13)龍の始祖 ”蛇龍(イオルムンガンドル)”
遥かなる古の時代。まだ人間が神の手によって地上へ降りる前、龍の始祖とされる一匹の小さな龍が天から堕ちて来た。
その龍は罪を犯したために巨大な翼をもがれ、さらには地へ落ちた衝撃で手足が砕け胴体のみの哀れな姿となって地に蹲っていた。
その姿はまるで蛇のよう。それ故、墜ちた龍は”蛇龍”と呼ばれた。悠久の時が経ち、長く生きたその蛇龍は大地を飲み込むほど巨大に成長し、他の生物を脅かした。
蛇龍は単為生殖も可能であったため数多の卵を地に産み落とした。それらの卵は多くの龍をこの地に誕生させ、罪のない彼らはみな翼を持ち、母龍が二度と飛ぶことのできない大空を自由に飛んだ。
龍たちは賢かった。母龍がなぜあのような惨めな姿をしているのか理解し、距離を取ったのである。しかし、そんな子どもたちの中には龍の始祖である蛇龍を慕い寄り添う龍も少なからず存在した。
時が流れ、人間たちが地上に現れると龍たちも世代交代し、蛇龍が産んだ子どもはほんの一握りしか居なくなった。蛇龍の孫、その孫、さらにその孫と龍の世代交代が続くにつれて龍たちの蛇龍に対する意識もどんどん変化していった。
蛇龍を避けていた龍たちは逆に集まってくるようになり、蛇龍を龍の頂点に立つ存在だと認め始めたのである。それに伴いこれまで長い間、蛇龍のそばにいた龍たちは蛇龍を守護する”守護龍”と呼ばれるようになり尊敬された。
それでも、蛇龍を忌避する龍は存在したがごく一部であった。
蛇龍ただ一匹だけは他の龍に関心を寄せなかった。それでも蛇龍は世界にいるほとんどの龍を支配下に置き、命令することの出来る唯一の龍であった。




