第4話:『影の訪問者と、再び動き出す陰謀』
朝の光が差し込むカフェ・ルミエール。今日もいつも通り、穏やかな時間が流れていた。
シャルロッテは魔法ラテの泡をそっと整えながら、微笑む。
「今日も平和……かしら」
しかし、外の通りに不穏な気配が漂っていることに、彼女は薄々気づいていた。
「ミナ、今日はいつもより警戒を」
「はい、マスター!」
妖精のミナは翼を震わせ、窓の外を注意深く見つめる。
そのとき——扉が静かに開き、見慣れない人物が入店してきた。
黒いローブに包まれ、顔の半分を覆った影のような存在。
シャルロッテの胸に、小さな警鐘が鳴る。
「……いらっしゃいませ」
影は低く、冷たい声で言った。
「シャルロッテ・フォン・アルトハイム……久しぶりだな」
その瞬間、シャルロッテの心臓が強く打った。
——かつて自分を追放に追い込んだ、陰謀の影……。
「ここで何の用ですか?」
「用……か。興味本位だ」
影はそう言い、カウンター越しに静かに立っていた。
その場に駆け込んできた王太子は、いつも通り落ち着いた表情でシャルロッテの前に立つ。
「シャルロッテ、君はひとりじゃない」
その言葉に、シャルロッテは少しだけ勇気を取り戻す。
影はくすりと笑った。
「ふふ……まだ王太子に守られているのか。面白い」
そして、手に握った小さな封筒をカウンターに置いた——その中には、古びた書類と、過去の陰謀を示す証拠が入っていた。
シャルロッテは封筒を開き、ゆっくりと目を通す。
「……やはり、まだ終わっていなかったのね」
王太子は彼女の手を握り、優しく言った。
「大丈夫。君と、このカフェ、そして仲間たちを守るために、僕は動く」
シャルロッテは深呼吸し、魔法のラテから立ち上る温かい香りに気持ちを落ち着ける。
——この場所は、ただのカフェではない。人々を癒やし、希望を与える場所。
——だから、守る価値がある。
影は一度微笑むと、何も言わずに立ち去った。しかし、カフェの中には、まだ冷たい余韻が残る。
その夜、シャルロッテはカフェの窓から月を見上げる。
王太子は隣で静かに座り、言葉少なに寄り添う。
「今日のこと、怖かった?」
シャルロッテは微笑み、うなずく。
「少し。でも、ひとりじゃないから」
王太子の手がそっと彼女の手を包む。
——過去の影は消えない。けれど、守る力と支えてくれる人がいる——
シャルロッテは、少しだけ強くなる自分を感じた。
明日もまた、カフェの扉を開くと、誰かの笑顔が待っている。
そして、陰謀と日常が、少しずつ交差していく——その予感を胸に、彼女は今日を締めくくった。