表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

異世界恋愛

掲載日:2025/10/04

 この世界には剣も魔法もある。

 伝説の竜騎士、奇跡を代行する聖女、稀代の魔法使いだって居る。


 凡庸な人間は、見ていても退屈するだけだ。

 けれど、その特別さえも見飽きてしまった。


「期待するだけ無駄よ、早めに諦めた方が良いに決まってる」


 独り言では、少しも自分を癒せない。


 私は床に寝転がった。

 研究が行き詰まって、何もする気になれない。


 生きることさえ面倒に感じ始めた時、舞踏会への招待状を見つけた。

 日程は今夜、場所は王城、勇者のお披露目パーティーがあるらしい。

 勇者は異世界召喚者と書いてあった。


 一度、見に行ってもいいかもしれない。


 この世界では魔王が数十年に一度現れる。

 人と魔物の生存競争では、魔王の存在は決して無視できない。

 魔王は、魔物達を統率して人を簡単に葬ることができる。

 これに対抗する為、人側は異世界から召喚者を呼んで魔王を倒してもらうのだ。


 そうやって、この世界はずっと続いてきた。


(そんな世界、今すぐ滅んでしまえ)


 私が内心思っていることを口にすれば、王城は大混乱だろう。

 ちょっと見てみたいが、竜騎士や聖女がうるさいので止めておく。


 舞踏会の招待状は毎年送られてくるが、毎回中身を見ずにゴミ箱へ投げてきた。

 過去の自分はシュートを外したらしい。

 けど、今回は助かった。


「普段と違うことをすれば何かが変わる、なんてね」


 昔着たドレスが部屋の隅に残っている。


(もう、これでいいわ)


 本音は、服なんてどうでもいい。

 でも、最低限の身嗜みは整えた方が良いと分かっている。


 魔法で作った水球へ洗剤とドレスを投げ入れ、宙で一緒に掻き混ぜていく。

 洗い終わってから、熱風を当てて乾燥させた。

 髪留め、ネックレス、靴も引っ張り出して綺麗に磨く。


 必要なものを揃えたら、鏡の前で衣装合わせだ。


(あれから随分経ったな)


 髪も目も変わってしまった。今では見る影もなく、目は金色に、髪は白く変色した。

 それ以外は何も変わらない。容姿はずっと十代半ばのままだ。

 不老不死なんて、周囲から浮いて仕方がない。

 膨大な魔力量も高い魔法適性も一歩間違えば、周囲一帯が地獄絵図だ。

 魔力コントロールの為、多くの人を巻き込んで自分自身もたくさん傷付けてきた。


「いってきます」


『いってらっしゃい』が聞こえない出発にも、もう慣れてしまった。

 箒に乗って森を越え国境を越え、王城前で招待状を執事に渡す。


「リリー様、お久しぶりでございます」

「久しぶりね、ハイデル。様付けなんて止めてよ、そんな偉くないんだから」

「恐縮ですが、お断り致します。私は執事ですから」


 子供の頃から知っている彼も、もう初老の白髪頭だ。


「リリー様は、いつまでもお綺麗ですね」

「あら? 見ない間にお世辞が上手くなったのね」

「執事ですから」

「そこは、『本当のことですから』でしょ?」

「失礼しました」


 彼は穏やかに笑い、胸に手を当て一礼した。

 ただの人間であれば、もうすぐ居なくなってしまう年齢だ。

 様になったお辞儀から年月の重みを感じる。


「またね」

「ええ、リリー様もお元気で」


 湿っぽいのは嫌いだ。

 ひらひらと手を振って、王城に入る。


 久しぶりに足を運んだけれど、やっぱり王宮内は綺麗だった。

 煌びやかなシャンデリア、皺一つなく広がる赤い絨毯、額縁に収められた絵画。

 キラキラ光って昔は入るだけで緊張したけど、もう慣れたものだ。


 喋る肉塊が押し寄せる。


「リリー様、今宵こそ私と踊りを」

「いいや、次は私の番だろう?」

「君の隣に立つのは、王子である私だ」


 私は、知識も魔法も剣術も手に入れられるものは全て習得した。編入生ながら首席で魔法学校を卒業したけど、学校では今でも伝説的に語り継がれているらしい。

 持ってしまった能力だけでなく、育てられた環境にも恵まれていた。


 けれど、少しズルをしている気分だ。


 権力者がすり寄って来たのは必然と言えるだろう。

 いろんな人が周囲に集まってきた。

 しかしそれは自分の取り巻きにする為、自分に都合の良い道具として利用する為だ。


(全て自分の努力とは言えない。でも、あなた達のために頑張ったわけではないわ)


 煌びやかだった景色は、全て欲の塊にしか見えなくなっていった。


 だから森に引きこもった。

 これは今も変わらない。


(まぁ、気晴らしに旅行へ行ったり、誰かを助けてみたりすることはあるけれど)


 たぶん善良な方、それが私の自己評価だ。


 貴族達の鳴き声が絶えず聞こえる。

 右から左へ聞き流してきた自慢話も、うるさく喚き続ける発情期もいい加減に耳障りだ。


 見えないように息を吐き、仮面の笑顔で一礼する。


「ごめんなさい。私、夜風に当たってきます」


 竜を従えた騎士も、信仰を集める聖女も、憧れの目を向けられる魔法使いもきっと見えないところで努力して、そのお陰で今があるのだろう。

 しかし努力さえも、本人の意思だけで決まらない。

 環境、血筋、運、多くのものが複雑に絡んで入り乱れて決まってしまう。


 生まれた瞬間、或いは自分の意思に関わらず決まってしまうことさえあるのだ。


 私は、自分の胸に手を当てた。

 不老不死は、自分で望んで手に入れたものではない。

 膨大な魔力量も高い魔法適性も、いつの間にか身体の中に入っていた。


(でも足りない)


 私が見たいのはもっと先に居る人だ。

 本物の英雄は生まれた星の下に慢心せず、六等星だろうが星屑だろうが誰にも負けず輝く。

 悲劇のヒロインみたいに泣いても、本物の英雄は来てくれない。


 だって、誰も私を助けてくれなかった。


(まぁ、それもそっか)


 助けて、が言えないんだから。

 私だけの白馬の王子様なんて、夢のまた夢だ。


 乙女だね~、と言ってくれる旧友にもしばらく会っていない。

 今の私が親友に会いに行くことは、とても難しいことだった。

 何年生きてるんだ、その甘々脳いい加減止めろよ、と自分でツッコミしても虚しいだけだ。


(居るわけないって、頭では分かってるのに)


 諦めきれていなかった。

 今日、王城に来てしまったことが良い証拠だ。


「私の願いは、一生叶わないかもしれない」


 研究が進む度、完成までの道のりが分からなくなる。

 もう少し、が果てしなく遠い。


 私はバルコニーに出て、上を見た。

 屋根も人も無く、整った庭園と夜空だけが広がっている。


「しょうがないじゃない。だって、他にできる事なんて無いんだから」


 風が冷たい。


(一枚、羽織って来ればよかった)


 両手を重ねて息を吹きかけた。

 少しも温まった気がしない。


「あの、良ければどうぞ」


 見知らぬ男の子が上着を持って立っている。

 全く気づかなかった。


「ありがとう、頂くわ」


 貰おうと両手を出す前に、彼が私の肩に上着を着せた。


「失礼しました」


 誰かの温もりを感じるのは久しぶりだった。


(温かい)


 私は、視線を上げて彼の顔を見た。


 さっきまで興味の無かった男の子は、この世界では珍しい黒髪黒眼の少年だ。

 顔立ちも彫りが深くなくて、全体的に薄い。

 年齢は分からないけど、外見だけで言えば私と同じ十代半ばだ。


(いいなぁ)


 どこにいても目立ちそうにない。

 私とはまるで正反対だった。


 故郷のことを思い出す。

 私は自分の髪を片手で弄りながら、彼を見た。


「名前聞いていい?」


 珍しい髪と目の色からか、彼の親切心を感じてか、は分からない。


 私は少年に釘付けになった。

 少年は、俯きながら答える。


「シンと言います」


 控えめで平凡な挨拶だった。

 彼は名前だけ言って、所在なさげに空を眺めている。

 初対面の相手に緊張しているのか、たまに私の方を見てはすぐに逸らす。


 彼の耳が真っ赤になっていた。

 寒いなら、他人に上着を貸さなくてもいいのに。

 彼に借りた手前、私から返すのはきっと違うと思う。


「私はリリー。シン、あなたはどんな人なの?」


 彼は視線を逸らしながら答えた。


「……何もできません。僕はただの人間ですから」


 シンは困ったように笑った。


 返ってきた答えは、とてもつまらなくて凡庸なものだ。

 ありふれ過ぎていて、思わず涙が出そうだった。


 この場には何もない。

 魔法で収納していた小さな机を一つ、椅子を二つ取り出した。

 お気に入りのボトルワインと、グラスも二つ手に持った。

 暖房の魔道具に火を入れ、即席の結界魔法で防寒対策も忘れない。


「シン、少し私に付き合ってくれない?」


 彼へ椅子に座るよう促した。

 私の視線の先では、一等星が雲に見え隠れしていた。


 ☆


 未成年だからワインは飲めない、とシンは言った。

 代わりにぶどうジュースをグラスに入れて、彼に手渡しする。

 私もお酒を飲む気にはなれなくて、一緒にぶどうジュースで乾杯した。


 シンの生まれは異世界、やはり彼が勇者らしい。


(異世界召喚、久しぶりに聞いた)


 ポツポツ、とシン君は全てを諦めた顔で語ってくれた。

 その絶望感でいっぱいな様子は、私にも覚えのあるものだった。


 異世界から素質ある者を適当に見繕い、別の世界へ相手の許可なしに連れ去る。

 家族も友人もいる中、突然居なくなった彼を周囲はどう受け止めればいいのか。

 きっと心配しているに違いない。


(天涯孤独なら良かったのかもしれないけど)


 何より、彼自身はどうなのか。

 たった一人、別の世界へ望まずやって来たのだ。

『心細いでしょ?』なんて簡単にまとめたくない。


(結局、拉致監禁よね。自分達の世界なんだから、自分達で守ってほしい)


 ……森に引きこもっていた私に言えることでもないか。

 同情心も義憤も似合わないと分かっている。

 それでも怒らずにはいられない。


 普段の話し相手は、森の魔物か動物か植物だけだ。

 世情に疎過ぎて、魔王が生まれていたことにすら気づかなかった。


(魔物が最近ちょっと強くなったな、とは思ってた。勘違いじゃなかったのね)


 魔王とは、そのまま魔物の王。

 全ての魔物は魔王の誕生を祝福し畏怖し、喜んで自ら魔王の配下になる。

 定期的に湧いて、定期的に人間と戦争し、定期的に討伐されてきた。


 いつもは戦争ばかりしている国々も、魔王がいるから団結して仲良くなり、時間が経つと全てを忘れてまた喧嘩する。

 仲良くなるには共通の敵が必要だ、世界は必要悪が大好きらしい。


(そして召喚者は魔王誕生と共に呼び出され、国の為に使い潰されて異世界で一生を終える)


 召喚者には特別な力が持たされる。

 身体も精神も異世界に馴染もうと必死になった結果、自然と力が身に着くのだ。


(やったー、助かった、ありがとう、なんて言葉一つだけで納得すると本気で思っているのかしら?)


 詳しいことはよく分かっていないけど、魔王と戦えるだけの人間が来てくれる。

 王族は、その程度の知識しか持っていないと先王が言っていた。

 なんて他人任せで迷惑極まりない。


 亡き先王との会話が思い返される。


『その通りだ、これは王家の罪に他ならない。だから、せめて召喚者の余生は全て面倒を見る。何不自由なく過ごして貰うつもりだ。できるなら元の世界へ返してやりたい。だが、帰還方法は見つかってないのだ』


 先王は、よく謝っていた。


(あなたがもう少し長く生きていれば、彼が召喚されることもなかったのかしら? いいえ、きっと召喚するわ。だって王様だから)


 たった一つの犠牲、それも全く所見の赤の他人。

 多くが救われるなら、私も同じ選択をするかもしれない。

 巻き込まれた方は、迷惑以外の何物でもないけれど。


 思い出に浸り過ぎた。

 召喚されたシン君が居心地悪そうに黙っている。

 ただでさえ孤独な彼のことだ、戸惑っているに違いない。


「シン君。あなたのこと、私も少し調べてみるわ」

「本当、ですか?」


 彼の俯いていた顔が起き上がる。


「こう見えて私、結構凄い魔法使いなのよ。きっと元の世界に帰すから。期待して待ってて」


 本当に、本当に少しだけ少年の目に光が戻る。

 その場限りで誰かを助けたことはあるけど、面倒を見ようと思ったことはなかった。

 他人のいない森へ逃げ込んだ自分にしては、意外過ぎる言葉だ。


「……ありがとうございます。リリー様」


(本当にごめんなさい)


 先代の王は聡明な方だった。

 でも今の王には引き継がれず、豪遊三昧の愚王となってしまったみたい。

 さっき尊大な王子を名乗る無礼者がいたけど、あの親にしてあの子ありか。


 この国の状況は、色々とマズい。

 王も貴族も遊び惚け、国民が少しずつ減っていることにさえ目を逸らしている。

 魔王が居なくなってしまえば、すぐに他国から侵略されて王国は滅ぶだろう。


 シン君を置いていきたくはない。

 でも、このまま連れ去ると反逆者にされてしまう。

 この国くらいなら私一人で滅ぼせるが、竜騎士や聖女が出張ってくれば話は別だ。


 二人は知らない仲じゃない、世話になったこともある。

 けど私は、今の彼と彼女をよく知らない。


(私が森になんて引きこもらなければ……)


 シン君は召喚されず、今も元の世界で幸せに暮らせていたのかもしれない。


「いいや、もう終わったことか」


 時空間を操る魔法がある。

 私も使い手の一人ではあるが、望んだ通りに使える訳ではない。

 過去を変えるには、それ相応のリスクが伴う。

 現状よりも酷い結果、誰も救われない未来に辿り着くことさえある。


 魔法に頼るのは、とりあえず無しだ。


(時間がほしい)


 私は彼と別れて急いで家に戻り、朧気だった勇者について知識を深めていった。


 数日後、私は理由をつけて再び王宮へ訪れた。

 時間は朝と昼の間くらい、夕方には余裕をもって家に帰ることができるはずだ。

 王との謁見を待つ間、シン君を探して王城内を歩き回る。


 舞踏会の夜、私は彼の魔力を覚えた。

 彼の魔力を追った先は訓練場だった。


 私が訓練場に入ると、シン君は誰かと戦っていた。

 近衛兵が退路を塞ぐ中、彼は竜騎士と真剣を交えている。


 友人だった竜騎士は、以前と違って酒を片手に剣を振っていた。

 ハイデルと同じ白髪頭のジジイになっている。


「どうしたッ! このままでは死ぬぞ!」

「……僕には無理です」

「この軟弱者がァ!」


 シン君は壁に叩き付けられ、口から血が零れた。

 竜騎士の大きな剣に胴体を打たれ、身動き一つ出来そうにない。


 近衛兵の嘲笑が聞こえ、竜騎士は険しい顔で彼を睨んでいた。

 小太りの王は、上から侮蔑の表情で勇者を見下している。


「止めなさい」


 私は、竜騎士とシン君の間に割って入った。

 突然現れた私に対し、近衛兵も驚いている。

 愚王も目を細め、私の真意を図ろうと薄ら笑いを浮かべていた。


「それ以上は見過ごせません」


 竜騎士は剣を背負い、私の前で止まっている。


「魔法使い殿、これは訓練です。いくら特別な力を持つ勇者であっても、弱いままでは魔王と戦う前に死んでしまいます。体力も筋力も魔力も圧倒的に足りていない。今彼に厳しくしなければ我が国は滅び、民はいずれ死にゆく。リリー、貴様はそれを望むのか?」


 確かにその通りだ。

 でも、それを一人に背負わせるのはどうかと思う。


 私は竜騎士を相手にせず、シン君を魔法で回復させた。

 首だけ回し、背中越しに竜騎士を睨む。


「とりあえず今日の訓練は終わりにしてください。私から彼に話があります。それに……」


 私は斜め上を見つめ、王を視界に捉えた。


「異世界召喚の件、竜騎士様も含めて王様に聞かなければいけません」


 愚かな王は、私の睨み一つで膝から崩れ落ちた。


「しかし、勇者の訓練は王が決めたこと。訓練は、この竜騎士に一任されております」

「そうですか、では私が代わりましょう」

「魔法は確かにあなた程の適任は居ないでしょう。しかし、剣は我々の領分です」

「あなた達の方が強い、と?」

「その通り」

「では、私の方が強ければ良いのよね?」


 私は、手元に火と水を混ぜ合わせた球を作った。


 本来は混ざり合わない二つの属性を無理矢理にまとめている。

 制御を誤れば、王城は消し飛ぶだろう。


 魔法属性は、この世界で基本中の基本だ。

 属性間の相性など、生まれてすぐに教えられる。


 近衛兵は全員、緊張感で敬礼していた。

 竜騎士は毅然としているつもりだろうが、今にも倒れそうなくらい脚が震えている。


「リリー、一体何を……」


 上階にいる王は、傍に控えていた文官と共に後ろへ転んでいた。

 私は酒飲み騎士との会話を無視して、口を大きく開けた。


「王よ。私が剣で全員倒せば、シン君を任せて頂けますか?」


 私は、脅しのつもりで火水球の数を増やす。


「ちょうど一人、お手伝いさんが欲しかったの」


 許可する、と文官が飛んできて肥満王の意向を示した。


「甘く見過ぎだぞ、リリー」


 竜騎士の忠告を聞き流し、頑丈なだけの剣を魔法で取り出す。

 今回、魔剣は使わない。

 剣術のみの純粋な技量で圧倒しなければ、後で文句を言われてしまうからだ。


「いつでもどうぞ」


 相手は、体勢を整えた近衛兵約三十名と酔った竜騎士が一人。


(叩き潰す)


 目を細めただけで、竜騎士は下がった。

 今の彼に、かつての威厳はない。


「お前たち何してる! 行け!」


 気圧された竜騎士の掛け声で、近衛兵が五人切り掛かってきた。

 しかし、動きは精彩に欠ける。


 竜騎士を真似て、私も近衛兵達を剣の腹で叩いた。

 訓練場の壁へ順番にめり込ませていく。

 気分的には、バッティングセンターのホームランだ。


(こんなにも弱かったのね)


 いや違うか、先王の時が強かったのか。

 間違っても、近衛兵全員を相手に他の考え事なんてできなかった。

 伝説の竜騎士が居たならば、尚のこと。


 近衛兵は一般兵よりも強くなくてはならない。

 王を守護する近衛兵は、危害を加える者全てを王から遠ざける必要がある。


 けれど期待には及ばない型通りの剣術と、踏み込みの甘い体捌き。

 動きがバレバレで、加減を間違えないようにするのが大変だった。


 そう言えば、王城に入ってから顔見知りをほとんど見かけていない。


 執事のハイデルと、目の前の竜騎士、それに醜く太ったクソ王くらいだ。

 幼く可愛かった王太子も見違えていた。

 もちろん悪い方向へ。


(もう他には誰も居ないのかもしれない)


 見放されたか、処分されたか。

 どちらにしろ理不尽だっただろうな。


 民の生活も活気がなかった。

 所狭しと並ぶ露天商は、ほとんどが店じまいになっている。


 買い物で浮かれている親子も見かけなかった。

 女性が一つのパンを大事そうに抱え、血走った目で駆けていく姿は心苦しかった。


 この国には、もう異世界召喚しか価値が無いのかもしれない。

 今は魔王のことで頭がいっぱいだけど、魔王が居なくなれば用済みになる。

 異世界召喚の魔法陣は持ち逃げされるか破壊されるだろう。

 四方八方から王国領の土地を奪い合う戦争が始まるはずだ。

 遠くない将来、この国の歴史はきっと終わる。


(さて、残るは……)


 近衛兵は全員、訓練場の壁に埋めている。

 壁は魔法で柔らかくしておいたから、命に問題は無いはずだ。


 勇者に体力をつけさせると言っておきながら、自分達の方が地面に伏している。

 とても無様だった。


 稀代の魔法使いとして、伝説の竜騎士に剣を突き付けた。


「昔は先王と一緒に語り合った仲よね? あなたは、とても真面目だった。王への忠義も王からの信頼も私以上だった。お酒を飲みながら剣を振るうなんて、剣にも竜にも失礼よ。ゲオルグ、引退した方が良いんじゃない?」


 私達は、よく四人で酒を酌み交わした。

 伝説の竜騎士ゲオルグ、奇跡を代行する聖女ヒルダ、稀代の魔法使いリリー、そして亡き先王。

 城下町の暮らしを知る為、四人お忍びでよく町中に繰り出したものだ。


「……相棒は、もう居ない」


 苦々しく、ゲオルグは顔を歪ませた。


「どうして?」

「どうでもいいだろ、引きこもり」

「言ってくれるわね、酒飲み崩れ」


 話す気力も無くなった。

 元竜騎士は放っておいて、シン君に駆け寄った。


「シン君、これからは私と暮らさない?」


 私は、彼に手を差し伸べた。


「いいんですか? 僕なんかが」

「こんなところに居ても、状況悪くなるだけよ?」


 彼は、私の手を快く握ってくれた。


 私はシン君の手を引きながら、訓練場を後にする。

 勇者関係の書類へ次々にサインし、シン君との生活に必要なものを王城で一式揃えた。

 勇者に関する文献や、歴代の勇者達が握ってきた聖剣と鎧も忘れない。


 王は、勇者を魔王戦略兵器としてしか見ていない。

 勇者による魔王討伐後、他国から振り込まれる多額の報奨金を目当てにしているだけだ。

 魔王を倒せればそれでいい、後は何処へなりとも行ってくれとのことだった。


『だから、せめて召喚者の余生は全て面倒を見る。何不自由なく過ごして貰うつもりだ』


 先王の言い付けを守るつもりもないらしい。

 私は呆れ果て、何も言う気が起きなかった。


 王城の宝探しイベントを終え、私達は二階まで降りた。

 後は一階に降りて王城を出て、魔法で飛んで家に帰るだけ。

 森に引きこもってからは、ずっと研究に没頭する生活だった。

 この機に整理しようかな、と綺麗になった部屋を思い浮かべる。


 あれもしてこれもして、と考えると今日で終わらせることはできない。

 仕方ない、今日はゆっくり休んで明日は大掃除にしよう。

 そう、シン君と相談して決めた。


「さて、帰りましょうか」


 一階に降りると、城門が見えた。

 このまま真っ直ぐ進めば、王国から出られる。もう来ることはない。

 先王と竜騎士ゲオルグ、思い出の中で二人は生き続けている。


 私の中で、友人だったゲオルグは死んだ。

 もうどうでもいい。


 会いたい人は居たけれど、きっと何処かで出会うだろう。

 王城勤務だったけれど、聡い彼女のことだから他の国へ一足先に行ったのかもしれない。


「あの、リリー様」


 シン君が、私の手を強く握った。


「リリーでいいわ。敬語も無し。私、様付けって嫌いなの」

「じゃあ、リリーさんで。いいの? ゲオルグさんのこと。友達だったんでしょ?」

「どうでもいいわ。竜に逃げられて、救いようのないアホになったのよ」



「待って! リリー!」



 老婆が元気に走って来た。

 身体の中身どうなってるんだ? 絶対にただの人間ではない。


(だれ? 本当に覚えがない)


 私が首を捻ると、彼女は呆れて溜め息を吐いた。


「まさか忘れたの? 聖女のヒルダよ! 文通してたじゃない!」


 あぁ、そっか。

 ここ最近、特に物覚えが悪くなったかもしれない。


「久しぶり、聖女さん。元気してた?」


「元気よ! 相変わらず綺麗ね、魔法使いさん」


 王城内でのもう一人の友人、奇跡を代行する聖女ヒルダだった。


 ☆


 少し付き合え、とヒルダに強引に連れられてお茶会に参加した。

 私は文句を言いつつ渋々付き合い、シン君は会話に付いて行けずアワアワしている。


「ちょっとババア、あのジジイは何なの? クソ真面目がハメ外し過ぎて呑兵衛になってるなんて冗談でも笑えないんだけど?」

「ワタシがババアなら、アンタは何なのさ」

「永遠の美女ですが何か?」

「まったく嫌味なく言えるアンタは、やっぱ凄いわクソババア」


 豪快に笑う彼女を見て、懐かしい気持ちになった。

 しばらく会っていなかったけど、元気そうで何よりだ。


 貶し合い笑い合ってお喋りする関係は、結局ヒルダとしか作れなかった。

 席が一つ空いているのがとても残念だ。

 シン君は、竜騎士が昔が座っていた席で愛想笑いを浮かべていた。


 コトリ、とヒルダがティーカップを置く。


「済まないね、シン。私が目を離したばかりに」


 ヒルダは、彼に向けて深く頭を下げた。


「いえ全然! 僕が弱いのが悪いんですし」

「アンタは弱くない。おかしいのは王城の奴らさ。戦争を知らない少年に剣を取って戦え? ちょっと想像したら無茶だって分かるだろうに」

「ヒルダさん、顔を上げて下さい。ありがとうございます、僕なんかの為にそこまで」

「止めな、罵倒されこそすれ感謝なんて気持ち悪い。ワタシ達はそれだけのことをしたんだ。まぁ、私も召喚者が来るなんて聞いちゃいなかったけどね」


 ヒルダは、異世界召喚のことを聞かされていなかったらしい。


「アタシも年だ。聖女の引き継ぎは既に済ませてある。魔王討伐の時には、勇者を迎えに来させるよ。協会も王国から引き上げろって言われてるから、ゲオルグ(バカ旦那)連れて他の国で優雅に暮らすさ。聖女と竜騎士、かなりの好待遇で迎えてくれる。アンタ達も早く離れた方が良いよ、先王との約束で城下の人間が他国に亡命する手筈は整えた。後はリリー、アンタが来るのを待つだけだったんだよ」


 そうか、忘れていたけど竜騎士と聖女は夫婦だった。

 聞けば、二人の子供達は別の国で幸せに暮らしているらしい。

 二人も子供に習って静かに余生を過ごす、とのことだ。


「文通で教えてくれれば良かったじゃない」

「バカにお灸を据えるには、アンタにボコボコにされるのが一番だろう?」


 ヒルダは、紅茶を一口含んだ。


「竜も国を見限った。ゲオルグに懐いてたけど、アイツが国から離れたくないと言ったら、竜は寂しそうに離れていったよ。ゲオルグは強がっていたけど、今は見た通りさ」


「そう、本当なのね」


 竜は賢く、人間とは比べものにならない知性を持っている。

 繰り返す歴史の中で、ずっと生きてきた賢者の意見は参考にしないと痛い目に遭う。

 その長命種が国から離れたなら、やはり王国の滅亡は決定的だ。


 思った以上に、この国は崖っぷちだったらしい。

 窮地で舞踏会なんて、脳みそがお花畑にも程がある。


 食べ物も飲み物も国民から税金として絞り取って、偽りの平和を作っているのだろう。

 その証拠に、城下町は閑散としていた。


「リリーさん、どうしたの?」

「なんでもないわ」


 本当に、この場所に来て良かった。


 シン君が不思議そうな顔で、私を見返していた。

 私が舞踏会に参加しなければ、この子は誰にも知られず一人で消えていったかもしれない。


「なによ、ヒルダ。その顔は」

「いやいや別に~」


 ニヤニヤ、と気色悪い笑顔の元聖女がいた。


「そうだ、リリー。アンタと二人で話したいことがあった」


 どうせロクでもないことを企んでいるに違いない。


「じゃあ、僕は少し外しますね」

「あぁ、本があるから好きなものを読むといい」

「わかりました」


 シン君は席を外し、ヒルダは手を振る。

 私は彼が本棚へ目を奪われいることを確認し、目の前の友人を視界に入れる。


「さて、リリー。早速だけど、シンのことどう思ってる?」

「どうって……この国ではあんまり見ない黒髪黒眼の男の子で、顔立ち薄くて、どこにいても目立たなくて、空気みたいな感じよね。今の私とはまるで正反対だわ」

「なんだ、つまんね~」

「いや、何を想像してたのよ?」

「え? とうとうリリーにも春が来たのか、と」


 ハハッ、あり得ない。

 あんな子供に、何をどう恋愛しろと?

 外見は若いままだけど、中身はあなたと同年代よ?


「いや、まぁ確かに可愛いとは思ってるけど。全然そんなんじゃないから。助けたのは、あくまで同情心よ」

「ま~たまた、照れちゃって。それにアンタ、ずっと子供のままだから案外大丈夫なんじゃない? ほら、外見は中身に引きずられるって言うし」


 冗談は止めてほしい。


「自覚無しか。それとも認めてないだけか……仕方ない。シン、ちょっと来て!」


 シン君が本を持って戻って来た。

 タイトルは、『かっこいい魔法使いへの道』。著者の名前は、リリー。

 恥ずかしいから読まないでほしい。


「終わりましたか?」

「うん終わった終わった。ところで全然まったくこれっぽっちも関係ないんだけどさ。シンって、リリーのことどう思ってる?」

「え? 僕の恩人で、とても綺麗で、かっこよくて、大好きです」


 彼は無自覚なまま、恥ずかしい言葉を惜しげもなく披露した。

 シン君は首を傾げ、私とヒルダを交互に見ている。


(うん、まぁ嫌いではない)


 シン君から目を背ける。

 背けた先には、より一層ニヤニヤしたヒルダの顔。


「リリー、アンタ顔真っ赤よ」

「誰だって、まっすぐ好意をぶつけられたら恥ずかしいものでしょ?」


 顔が熱い。

 パタパタ、と手で扇ぐが一向に冷める気配がない。

 何も分かっていないシン君に、ちょっと腹が立った。


「恋愛の始まりなんて、勝手に終わってるもんよ? ワタシ達もそうだったんだから」


 楽しそうに笑う友人へ、私は吐き捨てる。


「絶対ないわ」


 ☆


「またね~! また手紙送るから~!」


 元気いっぱいに手を振るヒルダへ、シン君と二人で手を振り返した。

 太陽が沈み始め、もうすぐ夜になりそうだ。

 思った以上に時間が掛かってしまったけど、ヒルダに会うことができて嬉しかった。


(ゲオルグにも会えた。とても残念だったけれど)


 私はシン君と一緒に箒に乗って、宙へ浮き、高度を上げていく。


 必要なものは王城から全て拝借し、魔法を使って異空間に収納済みだ。

 食べ物、飲み物は腐らないよう時間を止めているので当分は困らない。


(きっと大丈夫よね)


「あ、あのリリーさん!? 僕、高いところ苦手で」


 私の後ろには、シン君がいる。

 彼は震えながら私の袖を掴んでいた。


「はぁ~あ。ヒルダ、やっぱり私とシン君に恋愛なんてあり得ないわよ」


 彼の様子は、まるで生まれたての小鹿だ。

 恋だの愛だの言う前に、義理の親子か姉弟の関係で終わりそうだった。


「ちょっとリリーさん! 今何か言った!? 話しかけられても返す余裕なんて無いですよ!?」

「あ~、そうね。落ちても何とかしてあげるから、安心していいわ」

「何とかって何が!?」

「とりあえず私の腰に腕を回しなさい。落ちたところで、私が一緒だから安全よ」

「わかった! 失礼します!」


 シン君は、目を閉じながら急いで私の腰に手を回した。

 勢い余って、彼の頭が私のお腹に軽く触れる。


「……んん゛っ!? ちょっとどこ触って!?」

「え!? なに!? ごめん! 風で聞こえない!」


 変な声が出てしまった。

 シン君には……大丈夫、気づかれていない。

 そもそも彼は、何も悪いことをしていなかった。


(後ろに乗らせたのは、そう言えば今までヒルダしか居なかったわね)


 やっぱり女同士のスキンシップとはいかない。

 勢いで彼を引き取るなんて言ったけど、大丈夫だろうか。


(何とかするしか無いか)


 そのまま私達は、夜の遊覧飛行を続けて森の家へ着いた。

 私も彼も眠かったので、食事を取ることなくすぐにベッドへ入る。


 もちろん、ベッドは別々だ。


 一緒に寝ることにならなくてよかった。

 安心感は分かったけど、少し寂しさもあった。

 私は疑問を持ちながら、睡魔に意識を奪われる。


 飛行中、一緒に寝ようかと考えていたことは秘密だ。


 ☆


 起きたのは、次の日の昼前だった。

 遅めの朝食を取ってから、大掃除を開始する。

 家の中を綺麗にしながら、私はシン君へ質問していった。


「魔法は?」

「初級の回復魔法を少しだけ」


「真剣は?」

「訓練で握ってた。でも、何かを斬ったことはない」


「家柄は?」

「元の世界の話? この世界で言う平民くらい?」


(ヒルダ、あなたが居ながらどうして?)


 私が思っていた以上に、シン君は何も出来なかった。


 違う、そうじゃない。

 彼は異世界召喚されてすぐの人間だ。

 この世界の常識をほとんど知らないのだ。


『……何もできません。僕はただの人間ですから』


 そう、彼は自分で言っていたじゃないか。


『この軟弱者がァ!』


 ゲオルグは、シン君に剣術の叩き込んでいた。

 体力と筋力だけはゲオルグの無茶な訓練で相当鍛えてあった。結局、あのバカの基準が高かっただけだ。

 彼は真面目だが、もう少し自分の感情をコントロールした方がいいと思う。

 まぁ、初心者に教えること自体向いていないけれど。


『済まないね、シン。私が目を離したばかりに』


 ヒルダは、彼に魔法と世界常識を教えてくれた。

 しかし聖女は、冒険中の回復要員と教会への連絡役。

 教えられる魔法は回復系統だけ、でもシン君の適性は低い。

 試しに私が中級を教えてみたけど、やっぱり覚えることはできなかった。


 二人の教えは、剣士特化と回復特化の教え方でしかない。

 私は回復以外の魔法、剣の順番で教えることにした。

 回復魔法は、今考えなくていい。

 魔王討伐の時には、後任の聖女が回復役を務めるはずだから。


 シン君はとても飲み込みが早かった。

 乾いたスポンジのように吸収していく。

 ヒルダ先生が、世界常識を教えていたことも大きい。


 異世界からの召喚特典で魔力量が膨大ということは分かっていた。剣術も魔法も教えた分だけ強くなっていく。体力も筋力も、剣と魔法を教えている間に勝手に増えていった。


 本人も真面目で素直だから、教え甲斐があった。

 育成は順調だ。けど、剣も魔法もこれ以上鍛えたところで効率は低くなるばかりだ。

 彼の適性を考えれば、早く次のステップに移らせた方が良い。


 魔法で収納していた聖剣を取り出す。


(これ、どうしよう?)


 聖剣は対魔王特化の魔剣であり、勇者にしか使えない固有武装だ。

 さらに、聖剣に認められなければ勇者であったとしても使いこなすことができない。

 少しでも早く聖剣を使った訓練に入りたいのに、その方法も分からなかった。


 王城にあった文献を読み込んでも、まったく分からない。


「教えるのが下手ってレベルじゃない。『ズバババァアーン!』とか『ドカドカドッカーーーンッ!』って何よ!? ゲオルグの方がまだマシ!」


 魔王は既に誕生し、魔物も次第に強くなっている。

 魔王討伐のため、聖女が勇者を呼びに来るのも時間の問題だった。


 このままでは、シン君が戦場で苦戦することは目に見えている。


『どうしたッ! このままでは死ぬぞ!』


 ゲオルグの言い分も真実味を帯びてきた。

 では、あの元竜騎士みたいに何も分からないまま彼を追い詰めればいいのだろうか。


(違う、そうじゃない。でも、どうすれば……)


 私も、一人で準備したいことがある。

 正直言って、間に合うかどうかわからない賭けみたいなものだ。でも、やらないと一生どころか永遠に後悔する羽目になる。


 シン君には森の中で魔物を狩らせている。

 野山を走らせれば、自然な筋肉の動かし方も勝手に身に付く。

 私の結界で森全体を囲い込んでいるから、強過ぎる魔物が入ってくる心配もない。


 魔王でもない限り、この森に侵入することはできないだろう。

 来るもの拒まず、出るもの許さずの結界は、この森の魔物には壊せない。

 彼のレベルアップに困る心配もなかった。


(あーもうッ! どうすれば!)


 時間が無ければ策も無い。

 完全に手詰まりだ。


 そんな時だった。


「え、なに? この魔力?」


 結界外に大きな魔力反応があった。

 この家目掛けて、ゆっくり進んでくる。


「化け物じゃないッ!」


 勇者として召喚されたシン君の魔力量は、常人と比べて桁違いだ。

 稀代の魔法使いと呼ばれる私は、彼の数倍。

 しかし迫ってくる脅威は、シン君はおろか私の魔力量も遥かに超えている。

 私の結界なんて、化け物が身体をぶつけるだけで砕け散ってもおかしくない。


「シン君! 今、何が見える!?」


 念話の魔法で、彼に直接語り掛ける。


『わからない! でもヤバい! 逃げないと!』


 彼も異常事態であることは分かっているらしい。


「急いで戻ってきて!」


「分かっ……あ、ごめん。もう遅いかもしれな」


 ズドンッ。

 彼の声は、重い衝撃音と共に聞こえなくなった。


「シン君!?」


 私は着の身着のまま、ボサボサの髪と寝間着姿で飛び出した。

 家の壁も魔法で吹き飛ばし、飛行補助の為の箒も使わず全力で彼の居た場所目掛けて飛んでいく。

 シン君の居る場所には、すぐ到着した。


「なんで……」


 この世界で一番強い生き物が、倒れたシン君の前に居た。

 その鱗は剣を弾き、体躯は山を越え、翼は身体の倍以上ある。

 大きな牙が生えた口から、森を燃やしている炎が漏れ出ていた。


 どんな環境にも適応する生存本能、一度敵に回せば逃げられない闘争心、気に入らなければ周囲の環境を丸ごと自分好みに変えてしまう独立した完全生命体。


「竜なんかがどうしてこんなとこに居んのよッ!?」


 魔王なんて比べ物にならない厄災だ。

 豊穣の恵みを与えると同時に、自らの機嫌次第で災いも振り撒く破壊の賢獣。


 金色の目と虹色の目を持ったオッドアイ。

 神々しさすら覚える黒竜が、私の前で待っていた。


(逃げないと!)


 竜に出会えば諦めろ、とゲオルグにもヒルダにも先王にも言われてきた。

 立ち去れ、と遺伝子に刻まれた恐怖が身体を巡る。


(でも、シン君が!?)


 私には逃げられない理由があった。

 それは、この世界の事情に巻き込まれた少年だった。

 私が育てると約束し、友人に託された希望だ。


 かつての誰かを嫌でも思い出す。

 叶わない願いを胸に秘めて祈ることしかできず、泣き喚いて虚ろになっていた誰かだ。


「あーもうッッッ! しょうがないなぁッッッ!」


 収納魔法から、ありったけの魔道具と魔力回復薬を取り出した。

 転移の魔法で、シン君を手元に引き寄せる。


(大丈夫、息はある。血は止まってるから、致命傷にならない)


 決意を固め、竜を睨む。


 なぜか竜は攻撃してこない。

 どうせ弱い人間と思って、高みの見物を決め込んでいるだけだ。


「上等!」


 息を大きく吸い込み、大きく吐き出す。


(最悪、彼だけでも生かす)


 火水風土雷の基本五属性、闇と光の相対二属性、毒と麻痺と眠りの状態異常属性、時空間や古代魔法、滅竜魔法も加えた。全魔力を注ぎ込み、一つの魔法にまとめ上げる。


 魔法威力を高める魔道具はあるだけ全部重ねた。

 さらに精度と威力を高めるため、暗示の為のルーティンも積み重ねる。詠唱は、一切の手順を省略しない。目を閉じて頭の中に一つずつ魔法陣を描き、杖を右手に握って相手に向け、半身になった。


 一点集中、心臓を狙い撃つ。


「ぶっ飛べ! このクソ蜥蜴!」


 竜に生涯最強の魔法を叩き込み、気を失ったシン君を抱きしめて余波から守る。

 私の魔法は衝撃波と閃光が森全体を巻き込んで、世界を白く染め上げた。


 ☆


 これが走馬灯か、と思いながら私は過去の記憶を見せられていた。

 上から俯瞰する形で、昔の私に目を向ける。


『ここは、どこ?』


 昔の私が目を覚ました。


 煌びやかな大広間だった。

 彼女の目の前には大きな椅子に腰掛ける少し年上の男の人、左には筋肉が隆起した派手な騎士、右には綺麗で可愛らしい聖女のような女の子がいた。

 その周りには神官っぽい老人が数人、銀鎧の騎士達が剣を持って左右二列に並んでいる。


 真ん中で座っている人は、高級そうな西洋風の衣装、頭には王冠を被せていた。

 私は赤い絨毯の上に倒れていて、座っている人の前にいる。


『まずは、貴殿に謝らせてほしい』


 厳粛な雰囲気の中、若い王が椅子から降りて膝を付き、私の前で深く一礼した。

 神官と騎士が驚き、聖女は何も驚くことなく黙っている。


『ここは、貴殿にとっての異世界。あなたに魔王を倒してほしい』


『…………………………』


 状況が飲み込めない。

 何を言っているのか分からなかった。


 寝起きで頭が働かないとかではない。

 冷たい感触が身体の芯まで昇ってくる。


 床が鏡のように反射して、私の姿を映していた。

 黒髪黒眼の顔、高校指定の制服、入学式で貰った胸ポケットの白い花飾り。

 私は、私のままだ。


 感情がいつまで経っても追いついてこない。

 冷え切って感覚の消えた身体でも、耳は言葉を拾ってしまう。

 言われるがまま案内され、聞いた通りにそのまま身体を動かすしかなかった。


 異世界召喚、魔法、剣、魔王、元の世界に戻る方法、見つかっていない、勇者ではない、聖女と竜騎士がいる、水晶、魔力属性、手をかざして、魔力量がとても多い、すごい全属性持ちだ、なんと時空間も使えるのか、もしや古代魔法も、それに不老不死なんて聞いたことが無いぞ、魔法使いとして育てよう、いいな、勇者ではなかったが魔王は絶対に倒せる、安心してくれ貴殿には……


『何不自由なく過ごして貰うつもりだ』


 王の言葉に身体が反応した。少しも元気がないはずなのに、私は立っている。

 離れた場所に座っている王へ、ゆっくり脚が動いていた。


 もう答えは分かっている。

 気付かないフリも限界だ。


 なんで? どうして?

 怖い、イヤ、苦しい、辛い……。

 ぐるぐるぐるぐる回って巡って、頭も心も全てが壊れて崩れそうだ。


(もう考えるな)


 私は、空っぽになっていた。

 騎士が守護する剣を押し退け、肌が斬られて血が流れるのも無視し、王様とか言う犯罪者の胸倉を掴んで、心のままに殴り続けた。


 それでも、全員動けない。

 私の前にいる相手が、手を向けて全員を止めているからだ。


『元の世界に帰してよ!!!!!』


 全身の力が抜けた。

 王の胸倉から手が離れ、床へ膝から崩れ落ちる。


 もう呼吸すら満足にできない。

 荒い息を吐き出し続け、床に倒れた。


 息苦しいのに、血は流れない。

 斬られたはずの肌が、すぐに再生して跡形もなく消えている。

 私の身体は不老不死らしい。

 でも、ずっと怖くて辛くて痛みが走り続けている。


『本当に、申し訳ない』


 霞んでいく目に、外道の姿が入った。

 同年代に見える彼の目から、涙が零れていた。

 彼は、私より苦しそうな顔だった。


 私の八つ当たりなんて少しも聞いていないはずなのに、その顔はなんだ。

 拉致させた主犯が、どうしてそんな辛そうな顔をしている?

 泣きたいのは、私の方だ。

 あなたには、表情一つ動かす権利だってない。


 どうせ演技に決まっている。

 これから私の居ないところで、下卑た悪人として笑みを浮かべるんだろう。


 ただの女子高生には、ムカつく相手を殴り殺すだけの力も無い。

 口の端から少し血を出させて、青痣で美形を汚すことしかできなかった。


 頭痛が酷い。投げ出しそうだった高校受験の比じゃなかった。

 身体が重い。体育の授業でも体育祭でも部活動でも経験したことがなかった。

 心を捨てたい。何も考えたくない。なんで心なんかあるんだ。


 目の前が真っ暗になった。


 昔の私は意識を喪失し、赤い絨毯の上に倒れた。

 ベッドに運ばれて眠り続け、起きた時には三日目の朝だったはずだ。

 自分の力の無さを痛感した彼女は、現存する魔法ほぼ全てを習得した。

 数多くの戦場を乗り越え、勇者の居ない状態で竜騎士と聖女と共に魔王を倒した。


 役目を終えた彼女は森に一人引きこもって研究に没頭し、買い出しの為の外出と聖女との文通以外は一切他人との交流を断つ。


 まさか、召喚された自分が次の召喚者を育てることになるとは思わなかった。

 竜と戦うことになるなんて、想像すらしたことなかった。


 召喚前の名前は、白石(しらいし)優璃(ゆうり)

 私は誰にも真名を教えたくなかったから、自分で考えて『リリー』と呼ばせることにした。


 走馬灯が終わった。

 真っ白な世界で、私は一人歩き続けている。


 さて、私の人生もこれで終了だ。

 白石優璃の十五年も、リリーの何十年も、気づけばあっという間だった。


(シン君、助かったかなぁ? 私も一緒に帰りたかったけれど、ちょっと贅沢過ぎるか)


 実は、うたた寝していて元の世界では入学式の途中でした。

 シン君とは一緒の高校で出会って、何故か妙に馬が合って、登下校とか一緒にしちゃって、もしかしたら恋愛みたいな関係も築けたり、なんて。


 そんな夢オチだったら良いのにね、と思いながら意識を失った。


 ☆


 目を開けると、見知らぬ天井だった。

 死んだにしては、天国っぽくない場所だ。


「……ん……ここ、は?」


 窓から開きっ放しの扉へ、風が吹き抜けていく。

 気持ちのいい空だった。


 少しだけ身体を起こすと、シン君が私を枕に眠っていた。


「よかった」


 彼を助けることができたらしい。

 私は、見慣れた黒髪を自然に撫でていた。


(柔らかい)


 私の髪の毛は硬めだから、ちょっと憧れる。

 元の黒髪であっても、彼の髪が少し羨ましかった。


 ドライヤーで寝癖を直して、学校に行って、治らない寝癖を手鏡見ながら手櫛で直す。

 そんな当たり前すら、今の自分には途方もなく遠く感じる。


「ん……リリー、さん?」


 彼は、眠そうに黒色の目を開いた。

 私は、慌てて手を引っ込めた。


「リリーさん! 起きた!」


(よかった、バレてない)


 安心したのも束の間、私はシン君に抱きしめられた。


「ちょ、ちょっと待って!?」


 頭が追い付かない。

 シン君が私に抱き付いて、腕を背中に回していて、顔が近くて、それでそれで……。


「本当に良かった!」


 彼の言葉で、少し正気を取り戻した。


「すぐに起きるって言われても全然安心できなくて、魔力使い過ぎて意識を失ってるだけで命に別状は無いなんて言われても、何日も眠ってるから心配で離れたくなくて……」


 とても心配をかけたみたい。


「ごめんなさい、心配をかけて」


 私は、シン君の背中に手を乗せた。

 ポンポン、と安心させるように触れ続ける。


「本当だよ!」


 落ち着いたのか、彼は泣きじゃくりながら私から離れた。

 鼻をかんで、と傍にあったティッシュを手渡す。


「それで、今はどんな状況?」

「えっと、それは……」


 彼が落ち着くのを見越して、私から話を切り出す。

 コンコン、と扉を叩く音がした。


 私も彼も、音のする方へ振り向いた。

 見知らぬ誰かが、開きっぱなしだった扉の前で立っている。


「我が話すよ~、魔法使いさん。それとも~、ラブラブなお二人さんの為にもう少し待ってた方が良かったかな~?」


 小さな男の子が、ヒルダ以上のニヤニヤ顔で立っていた。

 金色の目と虹色の目を持ったオッドアイ、長く伸ばした黒髪をポニーテールにしてまとめている。


「らぶ、らぶ?」


 よし、笑っている男の子には遠い海の底で幸せになってもらおう。


「坊や、ちょっとお姉ちゃんと向こうでお話しましょうか?」


 初級の風魔法で、黙らせようとした。


「ダメだよ~。今魔法使ったら」


 私の魔法が止められた。


 なんで魔法が発動しない?


「君は、今絶対安静だ。さっきは素敵なご歓待ありがとう。中々楽しかったよ、リリー。竜である我に挑む者なんてに数百年ぶりだ。うん、実に愉快だったぞ」


 竜? この小さな子供が?


「リリーさん、紹介するよ。この人は、竜のファフニールさん。ゲオルグさんの元相棒だよ」


「うむ、その通りだ。褒めて遣わすぞ、シン。しかし前回の魔王討伐で、竜の姿も人の姿も見せたはずなんだがな~。不老不死の魔法使い様は、頭の中が老化しているとお見受けする」


 偉そうな子供は、腕を組んで仁王立ちしている。


「ところでシン、褒美は何にしようか。例えばの話、この部屋を一時間前から録画してる魔法水晶があるとする。君達二人の恥ずかしい場面が記録されてるとする。どう? ここは一つ、皆で鑑賞会といっちゃう?」


「「絶対ダメ!!」」


 私とシン君の声が響いている。


 どうして彼もダメなのか分からない。

 知りたいけど、言えば私も彼に理由を言わないといけなくなるかもしれない。

 私には、シン君を納得させるだけの嘘が思いつかなかった。


「な~んだ、つまんないな~。仕方ない、我の宝物として大事にするか」


「「それもダメ!!」」


 ☆


 偉そうな子供の名前はファフニール。

 ゲオルグの元相棒にして竜、肉体変化なんて高等魔法も彼にとっては暇潰しのお遊びだ。


『先に風呂でも浴びて来い。我の魔法で身体は万全だろうが、少し気分を入れ替えた方がいいだろう?』


 私は寝起き、シン君は看病明けだったから嬉しい。

 人間臭い竜の一声で、少し時間を置いてから再集合することになった。

 先にシン君が風呂に入っている間、私はファフニールに湖畔の家を案内される。

 森の家は、ファフニールと私のせいで木っ端微塵だ。


 テレビ、パソコン、炊飯器、電子レンジ、冷蔵庫、トースター、エアコン、扇風機、お風呂、シャワー、とこの世界には無いはずの物が魔道具として再現されている。

 中には、ファフニールが自分で考えた未知の物まであった。


(テレビとパソコンなんて、全く作れる気がしない)


 他のものは、私も自分で魔道具として再現済みだ。

 さすが竜、私では全く敵う気がしない。


「いろんな世界を見てるからね、便利になりそうなものは片っ端から手を出してるよ」


 私は分不相応に比べて、ちょっとショックを覚えながら入浴を済ませた。

 お風呂を終えて戻ってくると、シン君とファフニールがソファに腰掛けていた。

 竜は、シン君と対面で座って話し合っている。

 私も、シン君側には座ることにした。


「ゲオルグからヒルダを通じて、我へ手紙があった」


 私は、竜から手渡された手紙を開ける。

 シン君には、既に中身を見たらしい。


 手紙は三枚あった。


 一枚目は、ゲオルグとヒルダの現在についてだった。

 二人は無事に王国から脱出し、別の国で子供達と仲睦まじく過ごしているとのこと。

 有望な兵士も連れて、王国民達も既に亡命済みだ。


「王国は今、大変だろうね~。人あっての国なのに」


 二枚目は、ゲオルグからシンへの謝罪。

 短かったが、誠意の感じられる言葉遣いだった。


「ゲオルグは真面目だけど、少々偏屈ジジイになったみたいでね。あのバカなりにシンのことを考えてのことだったらしい。リリーに惨敗してから、ヒルダに叱られて心を入れ直したそうだよ。今はヒルダと二人、他国の相談役に落ち着いてる」


 三枚目は、ゲオルグから元相棒ファフニールに向けた推薦状。

 シンを鍛えてやってくれ、という内容だった。


「どうする? シンは『お願いします』だって。君は少し安静にしないとダメだし、聖剣の使い方も知らないだろう? 聖剣が我の宝物庫(コレクション)に入ってた時期もあるし、我なら教えられるが?」


「リリーさん、どうかな?」


 願ってもない話だ。

 でも私は、ゲオルグから注意を受けていた。


「あなたの元相棒から昔聞いたことがあります。『ファフニールは黄金を守護する竜。願いを叶えて欲しくば、宝を献上せよ』と」


 竜は意地悪く笑った。


「そうなんですか!? ファフニールさん!」


 シン君は、宝のことを聞いていなかったらしい。

 命、寿命、血液、心臓と物騒なことを呟いている。


「そうだよ~、シンの案も魅力的だけどね……」


 竜は試すような目つきで、私を見据えていた。


「ファフニール、あなたは何が欲しいんですか?」


 私に準備できるものであれば、何でも差し出そう。

 血液程度なら構わない、寿命は幾らでも渡せる。

 不老不死だって、喜んで押し付けよう。


「話が早くて助かるよ、魔法使い。我に要求したいのなら、我が望む宝を差し出す必要がある。見合う宝でなければ、我は動かない。ゲオルグの時は、あのバカが大切に持っていた秘蔵の酒だったな。腕のいい職人が数年に一本しか作らない幻酒だ」


 彼が悔しそうに歯噛みする姿が頭に浮かぶ。


「あの泣き顔は実に素晴らしかった。本当に愉快だったぜ~?」


 薄々気づいていた。


(この竜、めちゃくちゃ性格が悪い!)


 ファフニールは根っからの性悪者(サディスト)だ。

 単純に希少価値の高いものを要求している訳じゃない。

 相手が手放したくない絶妙に大切なものを要求し、相手の反応を嬉々として観察している。


「だから、君の不老不死なんて願い下げだ。そもそも我は不滅の存在だし〜?」


 …………………………残念。

 ではいったい、私達は何を要求されるのか。


「さて、何が良いだろうな~。オリジナルの死霊秘法(ネクロノミコン)でも、純度100%の不老不死薬(エリクサー)でもいいけど、それではつまらん。君達が羞恥に悶え、泣いて悔しがる程の代償品……さぁ~って何が良いだろな~?」


 この性悪竜、もう隠すつもりがない。

 自分で理解しながら全く悪びれもしない悪人なんて、交渉相手としてはやり辛くて仕方ない。


 望んでいるものは分かり切っている。

 ファフニールは、魔法水晶をバスケットボールのように回して遊んでいる。


「シン、リリー、君達二人は我に何を差し出せる?」


 人化竜は、再度私達の前に水晶を差し出した。

 その球体には、私とシン君が寝ている時間を録画していると言っていた。


 私はシン君に見られたくない。

 シン君も私に見られたくない。


「もちろん、二人とも強制参加の鑑賞会付きだ」


 最悪。

 逃げ道を塞がれた。

 ファフニールに見られるのは最悪構わなかったのに。


「血液ではダメですか!?」

「ダメだ、命も寿命も心臓も要らん。我は、絶妙に恥ずかしがる人間が見たいだけだ」

「異世界の知識とかは如何でしょう!?」

「つまらん、我は千里眼で全て見通せる」

「そうだ! 森を焼き払った代償に!?」

「木を生やせばいいのか? 後で、我自ら増やしてやろう。世界樹とか植えちゃう?」

「この性悪! 悪魔! 人でなし!」

「はっはっは! そんな褒めるでないぞ? 気持ち良過ぎて仕方ないじゃないか〜」


 シン君は次々に案を出していくけど、ファフニールには全く歯が立っていない。

 タチの悪いデキる竜だ。


「シン君、どう? まだ他に策はある?」

「ごめん、リリーさん。もう無理」


 私は、シン君の髪を触っていたことがバレたくない。

 でも、なんでシン君は私に魔法水晶の映像を見せたくないのだろう?


「ところで、シン君」

「なに? リリーさん」

「なんで、魔法水晶の映像を見せたくないの?」

「いや、寝顔見られたくないし。そう言うリリーさんこそ」

「私だって、寝顔見られたくないもの」


 私達の会話に、意地悪な竜が口を挟む。


「いや、二人とも充分に見たでしょうが。それともな~に? 相手が寝ている間に、イヤらしいことでもしてたの? さすが最近の若者はやることが違うな~、このムッツリさん達め」


「そ、そんなことするわけないじゃない!」

「そ、そそそそそうですそうです! 言いがかり止めて下さい!」


 私とシン君は、ファフニールには聞こえないように内緒話をする。


「(ところで、なにしたの? シン君)」

「(リリーさんが教えてくれるなら、僕も言う)」


「言わなくても見ちゃうんだけどね」


 竜は、愉悦の表情を浮かべていた。

 賢者には、私達の会話なんて筒抜けだ。

 できれば今すぐ殴り飛ばしたい。


「二人とも、そろそろ諦めついた~?」


 私は、楽しそうな性悪竜を横目に考えを巡らす。


 勇者の聖剣は、魔王を倒す上で必要になる。

 前回は私が何とか倒せたけど、ギリギリだった。

 一歩間違えば、私達の方が負けていた。


 聖剣の使い方を知っているのは、歴代の勇者くらいしか私も知らない。

 でも、勇者はシン君以外もう居ない。

 勇者が書いた聖剣の取扱説明書(トリセツ)も意味不明だった。


 ゲオルグの元相棒が知っているなんて、考えもしなかった。

 この機を逃せば、次はない。

 ファフニールが興味を無くしてしまえば、すぐに飛んで行ってしまうだろう。


(分かってる、分かってるけど)


 私は、シン君の方を見た。

 彼と目が合った。目を逸らす。

 逸らしてすぐ、彼に気づかれないようにもう一度見る。また目が合った。目を逸らす。


「お二人さん、イチャイチャ中に申し訳ないんだけど……」

「「イチャイチャなんてしてない!」」

「おぉ、息ピッタリ。で、どうする? 我も暇じゃない。できないなら、もう帰っていい?」


 恥ずかしい。でも……。


「やりましょう。いいよね? シン君」

「はい、もうそれでいいです」


 ドっ、と疲れた。

 シン君も同じだろう。

 冷や汗で背中が冷たい。

 何でも良いから着替えたかった。


「いっえ~い! じゃあ、準備するからちょっと待ってて!」


 ファフニールは、私でも知らない魔法を無数に配置して中心に水晶を置いた。

 魔法陣が部屋全体に広がり、家の壁に消えていった。


 途端、真っ暗な世界に切り替わった。

 私達の目の前には、大きな光板が真っ白に光っている。


 間違いない、映画館だ。

 隣には、シン君もファフニールも居る。


「ゲオルグとヒルダに話を聞いた時から、ずっと考えていたんだよ。今日はなんて楽しい日だ! これであと十年は退屈せずに済みそうだぜ!」


 ソレハヨカッタデスネ。


 暗めの青い絨毯、赤い座席、緑色の非常口マーク。

 手触りも質感も全てが本物のようだ。

 稀代の魔法使いと呼ばれる私なんて、赤子レベルとしか思えない。比べることすらバカらしい。

 トンデモない魔法練度だった。


「スッゲェ! もしかして僕達だけ!? 貸切!?」


 シン君は、私と違うところで驚いている。

 きっと懐かしい光景だろう。


 でも彼は、私にとっても懐かしの光景とは知らない。


 自分も異世界からの召喚者だ、と私はシン君に言っていない。

 いつか言おうと思っていたけど、言い出す機会を見つけられないでいた。


「これで契約は成立したね。我ファフニールは、勇者の聖剣特訓に付き合うと約束しよう」


 人化した竜は、二つの飲み物とポップコーンを一つ座席に置いた。

 席は中央やや後方、一番見やすい席に私とシン君を誘導する。


「最後に、我からのプレゼントだ」


 パチン、と竜が指を鳴らす。

 私もシン君も制服に着替えていた。


 制服は、私が召喚前に着ていたものだった。

 シン君の制服も、同じ高校の男子用だ。


「ではお二人さん、短いけれど楽しい時間を過ごしてくれ。終わるまでは誰も入って来ないから、安心してデートを楽しむといいさ。『上映中はお静かに』も今回は大丈夫だね」


 ファフニールは、どこまで把握しているのか。


「でも、人に言えないことをやっちゃあ、ダ~メで~すよ~?」

「さっさと消えて」


 私は、火球(ファイヤーボール)を手に浮かべる。


「アッハッハッハ、我は外で待ってるよ。あとは、お二人でごゆっくり〜」


 ファフニールは消えた。


「リリーさん! 火消して!」

「そうね、雨降っちゃうわね」


 水に濡れたまま、映画を見たくはなかった。

 私は火を消し、シン君と二人並んで席に座る。

 前の世界の娯楽に触れるのは、数十年ぶりだ。

 映画を見られる楽しみと、他に誰も居ない非日常感で胸がいっぱいになる。


「見て下さいリリーさん、CMですよ!」


 シン君は浮かれていた。

 彼の言う通り、本編はまだ始まっていない。


「そうね、私この時間好きよ」

「リリーさんもですか? 本編前もエンドロールも全部見てこその映画ですよね?」


 よく一人でレイトショーを見に行っていた。

 人が少ないから、上映中は静かで声も少ない。

 スクリーンと私の間を遮るものが無くて、うるさい人達も居ない。

 いつも怖いとしか思えない暗闇も、映画館では不思議と安心できて居心地が良かった。


 レイトショーを見る度、毎回思っていた。

 私は誰にも頼らず一人で生きていくんだ、と。


 ポップコーンもジュースも、いつもは買わない。

 食べ切れないし、物語に集中できないからだ。


(でも、今日くらいはいいかな?)


 シン君が楽しそうだ。

 私は、彼との間に置いたポップコーンを一口入れる。

 ポップコーンを分け合うのは、小さな頃に両親と一緒に見に行ったきりだ。


(みんな、元気にしてるかなぁ。できれば私のことは忘れててほしい。数十年も娘や友達が行方不明なんて事態、私だったら耐えられないもの)


 他の映画の予告編に切り替わる。

 静かにしていたシン君が、意を決して口を開いたのが分かった。


「リリーさんも、召喚者だよね?」


 予告編は、多くの人が好きそうな内容だった。

 悲劇のヒロインが沢山の仲間達に励まされながら、敵を倒す為に頑張る話だった。

 ラスボスを倒せばハッピーエンド、誰の目にも分かりやすい喜劇だ。

『おもしろかった』、『すごかった』、『感動した』と多くの人達が呟いて褒めるに違いない。


「いつから気づいてた?」


 もうすぐ本編が始まる。

 それでも私は、映画から目を離してシン君を見た。

 彼も、私を見ていた。


「割と最近です。使っている言葉が異世界っぽくないって気づいたから」


「そっか」


 正直、彼が気づいてくれて嬉しかった。

 私から切り出せなかった悔しさよりも。


「ごめんね。『あなたの気持ちもよくわかる』なんて簡単に言えなくて」


 スクリーンは、配給会社のアニメーションに入った。


「大丈夫です、分かってますから。今は、この時間を楽しみましょう」


 彼はスクリーンに目を向けた。

 私も同じように映画を見る。


 本編は三部作、連作短編のドキュメンタリーだった。

 登場人物の声と動きを捉えつつ、所々文字が入る。


 落ち着いて見るにはちょうど良かった。

 最近は、山あり谷ありすぎて少し疲れていたみたい。


 自分達の話と気づいても、あまり驚きはしなかった。

 それはシン君も同じだ。


 第一部の主人公は、高校の新入生だ。

 私が異世界召喚される直前からシン君に出会うまでを描いている。

 夢で見た後だから、新鮮味はなかった。


 多くの新入生が集まる中、彼女の足元に突然魔法陣が現れて消えた。

 周囲は騒いでいたが、すぐ静かになった。

 何もなかったかのように入学式が終わる。

 新入生達は各クラスで簡単な自己紹介の後、部活動に参加したり見学したりしていた。


 場面切り替わって、私は異世界召喚を知る。


『元の世界に帰してよ!!!!!』


 王に掴み掛かるも大して傷は付けられず、気分は沈んで与えられた部屋に閉じこもった。

 聖女ヒルダの甲斐甲斐しい世話のお陰で、少女は元気を取り戻す。

 一人前の魔法使いとなった後、王国の望む魔王討伐を聖女や竜騎士と一緒に成し遂げた。

 魔法使いは役目を終え、周囲の反対を押し切って森に引きこもり、魔法研究に没頭していく。


 第二部の主人公は、高校二年生になった男の子だ。

 シン君が異世界召喚される前から、私に出会うまでを追いかけている。


 黒髪黒眼の少年が、窓際の席から外を眺めている。

 彼の目には、満開の桜と登校してきた新入生が映っていた。

 目線の先で突然、一人の女子生徒が光って消える。

 足下には魔法陣のようなものが描かれていた。

 騒いでいた周囲は時間が経つと、今まで通りの日常に戻っていった。

 まるで、何も起きていなかったかのようだ。


 しかし、シン君は消えた女の子を覚えていた。

 新入生に聞き込み、校門で挨拶していた生徒会と風紀委員に確認し、学校の事務員さんに頼み込んで監視カメラも見せてもらったが、アテは全て外れた。


 退屈な日常から抜け出せると思っていた。

 消えた女の子の足取りを追えば、何かが変わるかもしれない予感がある。

 自分しか気づいていない異変はアニメや漫画、小説の中だけと思っていた。

 けれど探し始めて一ヶ月、手掛かりは何も掴めない。


 夜、彼は監視員の目を盗んで校門を飛び越える。

 シン君は、女の子が消えた場所に立っていた。


『もし異世界があるなら、僕も行ってみたい』


 今宵は満月、何かの不思議エネルギーが切っ掛けで異世界への扉が開くかもしれない。

 夜空に広がっていた雲が晴れ、月と共に無数の星が眩く輝く。

 彼の足下で、魔法陣が浮かび上がった。


 その後、シン君は私と同じように異世界へ召喚され、現実を突き付けられた。

 異世界召喚者として優遇されるのは変わらない。

 私と違うところは、召喚に好意的だったことだ。

 帰れないと知っても、気にしていない様子だった。

 しかしゲオルグとの訓練に音を上げ、彼は前の世界に戻りたいと願った。


 でも、竜騎士が現実を改めて突き付ける。

 身体は日々の無茶な訓練でボロボロに、精神も一縷の望みを消されて疲弊していく。

 舞踏会の夜に私と出会ったのは、絶望感に浸って全てを投げやりにしていた時だった。


『私はリリー。シン、あなたはどんな人なの?』

『……何もできません。僕はただの人間ですから』


 第三部は、私とシン君が異世界で暮らす話。

 私がゲオルグの無茶な訓練からシン君を助け、ヒルダと久しぶりに対面でお茶会し、箒で二人夜空を駆けて、私がシン君を勇者として育て上げると決めた。

 勘違いからファフニールを倒そうとして失敗し、性悪竜にシン君との関係を揶揄われ、今は映画館デートだ。


(認めるわ)


 お節介焼きな竜に言われるまでもない。

 確かに、私は彼に惹かれている。シン君のことは嫌いじゃない。

 優しくて、可愛くて、頑張り屋さん。

 最近は頼り甲斐も出てきて、時間が許すならいつまでだって傍に居たい。


(私って、チョロ過ぎるよなぁ)


 白馬の王子様や英雄が居たとしても、私は彼を選ぶ。


(でも、私は彼を自分の計画に利用している)


 映画はエンドロールに入った。

 登場人物以外は、全てファフニールの名前だ。


「ハハッ!」


 シン君の呼吸が笑いに変わった。


(ごめんなさい)


 私も、彼の隣で笑いたかった。


 エンドロールが終わった。

 最後に見せられるのは、ファフニールの言っていた私達が恥ずかしがる場面だろう。


 彼は私が眠っている傍に座り、両手で私の手を握り続けていた。

 精魂尽き果て意識を失っても、私の手を離さない。

 ファフニールが離れたがらないシン君のため、食事を口に押し込む場面さえあった。


 何が恥ずかしいのだろう?

 私としては嬉しいだけだ。

 隣を見ると、彼が暗い場所でも分かるくらい顔を真っ赤に染めていた。


「こ、れは、その……だって心配で」


 私は質問していないのに、シン君は弁明をし始めた。

 スクリーンと今の自分を見比べて、忙しなく手を振っている。


 悩んでいたことがバカみたいだった。

 そうだ、まだお礼も言えていない。


「シン君」


 思ったより小さな声が出た。

 けど、彼に聞こえるだけで充分だった。


「はい!」


 シン君は背中を伸ばし、初めて会った時のように身体を震わせていた。

 怒られるとでも思っているのだろうか?

 別に変なことをするつもりなんてないのに。


「ごめんなさい、心配をかけて。あと、ありがとう。ずっと手を握っていてくれて」


 手を伸ばし、彼の黒髪を優しく撫でる。


 スクリーンでは、シン君が私を枕にして眠り始めた。

 入れ違いで私が目覚め、今の私と同じように彼の髪を優しく撫でている。


 現実の彼は、顔をさらに真っ赤にして目を逸らした。

 シン君も、映画の私に目を奪われていた。


「僕の方こそ色々迷惑かけてるのに、沢山助けてくれてありがとう。でも、リリーさんに頭を撫でられるのは恥ずかしいから辞めてほしい」


 でも私は、彼の恥ずかしがる顔をもっと見てみたい。

 だからシン君の言う通り、頭から手を離した。


「つまり、髪を撫でるのは止めればいいのね?」


「え?」


 私は席に着いたまま、前のめりになって彼を抱きしめた。


「ちょ、ちょっとリリーさん!?」


 シン君が暴れているけど気にしない。

 彼は、日々の訓練でとても強くなった。

 そんな彼が離そうとしてくるけど、私は身体強化の魔法で一層強く抱きしめた。


 まだ、シン君に負ける訳にはいかない。

 彼の顔をスクリーンに向けて固定する。

 ちょうど私の口が、シン君の耳元にくる形だ。


「リリーさん!? 流石にこれは止めて下さい!」

「敬語使わないって約束でしょ? それに、そんなに私のこと嫌い?」

「へ!? いや嫌いじゃないですけど……あの、それってどういう」

「私はね、あなたのことが好きなの」

「LIKEの方の!?」

「LOVEの方の」


 ボンッ、と彼の顔が一気に赤くなる。

 良かった、嫌がっては無さそうだ。

 であれば、もう躊躇う必要もない。


「でも、その、僕なんかが……」

「あーもーめんどくさいな!」


 私はシン君の頬にキスした。

 席に座り直し、彼の様子を窺う。


 シン君は、私を見ながら呆然としていた。


「次は、ここを貰うから」


 私は、人差し指でシン君の唇に触れた。

 ちょうど館内が明るくなった。

 いつの間にか映画が終わっていたらしい。


 迷っていたことも覚悟が決まった。

 私は、勢い良く席を立つ。


「さて、行きましょうか? シン君」


 私は、彼に手を伸ばした。


「は……はい」


 心ここに在らずの彼を引っ張り上げ、私達は二人で出口に向かう。

 外ではファフニールが待っていた。


「どうだった? お二人さん。我の初監督作品『ひとり、ふたり』は」

「そうね、まぁまぁだったわ。シン君は、どうだった?」

「……全部忘れました。リリーさん、今日はもう限界。お願いだから許して」

「仕方ないなぁ」


 私は、彼の手を離した。

 おそらくファフニールが準備した彼の自室に向かうのだろう。


 竜は不思議そうにシン君を見ていた。

 しかし性悪者は察しが付いたようでニヤニヤ笑いながら、私に近づいて来る。

 黒色のポニーテールが楽しそうに揺れていた。


「おやおや~? リリー、我言ったよね~? 『人に言えないことをやっちゃあ、ダ~メで~すよ~?』って」

「言えるから良いのよ。彼にキスして好きだ、って言ったの」


 竜は呆気に取られていた。

 どうせ、ここで私が顔を真っ赤にして恥ずかしがる姿が見たかったに決まっている。


「いや、本当に驚いた。まさか吹っ切れるなんて」


 ざまぁみやがれ。

 私は、あなたの手に収まる器じゃないのよ。


「フフッ、これでさらに十年は楽しめそうだ」


 竜は笑いながら、私に背を向ける。


「聖剣の訓練は明日から入る。シンのことは任せろ。魔王如きは、もう敵ではないな」


「ちょっと待って」


 私は、立ち去ろうとするファフニールを呼び止めた。


 竜は黙ってオッドアイの両目を細める。


「…………………………正気か?」


 私は呼び止めただけだ。

 しかし、ファフニールには何でもお見通しらしい。

 話さなくても分かるなんて、竜の賢さには永遠に敵いそうにない。


「正気よ。我ながら強欲よね」

「君は悪役令嬢にでもなる気か?」

「好きに呼んだら?」

「我の性悪も大概だが、君はいっそ清々しいな」

「それで、どうするの?」


 竜は虹色の目を閉じ、金色の目で私を謀っている。


「……いいぜ魔法使い、君の提案に乗ってやる。これで、あと百年は楽しめそうだ」


 竜は、扉を静かに閉めて出ていった。


「……はぁはぁはぁ、すぅはぁぁぁ」


 冗談抜きに呼吸が止まっていた。

 本気の竜の姿なんて、二度と知りたくない。


 ファフニールと話していた時から背中の冷や汗が凄い。きっと森で戦った時なんて、お遊びくらいにしか思われていなかった。


 私は、制服からパジャマに着替えた。

 さっきまで寝ていたベッドに寝転ぶ。

 今日は流石に疲れた。


「……シン君にはバレないようにしないと」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ