3月1日〜10日
『いつも思う』(3月1日 母子草)
あなたの指先から溢れる愛。柔らかな髪の毛から香る優しさ。羞恥を知らぬ白い足。無垢な魂に包まれた底知れぬ自意識。私は羨ましさと微笑ましさを持って見詰めている。あなたの行く先々に待ち受ける困難を思ってそっと目を閉じ、想う。幸福であれと。
『思いやり』(3月2日 アルメリア)
君はどんな人間だろう。いつも僕の心を軽くしてくれる君は。君のことなど何も知らない。僕のことも何も知られていない。だけど君の笑顔、声、優しさだけで僕は生きていける気がする。だから僕も返したい。君の為になるのなら何だって厭わないから。
『天下無敵』(3月3日 桃)
私を誰だと思ってるの?私を嫌う人はいない。恐れる人もいない。誰からも好かれるに決まってる。だってパパもママもそう言ってたから。なのにどうしてあの子は知らんぷりするの?こんなに可愛い私が話しかけてるのに。照れ隠し?じゃあ遊ぼ!ずっと友達ね。
『あなたの助けになる』(3月4日 ムラサキケマン)
あなたを支える僕の存在をあなたもあなた以外の誰かも知らない。人知れず静かにそっと、力になれるように、黙って寄り添う。危ない!僕の声は届かないし僕の指はあなたを掴めない。それでも念じる。あなたの後ろから見守っている。
『貴い』(3月5日 クンシラン)
君に触れるのを躊躇っているとその小さな瞳が僕を捉えた。その指は僕に触れる。躊躇なく、ただ純粋に、僕の体温を確かめるように。美しい。握り潰せてしまいそうな塊。抱き締める。温かい。暖かい。これが、命だ。尊い輝き。君が大人になるまで、傍に。
『向上心』(3月6日 土筆)
向上心のないやつは馬鹿だ、というのは何に出てきた言葉だっただろう。その正論に私の足は竦んでいる。私にそんな心持ちはあるだろうか。惰性でここまで歩いてきた私に。それとも歩いてきたことが一種のそれなのか。答えは出ない。私はまた未来へ歩き出す。
『何も求めない』(3月7日 オキナグサ)
何も要らないよ、何も欲しくないよ、と君が泣いた。何も求められないのは不安でしかなかった。私の価値は物にしか宿らないのに。君を詰った。振り下ろした拳は痛かった。君の微笑みは何かを抉った。私は貴女が居ればいい。君の腕は温かかった。
『友情』(3月8日 コブシ)
あの子とあの子は仲が良い。あの子とあの子は仲が悪い。そんな見えない包囲網を躱し続けて自由を謳歌するのは孤独だ。友情は不安定。水の檻。形を変えながら閉じ込めて息を奪う。だから私には1人だけでいい。あなただけでいい。水の檻、入ってくれるよね?
『犠牲』(3月9日 アセビ)
あなたに触れている為には何が足りなかったのだろう。愛?理解?思い遣り?何であなたを満たしてあげれば良かったのかと私は記憶の蓋を閉じる。犠牲になったのはあなたか、私か、それとも別の何かか。誰もそんなもの望んではいなかった。線香の煙が揺れる。
『儚い恋』(3月10日 アネモネ)
叶うはずなんかなかった。分かっていた。君は既に他の誰かのものだった。それでも抱いてしまったこの心の行き場は何処にもなかった。哀れだろうか。馬鹿だろうか。この涙に意味を持たせることもきっとナンセンス。失恋すらしない淡い夢を泡立てた。




