10)紫の薔薇
遥か太古の昔から存在するとされている、尊い種族がいる。
その種族は必ず美しい紫の髪を有して産まれてくるため、"紫の薔薇"と呼ばれた。
"紫の薔薇"は希少であった。種族の大きな特徴として、ほかの種族と交わった場合、混じり気のない相手の純粋な種族を産むことが出来るという。
つまり、血が交わらないのである。"紫の薔薇"の子どもは必ず、交わった相手の種族の子どもか、"紫の薔薇"の子どもの2通りとなる。ハーフは存在しない。
その為、絶滅の危機に瀕している種族や一族から非常に重宝された。
"紫の薔薇"は男も女もみんな紫の髪で産まれてくるため見分けがつきやすく、そして総じて薔薇のように華麗であった。人々は"紫の薔薇"の容姿の虜になり、常に大勢から求められる存在になる。
多産であるが、"紫の薔薇"が他の種族と交わった場合"紫の薔薇が産まれる割合は高くない。10人に1人産まれれば良い方であり、"紫の薔薇"が顕現するのはもっぱら子孫の代であった。
その為、子孫の中に突如として"紫の薔薇"が産まれると、その時にはじめて自分の種族がかつて絶滅の危機に瀕していたことを知るのである。
その希少性から、人身売買が禁止されている国であっても闇市で取引されることがある。
大陸の端に"紫の薔薇"だけが住む国があるとされているが場所は秘匿され、単なる噂話が人々の間に流れている。