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16)狂戦士の一族



 その一族はかつて国々を恐怖に陥れた。


 狂戦士としか言いようのない強さに国は蹂躙され、数多の死体が築き上げられた。


 あまりの惨劇にその一族を滅ぼすために、それまで争っていた国々が同盟を組むほどであった。


 そうして一族は滅びの道を歩んだが、逃げ延びた者たちが世界へとバラバラに散ることになる。



 この一族の特徴として、大人は男女共に2mを超える頑丈な巨体を持ち、病に強くどんな毒も効かないとされた。

 そして、とにかく恐れを知らない。傍から見れば正気とは思えない狂った精神を持っていた。


 彼らは教えられていなくとも生まれつき戦闘のセンスがあり、独自の視点で敵を葬る術を磨くことが得意だったという。


 しかし、頑強な大人と違い一族の子どもは非常に弱く脆かった。


 あまりの虚弱体質故に、常に病にかかっているためいつ死ぬかも分からない状態であった。子どもは大人になるまで常に瀕死状態であり、ひとりで立ち上がることも走ることも出来なかった。


 身体も一定の年齢を超えるまでほとんど成長しない。小さく貧弱な子ども時代を無事に乗り越えられる子は全体の約4割であり、多産多死を地で行く一族であった。


 これは環境が悪いのではなく、生まれつきそういう体質なのだ。


 そして、大人が病にかからない頑丈な身体を持つのは、子どもの頃に一生分の病にかかったからだと言われている。


 毒にも一定の抗体を待つのは、子どもの頃に数多の薬を飲んだからだとも。


 なにより恐れを知らないのは、子どもの頃に何度も生死を彷徨い、死と隣り合わせの生活を長く送っていたからだといわれている。


 そして無事に大人になった彼らの精神は、常に生と死の間に立つ特異な存在となる。人々はその精神性を中庸と呼んだ。


 中庸とは、極端ではない、偏りのない精神性のことである。


 この世界では、中庸がある種の強さに直結する場合があり、極端な思想や偏りは柔軟性を失わせ、受け流せるはずの攻撃をもろに受けてしまうと言われていた。


 中庸を極めるためには長い修行を行い、かつ悟る必要があるため、中庸に到達した時にはすでに年を重ねている者が多い。


 しかし、彼ら一族は生まれながらに生と死の苦しみを強要される。それが結果として修行となり、大人になる前に悟りを開く。そして、若くして中庸を身につけるのである。


 頑強で毒に強く病にもかからない身体と、恐れを知らず、いかなる攻撃も受け流せる精神性。


 これらが、彼ら一族を最強たらしめた。


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