異変
「うん!?」
咲は目覚めた。電車の揺り籠のような気持ちよさに深く寝てしまった。
「何時だろ……」
時計を見ると時刻は二時十分だった。咲は驚いた。終電をとっくに過ぎているのになぜ走っているの? 何かの間違いだと思い、辺りを見回したが誰もいなかった。車掌が私に気付かずに、車庫に戻ってしまっているのだろうか。突然車内にアナウンスが流れる。
「次は終点あの世~。あの世でございます」
咲は完全に眠気がとれた。あの世行き!? 状況を把握しようとするが、全く訳が分からない。パニックになっていると急に電車は止まり、車内扉が開いた。外からの風は冷たく自分にとってあの世行きの場所だった。扉を見ていると咲の斜め向かいの扉から小さな男の子が入ってきた。年は七、八歳くらいだろうか、私の方へ一直線にやってくる。そして
「お姉ちゃん、もう死んだんだよ。だから僕が迎えにきたのさ」と少年は言った。
謎の言葉に咲には全く理解できない。
「とりあえずここに居ても意味はないよ。連れて行ってあげる」
考える間もなく、少年は咲の手を取り、扉へ向かって走った。すると咲の身体は扉の外へ吸い込まれるように引きずり込まれた。