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あの世の行きの電車  作者: 林 秀明
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勇気のトランポリン地獄

園内は華やかだった。空は漆黒の闇で月も見当たらなかったが、アトラクションの色とりどりの光は咲を眩しく照らした。所々に睡蓮やラベンダーの花が植えられており、少年からはラベンダーの香りがする。


「死んだ世界にしては華やかね…」咲は辺りを見回しながら言った。


「ここは死ぬ前にみんなが来る所だから少し現実チックになっているんだ。本当のあの世はもっと悲惨だよ」少年は悲しそうな顔をする。


「君も死んだの?」


「うん。先日電車に轢かれちゃってね。僕翔太って言うんだ。お姉ちゃんの名前は?」


「咲よ。大学に通っているの」


「この世界から抜けれるまで咲姉ちゃんって呼んでもいい? 僕兄妹いなかったんだ」


無邪気な顔で少年は見つめる。咲は少し考えて、


「いいわよ。じゃあ私は翔ちゃんって呼んでいい?」にっこりと笑顔で言った。


「いいよ。ありがとう。咲姉ちゃん」



十分くらい歩いただろうか。翔太は立ち止まって言った。「着いたよ」


着いた場所は大きな広場で咲は周りを見渡したが、特に何も見当たらなかった。しかしよく少し目を細めて見てみると、先に黒い建物のようなものが見える。


「あれ何?」


「トランポリンだよ」翔太は平然と言った。


近くまで行ってみると確かにトランポリンだったが、直径は約二十メートルほどあり、真ん中にはドクロの絵が描かれている。


「いかにも嫌そうな感じがするね。」


「名付けて、希望を掴め!勇気のトランポリン地獄~」


翔太はバラエティー番組の司会者のような調子で言った。咲は真横で少し睨みつける。


「咲お姉ちゃんはこれからこの台から飛び降りて、トランポリンでジャンプするんだ。無事着地出来たら煩悩コイン二十四枚獲得だよ」


「それだけでいいの?」咲はあまりにも簡単すぎて少し拍子ぬける。


「咲姉ちゃん甘いよ。トランポリンでジャンプして目の前の高い山があるでしょ。それを飛び越えて、山の向こう側へ着地するんだよ。山は富士山級の高さだからね」


「ええ!?そんなの絶対に無理だよ」高い山を見ながら咲は声を張り上げる。トランポリンで飛び越えるのさえ難しい、そんなに飛ぶことが出来るのか。


「飛び越えるのは簡単だよ。僕がトランポリンの調整をするから大丈夫だよ。問題は着地する場所で正しい場所に着地しないと駄目だからね。まずはパラシュートをっと…」


翔太は話しながらテキパキと準備を始める。


「着地する場所は何色かの色に振り分けられているんだ。正しい色の場所へ着地したら無事成功だよ。ジャンプして、良いタイミングでパラシュート開いて、その場所目指して飛び立つ。簡単でしょ?」


「もし間違ったらどうなるの?」


「その時点で本当の終わりだよ。着地に失敗しても死んじゃうからね。やり方を教えていくね。」


咲は翔太からパラシュートの開き方と方向転換を教えてもらった。ド素人が自分の命をかけてすぐに出来るのだろうか。


「じゃあ頑張ってね。攻略のヒントは自分が見えるものがすべて真実だと限らないことだよ」


「ちょっと、何……!?」


翔太はそう言うと、咲の背中を押した。押し出された咲はトランポリンに乗り、その反動で山の頂上目がけて凄まじい勢いでジャンプしていった。



「バイバイ、咲姉ちゃん」


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