戦士の休息
咲は歩きながら人生というものを考えた。楽しい事やつらい事を通じて全て自分の人生だと様々な偉人は言うが、自分はどうだろうか。自分なりに楽しい事をしてきたつもりが、つらい事には見向きもせず暮らしてきた。
いや実際に気づいていたが見知らぬふりをしていたのだ。実際に自分の心の奥底で後悔の念としてあり続けてきたものを、本当の意味で今日受け入れることが出来た。結局今まで自分は子供だったのだ。
「のど乾いたね」時折木の葉を踏みつけながら咲は言った。
一体何時くらいだろう…少し前を見ると突き当りに自動販売機が目についた。販売機特有の光が遠くからでも見え、すぐにそれだと気づくことが出来た。
咲は販売機に走って駈け寄り、飲み物の種類を確認する。現実世界と何変わらない何種類かの飲み物がそこにはあった。
「ラッキー、お金使えるじゃん。翔ちゃん何にする?」
「僕いいよ、のど乾いていない」俯いた表情で翔太は答えた。
咲は特に気にすることなくお金を入れ、緑茶の欄のボタンを押した。ガコンという威勢のいい音がし、下から緑茶の缶が流れてきた。咲は迷いもなく手を突っ込み、勢いよくフタを開けた。のどを鳴らしながら緑茶を飲み、飲み終えた後片手で少し口を拭いた。翔太が一瞬くすっと笑ったような気がした。
「何か私についてる?」
「いや、なんでもないよ……」翔太は少し間を置き、「それより、調子はどう?」と言った。
「絶好調よ。山の頂上で飲むぐらい美味しかった。生き返ったよ」
「あれれー、こんな看板書いてあったんだけどな」翔太は少し拍子ぬけた声で言った。
咲は覗き込むように汚い木でできた看板を読んだ。




