3)危険を感じる赤ん坊
とある一族の赤ん坊は、身にふりかかる危機を感じ取る力があるとされ一部の種族から非常に重宝された。
その力は成長するにつれて薄まっていき、10歳を堺に完全になくなるという。
危険を感じ取った赤ん坊はどんなに深く眠っていても目覚め、甲高い泣き声を上げた。危険の度合いによって泣き方が変わり、命にかかわる危険が迫っている場合には背を仰け反らせるような異常な泣き方をするという。
危険を感じ取る力は自身だけではなく、母親や父親、或いは自分を世話している人物にも適用され、周囲の人間に危機が迫っていても激しく泣き出す。
そのため、その一族の赤ん坊は常に身の危険に晒されている犯罪集団や、闇商人などに重宝された。或いは、献上品として一国の王に差し出されることもあったという。
王に献上された赤ん坊は常に王のそばに居ることとなり、毒が入っていないか毒味役に選ばれた。赤ん坊の口元に王の食事を持っていくと、毒が入っていれば火がついたように泣き出すためである。
しかし、10歳を過ぎると子どもは用無しとなり、雑用係や口減らしとして捨てられることもあった。
この危険を感じ取る能力は赤ん坊が生き延びるための生存本能であるとされ、一族が全滅しないようにする一種の工夫だとされた。しかし、実際にはこの力を悪用されて打ち捨てられる子どもが後を絶たず、呪いの力だと皮肉られている。