2月21日〜29日
『持続』(2月21日 サンシュユ)
お願いがあるの。聞いてくれるかしら。いい?あのね。私が私でいることを辞めようとしたら叱り飛ばして欲しいの。私はいつだって私として生きているのだけど、唐突に私を辞めたくなってしまうから。それを阻止して。あなたの声で私を私に引き戻して。
『愛嬌』(2月22日 雪柳)
「愛嬌をな、振り撒いておけ。そうすりゃきっといろんなことが上手くいくんだ」それが父の教えだった。真面目過ぎるほどに真面目だった父。私は父が大好きでずっとそれを守っている。悲しくても辛くても愛嬌を忘れずに。私、もっと幸せになるよ、お父さん。
『栄光』(2月23日 沈丁花)
「沈丁花といえばさ、なに?」「ユーミン」「だよね」「春よ来いだっけ」「そうそう」「懐かしい、音楽の授業で習ったね」「あの頃、かぁ」「あ、駄目だよ、その話はしない約束」「あーそうだった」「うっかり者」「また...会える?」「...きっと」
『幼馴染み』(2月24日 蔓日日草)
ずっと一緒に過ごしてきた。腐れ縁だとお互い茶化し合って、それが当たり前の生活で、ずっとずっと続くと思っていた。でも違うんだね。君も私も大人になる。ならなきゃいけない。その時にはこの関係性に他の名前がつくのかな。...つくといいな。
『幸福を告げる』(2月25日 カランコエ)
鐘の音が鳴り響いた。ゴーン、ゴーン、と叫ぶそれは通りすがりの教会から。見ると祝福に包まれた2人が最高の笑顔で手を振っている。よっぽど酷い顔をしていたのかあなたが苦笑して言った。「いつか、ね」今はそんな些細な嘘が心地よかった。
『通じ合う心』(2月26日 ムスカリ)
僕等はずっと二人で一人。何も言わなくても離れていても傍にいられた。幻想だと笑うかもしれないけれど事実で、これからもそうだと思っていた。だってそうだろ?血は水よりも濃いんだ。お前が誰かを選んでも僕の心はお前と共に。な、片割れの僕。
『気紛れな恋』(2月27日 ギリア)
時が進むように、季節が変わるように、あなたのこころも移ろってしまう。わたしの表面を撫でるだけで、きっと明日には新しい誰かを隣に並べて、わたしの哀しみだって気付かない。それならわたしも忘れよう。あなたの優しさなんて要らなかったんだ。
『勝利』(2月28日 月桂樹)
「賭けをしよう」君の唐突さはいつものことだ。「何を賭けるの」悪戯っぽく微笑んで君は唇を指差した。僕は流石に動揺して鞄を落とす。「本気なの?」「当たり前じゃない」「勝負は?」「君が墜ちるかどうか」それならとっくに勝負はついてる。僕の負け。
『幸福』(2月29日 蓬)
暖かい布団に包まれて緩やかに目覚める朝。飼い猫のざらついた舌が齎す至福を噛み締める。寒さと眩しさに抗ってカーテンを開く。昨日の嵐も何処へやら。空はスッキリと晴れ渡っている。私の心に風船を付けて解き放ちたいような晴天。新しい私に出逢えるかな。