忘れ物
「先~輩~」
遠山はパチンコ店のシャッターをちょうど閉める瞬間だった。咲はぜいぜいと息を切らしながら言う
。
「す、すいません。制服の中に携帯を入れっぱなしにしたようで…… 取りに行っていいですか?」
「そんな事なら、電話してくれたら持って行ってあげたのに。あっ、電話忘れたんだね。ごめん、今からシャッター開けるから取ってきなよ」
遠山はシャッターを開け、咲を中へ入るように促した。
「大丈夫よ。閉じ込めたりしなから」
咲はペコリと頭を下げ、更衣室へ向かった。更衣室のロッカーを開け、制服のポケットを探る。果たして携帯は見つかった。
充電が切れていたので、誰が鳴らしても電話は繋がらないのに気付いた。
「先輩、見つかりました。ありがとうございます。」咲は遠山へお礼を言った。
「いいよ。見つかって良かったね。もうちょっと後だったら私帰ってたから、ラッキーだったね」
咲はラッキーという言葉に反応する。確かに最近私はノッてる感じがする。いやノッているんだ。
咲と遠山はその場で別れ、咲は駅へと急ぐことにした。終電時刻が近づいているのだ。前方と時計を交互に見ながら、駅へと急いだ。ぎりぎりの所で咲は最終電車へ乗ることが出来た。少し走ったが真冬の季節だったので身体は温かくなりちょうどよかった。
ふうと一息つきペットボトルのお茶の蓋を開け、一口飲む。車内は終電とあっていくつか席が埋まっていた。ふと窓を見ると都心部のネオン街が見え、光が咲の顔を包み込む。お風呂を沸かしぱなっしにしていたのを気付き、咲は少ししょんぼりした。走って疲れたのか車内の暖かい空気が眠気を誘ってきた。
咲は自分の降りる駅まで少し寝ることにした。