光を奪えば、闇ガ来ル
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別次元、異世界、亜空間、平行世界……
全存在を跨ぎ、侵略者を処理し続ける
一体の影の運命とは…
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__侵略者は生涯で初めて、恐怖を感じていた…。全存在随一の巨大戦力達は、とある見知らぬものに絶望していたのだ…__。
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短編:The Dirty One
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1
討伐の依頼があった。依頼主は次元界を統括している、神という存在。森羅万象に導きを与え、事象の循環に日々苦心している者達だ。最近では『異世界転生法』というものが定められたらしく、出張る機会が増えているようだ。
依頼内容は、亜空間からの侵略者の排除…ならびに其の根源の鎮圧。最近は他の世界とは “本当に” 全てが異なる空間…そこから突如現れるテロリストによって、転生者達が消息を絶つ事件が多発しているらしい。
無論彼らの救助も任務に入っているが、希望は極めて薄いと言っていい。なにしろ環境そのものが違い、まともに生命活動が出来ないことはおろか…身体が残るかどうかも分からない状況に陥るからだ。
次元や神にも含まれない “完全な異世界” が相手では、過大な力を持つ転生者達すら対処のしようが無い。そのために、影は動く…。
次元界に此方の干渉を気付かれないよう、【因果断絶】を施す。術者のみが活動出来る孤立空間で、存在の痕跡を残さず目的に集中出来る。どんな事件であれ、俺の存在は極秘にしなければならない。
永遠に張り続けられる術だが、そう都合良くはいかない。そうすると『止空』という禁断の異界が生じてしまい、更なる問題への引き金を引くことになってしまうからだ。
また…一見自分だけが自在に敵を処理出来る、楽な仕事に見えるだろう。しかし諄いようだが、相手は “完全な異世界” だ。因果だとか断絶だとか…そういう言語や存在の理論や事象など、全く意味が無い場合が大多数なのだ。
此れらを踏まえた上で、任務は常に早期解決することが重要事項となる。如何なる理由があろうと、保留や失敗は許されない。
現在地は次元界宇宙空間ダクシーヌ銀河セトル星の、とある繁華街跡地。光が届きにくい星であり、既に廃墟化した仄暗い世界を調査している。神によれば、逃げ延びてきた転生者は此処で消息を絶ったらしい。
確かに『歪』の痕跡と共に、彼らしきエネルギーの残痕も感知出来た。同じ次元界ならほぼ無敵の能力者みたいだが、今回だけは相手が悪かったようだ。それに…目標は群れている、かなりの数だ。
一体一体の戦力が桁外れにデカい。それとまるで草が大量に混じった糞と土がさらに混ざり、そのまま生温く湿った様な臭いが充満している。
『ドレクトバ』だ、間違いない。分類はサーンアカディ、まぁ要するに次元やドメインには含まれない存在だ。
気持ち悪い蟲が融合した様な、グロテスク型エイリアンみたいな奴だ。体長は2mから3m、食性は肉食で極めて獰猛。加えて知性体でもあるため、その協調性は実に巧妙且つ狡猾。非常に厄介で生理的に無理な相手だ。
そんな激臭共が密集した中心に、転生者の強い残痕があった。どうやら此処で追い詰められ、食い尽くされたらしい。奴らに食われれば、もう天国や地獄といった概念ではなくなり…再転生の機会を永遠に失う。
つまりは、本当に亡くなられてしまうということだ。理想だらけの最強な生涯を楽しむはずだったものを…。せめて神の供養あれ。…俺は目標を捜す、さらなる犠牲を防ぐために。
2
ドレクトバの気配を近くに感じる…。甲殻を擦る様なギチギチとした音と、ゾンビの群れの様な呻き声が微かに聞こえ始めた。奴らの感覚は異常に鋭く、ゆえに対応が素早い。因果断絶も無効の様だ…。
気付かれずにやり過ごしたい場合は、全身の匂いを消し何処かに上手く隠れることだ。隠れるのが下手なら、とにかく離れるしかない。
俺の場合は仕事だ、気付くか気付かれないかの緊張感を味わうほど暇じゃない。だから隠密行動はせず、むしろ引き寄せて一気に片付ける。俺は床を力強く踏み込み、音を鳴らした。
暗い空間の中、奴らに気付かれた感覚がハッキリと伝わる。実体を捉えたのは、そこから僅か5秒以内だった。
?「コンタクト。」
俺は前もって構えていた特製武器で、群れの掃討を始めた。四方八方から大群勢で取り囲んできたが、焦らず少しずつ順調に処理していく。身のこなしを無駄なく工夫しながら、武器と体術を上手く使い分けることが重要だ。
一体一体…また一体と迅速に排除し続け、敵影が見えなくなったのは10分後だった。ただし見えなくなっただけで、全滅には至っていない。連中はどうやら相手の戦力に警戒し始め、撤退するための暗戦に持ち込む気だろう。
決して逃がさん。奴らは光溢れる楽園を…日常を壊し、未来を奪った。被害者のみならず、その関係者達がどれほど悲しみ…苦しんでいることか。中には家族になった者だっていたはずだ…。
ならば闇の側から、容赦無く理不尽に殺すまで。奪った分のツケを払わせるってヤツだ。もはや奴らには、死ぬべくして死ぬ運命しか待っていない。俺がそうさせる。
ドレクトバC「こ、降参だ!」
ドレクトバA「頼む!どうか命だけはぁ!!」
ドレクトバB「なぁ、聞いてるか?…ぐっ…かぁ…!」
A、C『う、うわあああッッ!!!!』
案の定…残り三体になった途端に無様な真似をしてきたので、問答無用で排除した。
呆れるほどの自業自得だ。そうやって同じく命乞いをしたであろう被害者達に、一度でもチャンスを与えたことがあるのか…。この期に及んで、自分も殺される覚悟すら持ち合わせていないとは。
クロス「クロスより神へ。依頼の目標を殲滅、転生者は間に合わなかった。」
神「…そうか……分かった。遺族や友人には、私から報告しておく。苦労をかけたな…。」
クロス「次の任務に向かう。侵略者が現れたら、また『クロス・カウンター』へ依頼を。」
神「ん、今後も宜しく頼む。」
この態度や仕事ぶりを批判する者もいるが、そんなことはどうでもいい。俺はただ淡々と、淡々と任務を遂行するまで。武器を失えば身体を使い、手足を失えば頭や牙を使うだけ。
ロクな華も情熱も無いが、周りがそれを魅せて輝いていればそれで満足だ。俺は暗闇の中で、理不尽な奴らを処理し続ける。完全に絶命する、その時まで…。
___後日。
侵略者「ち、畜生が…。てめぇなにも…!?」
クロス「…!」
侵略者「ぶ!…がぶ…ごっ…!」
__侵略者は全員消滅…もはや輪廻転生の流転からも外され、二度と存在することはないという__。
MASTER です。
この度は御精読ありがとうございました。
Pixiv にも載せている作品ではありますが、なんとなく此方でも投稿したくなった次第でございます。
生産者がいるなら消費者がおり、どちらかが過剰になれば辻褄を合わせる存在が現れるもの…。自然って凄いですね。
ではまたテキトーに何処かで会いましょう。
Have@Nice Everyday:)