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あの世の行きの電車  作者: 林 秀明
2/18

帰宅

「ありがとうございました」


お客様が帰るとともにパチンコ店のドアが十一時で閉まる。


「ふぅ。今日も疲れた」


来週で二十歳になる咲は缶ジュースを片手につぶやいた。


友達に紹介してもらったパチンコ店でのアルバイトは時給はいいが、夜が遅く疲れる。


「咲、あとやっておくから先帰りなよ。電車でしょ」


一つ上の先輩の遠山さんが促す。今日は少し甘えちゃおうかなと咲は身支度を整え始めた。


明日は学校が休みなので何をしようと歩きながら考えた。最近はとても運がいい。好きなお笑いライブのチケットは当たるし、ちょっとした趣味で始めたパチンコも当たり続きで勝っている。


「でも彼氏がいないんだよね……」


ぼそっと言うと、すれ違った男性にチラっと見られてしまった。咲は顔を赤らめ、恥ずかしく思いながら、急いでその場を立ち去った。



帰りの電車は終電が近く混雑していた。前に座るサラリーマンの酒臭い臭いが苦痛で十五分ほどの車内の時間も長く感じた。



咲は自宅へ帰り、お風呂が沸くまでテレビを見る事にした。まだ明日の予定が決まっていない。何をしようかと考えていたらニュースが流れた。


「昨日昼過ぎ市内幸町二丁目の踏切で八歳の少年が電車に轢かれるという事故がありました。近くの目撃者によると少年が踏切内で大好きなクマのキーホルダーを落してしまい、それを拾っている間に電車が来て、轢かれたとの事でした。運転手はブレーキをかけたが間に合わなかったとの事です。両親は近くにいず、

少年は一人でした。両親に聞くと、明日ディズニーランドへ行く事を非常に楽しみにしていた。こんな事になるなんて…と涙を流していました。少年の告別式は……」


「うちの近くじゃん。そう言えば昨日学校帰りの電車時間遅れていたな……」


咲は少し同情し、頭をかきながら携帯を取り出そうと鞄を取ったが、携帯が見つからなかった。


「やば、制服の中に入れたまんまだ」


すぐさま時計を見ると夜の十一時三十分を過ぎていた。今ならダッシュをしていけば終電の時間までには間に合う。先輩もおそらくまだパチンコ屋にいるだろう。


咲は身支度を整え、玄関の扉を大きく開けると、最寄り駅まで全速で走った。


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