3月11日〜20日
『人を喜ばせる』(3月11日 フリチラリア)
喜ぶ顔が見たいだけだった。思い付きにしては上出来だっただろう。大好きな色を手に取った。褒められた画力を発揮する時が来たと胸を張る。最初は勿論大好きな皆の顔。次は花。星。車。電車。宇宙。夢中になる。ママの悲鳴が響き渡った。
『謙遜』(3月12日 エニシダ)
別に遠慮していた訳でもない。ましてや謙遜などでもなかった。それでも誰かの目にはそう映るのかもしれない。匿名の暴力に流す涙はない。僕は僕として立っていればそれだけでいい。謙って遜って残ったのは僅かな虚栄心。着飾ろう。過去の自分に弔いを。
『あなたをとらえる』(3月13日 イカリソウ)
あなたは自由に舞う蝶のように、花から花へと踊り移る。どうして私じゃ駄目なのだろう。何が不満なの、と詰め寄りたくなってしまう。でも挫けるなんてもっと嫌だ。あなたを籠に誘う為の罠を幾重にも張って、私だけのあなたにしてみせる。
『希望』(3月14日 アーモンド)
「これあげる」先月渡したチョコレートの最新作。カラフルなアーモンドチョコレート。「お返し」ぶっきらぼうな君から貰えるなんて思ってもいなかった。チャンスはある?希望を持ってもいい?「有難う」早速噛み砕いた恋の始まりは甘く香ばしかった。
『私を忘れないで』(3月15日 勿忘草)
私、勿忘草になりたいの、と彼女は俯きながら微笑んだ。どうして?と尋ねると、花言葉を知らないの?と返された。知っているよ。知っているとも。だからこそのどうして?だろう。僕が君を忘れる訳ないじゃないか。君の方こそ僕を忘れないでいて。
『高貴』(3月16日 ハナズオウ)
彼女へのこの想いを何と呼ぶのかは知らない。分かっているのは高鳴る胸と眩しさを覚える視界。恋なんかではない。そんな低俗な想いではない。けれどいつだって彼女のことを考えている。彼女の高貴さが心を締め付ける。今日も私の太陽でいてください。
『情熱』(3月17日 アンスリウム)
その情熱を殺してしまったものはなんだ。僕の気持ちが空回るのは何故だ。原因を探せば僕の焦りは報われるのか。その答えは見つからない。見つかる訳がない。何故ならそれは全て僕が齎したことだからだ。ならばきっと情熱を取り戻せるのも僕だけだ。
『春の使者』(3月18日 イワウチワ)
暖かい陽射しに背伸びをした。そうか、もう春なんだ。開いた窓から飛び込んできたのは何だか分からないけど美しく小さな鳥だった。「お前が春を連れてきたの?」麗しい声の小鳥は肯定するかのように飛翔した。さよなら、私。初めましてをしよう。
『優美』(3月19日 枝垂桜)
圧倒された。あまりの美しさに、上品さに、ただただ見上げることしか出来なかった。一体どれほどの年月を生きてきたのだろう。雨風に曝されながら、それでも花を咲かせ続けるというのは果てしなく孤独な営みだろう。私もなれるだろうか。この桜のように。
『強靭』(3月20日 ミツマタ)
「見ろよこれ!」「うっわ、強そう」「だろ?最高傑作だぜ」「お前どんだけ金かけたの」「ぼちぼちかな」「なぁそれ使わせてくれよ」「やだよ、お前すぐに死なせちゃうじゃん」「大丈夫大丈夫!今度は上手くやるって!」「いっつもそう言うんだよなぁ」




