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4月1日〜10日

『清い心』(4月1日 かすみ草)

彼女の心があまりにも清く美しく、正しく真白だった為に人々はそれを崇めながら恐れ、持て余していた。彼女も分かっていたが人々を戒めることすら出来なかった。悩んだ彼女は決意した。なかったことにしよう。彼女の初めての涙に世界は洗い流された。



『友情』(4月2日 コデマリ)

僕等の過ごした時間。喜びも悲しみも、沢山の泡のような思い出に包まれて、僕等はまた新たな世界へ踏み出していく。君が僕を忘れないでいてくれるように、僕も君を忘れはしない。上書きもしない。別のフォルダへ保存。新しいデータを共に記録するのは誰?



『慰め』(4月3日 ゼラニウム)

私はすっかり気落ちしていて、あなたの顔を見上げることも出来なかった。あなたが差し出してくれたその花の名前は知らなかったが、とても可愛くてほっとする、不思議な花だった。大切な、想い出の一鉢。あの幸福な日々を胸に私は憂鬱を抱き締めて歩く。



『無邪気』(4月4日 アジアンタム)

君の笑顔が輝いて見える理由を知った。君はまだ知らないのだ、世界の恐ろしさを、自らの無力さを。僕は君の無知に呆れ、そして愛おしく思っている。君が何も知らないのなら変わらずにいて。そのままの君でいて。いつまでも笑っていて欲しいんだ。



『温和』(4月5日 カイドウ)

あなたの纏う柔らかい空気が好きで、あなたの優しい言葉が好きで、あなたと一緒にいることで私もきっと温かい人間になれる気がして。あなたが見せない涙だとか、知られたくない辛さだとか、そういうものを丸ごと包んであげられるようになれる気が、して。



『愛国心』(4月6日 ナスタチウム)

愛していた。君がいてくれたから愛していた。美しい山々にも豊かな大地にも清らかな河川にも大して興味はなかった。君がいるかどうかが重要だった。つまりは僕にとっての国とは君なのかもしれない。君を害した奴等ごと破壊し尽くすことも厭わない。



『元気』(4月7日 ディモルフォセカ)

唯一の取り柄です、と眩しい笑顔で言ってのける君はまさに元気の塊で、私は思わず目を閉じた。この明るさは私には毒だ。まるで陽の光を浴びた吸血鬼のように力なく干からびてしまいそうで。そんな君が羨ましくて、太陽に愛された君を眺め続けた。



『心が和らぐ』(4月8日 蓮華草)

嫌なことだらけの世界の中で戦って、君に会う為に帰宅する。君はいい子で待っている。吠えもせず散らかしもせず、寂しい家の中でひとり、じっとしたまま待ってくれている。私は君を抱き上げる。嬉しそうな尻尾と声が私の荒んだ心をやんわりとさせるのだ。



『優雅』(4月9日 ミモザ)

自分の世界はなんとちっぽけなのだろうと思い知らされるような、そんな美しさを目の当たりにした。黄金に輝く華々しさは私の心の隅々まで照らしていく気がして。秘密の恋にはさよならをする。もう決めた。積み上がった思い出を埋葬する為のリースを作ろう。



『博愛』(4月10日 チューリップ)

誰にでも笑顔を見せるあなたをひっそりと見つめていた。自分に向けられたらきっと羞恥心で死んでしまうから、誰かへの優しさを見ている程度が丁度良くて。それにしても本当に見境がない。誰彼構わず愛すあなた。愛が枯渇するのはまだ先のようだ。

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