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現代っ子、そろそろ転生どきでした。  作者: こめつぶ
プロローグ
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0.プロローグ

プロローグです。本編は次話から。


気がつけば俺達は草原に佇んでいた。

風も感じる上、草の微かな匂いもしっかりと感じている。


夢ではない。


足の裏の、草を踏む感覚がある。

ましてや、少しばかり痛む頭痛さえあるのに夢の筈がないのだ。


「奴め、なんと無責任な...」

「というか、ここってーー」


((何処だ...!))

その時の二人の考えは、全く同じだった。




####




俺は佐藤 諒介(サトウ リョウスケ)、ごく普通の高校生2年だ。

何だ?名前も普通過ぎるって?失敬な。

俺は少しばかり注目を集めてしまうが、どこにでも居る学生である。

が、休み時間はクラスメイトに囲まれて、鬱陶しいくらいに話しかけられる。

人望もあるイケメン優等生ってところだ。

...まあ、この事は置いておいて。


俺はちらっと教室の隅を見た。

視線の先には、小説本を読みながらニヤニヤと笑っている男が見える。


「ごめん、ちょっとあっちいってくるわ」


俺は人の隙間を通り抜け、男の元へと歩いていった。

近づいてきたのに気づき、 顔を上げたにもかかわらず、未だニヤニヤと笑っているこの男。

こいつは不知火 聖徒(しらぬい せいと)。後に、ゲニウス=シュリランドルと呼ばれる。

先に行っておくが、兄弟では無い。断じて。ただの親友である。


「聖徒、何笑ってんだよ」

「諒介が前ーー...いや、これは知らない方がいいかもね。プククッ...」

「もったいぶんなよ、別にお前の言葉一つで落ち込みはしねぇし」

「そうか?じゃあ言ってやろう」


そう言って見せて来たのは小説本。

...ではなく、RPG(ゲーム)の攻略本ーー


「おまっ...!何持って来てんだっ」

「別に校則違反はしてないよ?それよりここっ!諒介が頑張って攻略したところ。あれさ、別ルートで行けば簡単だったんだよ。」

「えっ、マジでっ?」

「マジだよ。あーあ、僕らも意地張って見ないよりーー」


と。

まあ、くだらない雑談を話し合う用な友達だ。

俺と聖徒はよく話すヲタク友達だった。

爽やかな俺とメガネを掛けた地味な奴が並ぶ様子は、他人から見るととても不思議に思うだろう。

だが、先生や級友から過大評価されている俺の友達は、距離を置いて接しているように見える。

俺にとって、こいつは猷逸の友達と言っても過言ではない物だった。


(別にともだちがいないわけじゃないんだがなぁ。こいつと話していると誰も寄ってこないから、二人だけで話せて、なんというか...楽だ。)


そのくらい、聖徒は俺にとって大切な親友だ。




####




帰り道、俺たちはまださっきの話の続きをしていた。

今思えばあの時は浮かれていたんだと思う。

周りからちやほやされ、聖徒と冗談言い合って、バカみたいに遊んでいたあの時は。


つい話に夢中になってしまったんだ。

話が盛り上がっていて、注意力を怠っていた。


「あ、でもさ。主人公はやっぱり剣士じゃないと勇者って感じがしないよな。」

「うーん。それは素直に同意できないけどさ、僕的にはやっぱりヒロインは僧侶でなくちゃって感じするよね!」

「あっそれわかる!でもーー

...おい、後ろ見ろっ!!!!」

「えっ?」



聖徒が後ろを向いた時はもう遅かった。


大型のトラックがこちらへ向かって来て、

体が宙に浮いた。



跳ね飛ばされ、世界がスロー再生したように見えた中、俺は赤に光る信号を見た。

(ああ、赤だったのか...)

飛びそうになる意識で、俺は呑気にもそんな事を思った。




####




目が覚めた。周りがよく見えない。


「ここは...病院か?いや、それにしては何も無さすぎる...というか、本当に何も無いな」


なにしろ、周りは見渡す限り白一色。

あれ?もしかして...


ーー俺、死んだ?


いや、可能性としては大いに有り得る。

何せ大型トラックに正面衝突したのだ。

生きている方が不思議だ。

そんな事を考えていると、前から人影が歩いて来た。


「お主、まだ目が眩むか?」

「え?あ、少しマシになりました」

(年上かな?おじいさん?)

俺はそんな事を思いながら話していた。

「それより、ここってどこですか?こんな異空間見たこと無いんですがーー」

「安心せい。お主は死んでおるが、特別じゃ。もう一度生き返る」

「生き返る?...前からイケメンだー、特別だー、と思っていましたがそこまでですか?」


俺は驚きのあまり、前にいる老人(?)に何度も質問を繰り返した。


(というか、死んだ世界にいるって事は、この人神様なんじゃないか?よく見えないけど。)

「特別、じゃな。しかし、元いた世界では大した事もない普通の(おのこ)じゃ」

「大した事も無いって失礼な...

というか、元いた世界って何ですか?地球ですか?ワルードなんですか?」

「ーーそうじゃな。お主の言う地球では真なる力が出ておらん。精々、運動神経が良い程度じゃな」

「別の世界なら力が出るのですか?」

「そういうことじゃの」


...お、おう。

嘘であっても特別と言われたり力があるとか言われると嬉しいものだ。

それより、この老人が言うには俺の運動神経がいいのは、そういう才能があったからみたいだ。


「...しかしのぅ、お主の言う地球での姿形のままでは、別の世界に順応出来ず最悪死んでしまうのじゃーー」

「それってつまり、生まれ変わってこの体を手放せ...と?」

「そうじゃな」


嫌だ、嫌過ぎる!!

折角イケメンに産んでもらったのに!

今更手放せとは、酷だ。


「そ、そんなっ。ブサイクに生まれたらどーするんですかっっっ!!!!」

「安心せい。完全に手放すということじゃないわい。ただ、一時的にーー

おっと、そろそろいかねばならんの。困った時は、お主の荷物にあった科学技術の塊のような万能物を調べるがよい。役にたつと思うぞい」

「ちょっ、一方的に喋んなって!わかんねえよ!!

ーーあ、待てっ!!!」


老人が見えなくなり、意識が途絶えた。




####




そして、今に至る。

見えるは、一面に広がる草原だ。



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