鏡でしっかりと確認したわけでは無いので絶対にとは言えないのだが、人間以外の生き物になりたくはなかったのでそう答えた。

確認できる限り、腕も足も人間らしく、頭を触っても角が生えてるという事はない。


「ニンゲン、マホウ、ウシナッタ」

「失った?」


ゴブリンはそう答えると先程、緑色の液体が流れていた傷口を俺に向けた。


「カイフクマホウ、ツカッタ」


自分では自覚がないのだが、どうやら俺はゴブリンの怪我を治したのは錯覚では無く、魔法を使ったらしい。


「でもどうやって…」

「ジョウホウ、スクナイ。ニンゲン、クニ、ユウシャ、ショウカン、シタ」


先程から片言だったので長文が来られると意味分からなくなりそうだが、人間の国が勇者を召喚したという事でいいだろう。

しかし、勇者の召喚といえば召喚の間みたいなところに呼ばれるイメージだが俺は草原のど真ん中だ。つまり、俺とはあまり関係ない事なのだろう。


「その勇者は魔法が使えるのか」

「マホウ、トクベツ。ヨワイマホウ、ダレデモツカエル」


今の言葉から魔法が失われたというのは大袈裟だったというわけだ。しかし、それも衰退しており魔法の威力は弱いみたいらしいが。


「お前は魔物だよな?なんでそんなにボロボロだったんだ?」

「ナワバリ、ニンゲン、キタ」

「そういう事か」


ゴブリンといえば、ファンタジーでは最も弱い存在と言われる存在だ。恐らく冒険者的なのが来て倒される寸前まで追い詰められたんだろう。そして何とか逃げて来たと。

だとすると、このゴブリンは帰るべき場所を失ったという事なのだろうか。


「そういえば、俺の事は襲わないんだな」

「マオウサマ、メイレイ、ニンゲン、オソウナ」

「へー、魔王のくせにか」


魔王という存在がいる事は確認できたが、それほど悪い存在でもないのかもしれない。

そうなると、また新しい疑問が浮かび上がって来たのだが、地平線の彼方から明るい陽射しがこちらを照らし出して来たことにより、一度話しは中断となった。


「コレカラ、マオウサマ、アイニイク」


ゴブリンはそう言うと立ち上がった。

ここでゴブリンと別れるのは簡単だ。特別親しいわけでもないので、悲しさが残るわけではないのだが、俺に今最も必要なのは情報だ。

仮に魔王に会うことができれば、より正確な情報が手に入るかもしれない。


「俺も連れてってくれ」

「ワカッタ」

「自分で言っといてだけど、あっさり了承するんだな」

「マオウサマ、ツヨイ。ダレニモ、マケナイ」


ゴブリンが言ってる事は本当で人間を連れて行ったところで魔王の前では無力という事なのだろう。今の人間の魔法が衰退しているのだから当たり前と言えばそうだ。


「で、ここからどの位離れているんだ?」


俺の質問にゴブリンは頭を傾けて疑問符を浮かべるように言った。


「ドノクライ?テンイマホウジン、アル」



ーーーーーーーーーー



場所は変わり、照史が異世界に召喚される2日前の出来事。

ここはとても広いのだが室内とわかる環境だった。

その室内では魔法陣が描かれており、それを囲むように何人もの男が魔法を唱えていた。


「まだ召喚はできていない…みたいだな」


物凄く大きい扉が開けられ、そこから見た目が20代後半の男が姿を現した。


「もうすぐかと。これが成功すれば忌まわしき魔王も倒せる事でしょう」

「そうだな。何としてでも成功させなくては」


隣にいた歳を随分と重ねた老人が魔法陣から目を離さず、そう口にした。

魔王が世界を支配してから100年。人間は恐怖の中へと落とされた。魔王は力を持っていながらも人間を滅ぼす事はなく、こう口にした。


『愚かなる人間どもよ。我は娯楽が大好きだ!人間どもを我の手で葬る事は容易い。しかしそれではつまらぬ。そこで考えたのが我の配下、虫のようにいる魔物を人間の領土に沸かせてやる。そして魔法も衰退させる。その中で死に抗い、生きて我を楽しませてみよ!』


そう言って、その日から人間の領土で魔物が湧くようになり、さらには魔法を使うために必要な魔力は一気に低下した。

その日から人間は恐怖に抗い、こうして魔力を貯めて使用する魔法陣というものを生み出した。そこから召喚の魔法陣を作り上げたのだ。

つまり、この召喚にはこれからの人類の未来がかかっていると男は魔法陣を見つめた。


すると、魔法陣は突如光り出し、目をも開けられないほどに輝いた。

そして目を開けた時、男は嬉しさのあまりその顔に爽やかな笑みを浮かべた。


「な、なんだここ?」


第一声は魔法陣の中心に立つ3人の中の1人だった。

男はおもてなしをしなければと一歩前に出て口を開いた。


「ようこそ勇者様方!私はこの国の王子、名をグランドール=ファシスタと申します!」


この日、歴史あるファシスタ王国に最強の勇者と呼ばれる3人の人間が召喚されたのだった。


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