第5話:『陰謀の渦と、魔法カフェの守り手たち』
朝の光がカフェ・ルミエールに差し込み、いつもより緊張した空気が漂っていた。
シャルロッテは魔法ラテの泡を整えながら、目を細める。今日の来客は、偶然ではない——影が再び動き出す予感があったのだ。
「マスター、大丈夫ですか?」
妖精のミナが小さな手を差し伸べ、心配そうに尋ねる。
「ええ、大丈夫。今日も私たちの場所を守るだけ」
シャルロッテは魔法でラテの温かさを確認し、心を落ち着ける。
——このカフェは、私たちだけの場所。守る価値がある。
そのとき、扉が勢いよく開き、王太子が駆け込んできた。
「シャルロッテ! すぐ外に来てくれ!」
何事かと外に出ると、街角に見慣れない騎士団が集結し、影の者たちが動き出していた。
「過去の陰謀の一派が、ここまでやってきたのね……」
シャルロッテは静かに言い、カフェに戻ると、仲間たちに指示を出す。
「ミナ、店内の魔法防御を強化して! 扉と窓を守って!」
「はい、マスター!」
小さな妖精が翼を震わせ、魔法陣を描き始める。
王太子も黙って手伝い、彼女のそばに立つ。
「君とこの場所を守るためなら、僕は何だってする」
シャルロッテはその言葉にうなずき、決意を胸に固める。
影の者たちがカフェに迫る中、シャルロッテは静かに手をかざす。
「魔法カフェ・ルミエールの守り手よ……力を貸して!」
ラテの香りに混ざる魔法の光が店内を満たす。温かさと優しさの力で、影たちを退ける盾となるのだ。
戦いは短時間で終わった。影の者たちは退散し、街は再び静かさを取り戻す。
シャルロッテは息を整え、仲間たちと笑顔を交わす。
——怖かったけれど、ひとりじゃない。守るべき人と場所がある。
その夜、王太子とカフェのテラスに座り、静かに月を眺める。
「今日のこと……ありがとう」
「こちらこそ、太子様がいてくれたから助かった」
王太子は優しく手を握る。
「君と、この場所を守ることができて嬉しい。君はもう、ただの元悪役令嬢じゃない——僕の大切な人だ」
シャルロッテの頬が赤く染まり、胸が温かくなる。
「私も……あなたを信じていいのですね」
月明かりの下で、二人は互いを見つめ、静かに笑った。
陰謀は完全に消えたわけではない。だが、このカフェ、この仲間、そして互いの信頼があれば、どんな困難も乗り越えられる——シャルロッテはそう感じた。
翌朝、再びカフェの扉が開くと、街の人々の笑顔が彼女を迎える。
——平穏で、穏やかで、少しだけ魔法に満ちた日常が、ここにはあった。
シャルロッテは深呼吸し、ラテの温かさに微笑む。
「さあ、今日も誰かの心を温めましょう」
魔法カフェは、ただの店ではなく——人々を癒やす、希望の場所として輝き続けるのだった。