4)鳥王
ある一族では高い地位にいる者の身体にタトゥーを彫る文化があった。
その一族は1年を通して暑い地域に住んでいるためか露出の多い服を着る習慣があり、身体に走るタトゥーは遠目からでも人々の目を引いた。
タトゥーの模様は美しく、特に位の高い女性に彫られた。そのタトゥーはすべて鳥の模様であり、花と共に描かれた。中には最上位の者にしか身体に刻むことを許されない鳥もあり、その鳥の模様は少女たちの憧れとなっていた。
職業によっても彫る模様は変化する。祭事を司る巫女には一生独身を誓うことを意味する〈朱雀〉の絵が彫られた。そして、王族には再生と平和の象徴として〈鳳凰〉の絵を彫ることが許されていた。鳳凰は、全ての鳥の頂点に立つ霊鳥である。
そのため王族にしか〈鳳凰〉は彫ることが出来ず、のちに王家を司る紋章となった。王族を守り支える者には〈鳳凰〉の羽根を身体に刻むことが許され、その者たちは力を得たという。
しかし、王族を代表する「王」は一族に語り継がれる神話に則り、鳳凰そのものであるとされるためタトゥーを彫ることがない。そのため王はシミひとつない真っ白な身体を持つ。
王は男しか許されず、民から〈鳥王〉と呼ばれ尊ばれた。
〈鳥王〉は最高権力者であるが、古くからの掟により身体に大きなタトゥーを彫っている高位の女性を妻に娶ることは禁じられていた。
これは権力の乱用から高位の女性を守るために定められた掟であるが、しばしば鳥王と巫女の禁断の逢瀬は恋愛小説に用いられ人気を博している。
かつて、実際にそのような関係があったのかは定かでは無い。