竜との対峙
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
教えられた場所に竜はいた。竜の体は赤い鱗で覆われている。巨大な竜の前には凄惨な光景が広がっていた。惨たらしい状態となった冒険者がそこらじゅうに転がっている。
『そんな…』
『…いや、もしかしたら』
カインは冒険者達に回復魔法を発動させていく。しかし、冒険者達は誰も動かない。
「カイン、回復魔法を…」
「ダメです、試しました…誰も回復してくれません」
カインに出来る事はあくまでも回復である。カインとアーレンは間に合わなかった。
「グゥオァー!」
「ブォー」
竜は雄叫びを上げる。そして炎を吐いた。
「我に従う水の精霊…」
「我が魔力を糧として我へ水の檻を与えよ、ウォータ・ケージ」
「我が魔力を糧として我へ水の檻を与えよ、ウォータ・ケージ」
「我が魔力を糧として我へ水の檻を与えよ、ウォータ・ケージ」
「我が魔力を糧として我へ水の檻を与えよ、ウォータ・ケージ」
「我が魔力を糧として我へ水の檻を与えよ、ウォータ・ケージ」
竜の威圧感に気圧されながらカインは間に合う限りの水檻を防御壁代わりに発動させる。しかし竜の炎の息によって五重の水檻が全て掻き消され、更にカインとアーレンは火傷を負った。
「五重で足りなかった…」
カインは自分とアーレンへ直ぐに回復魔法を発動させる。
「これが竜…」
アーレンは呟いた。
竜の炎の息によって冒険者は焼き消されている。それが竜の炎を吐いた理由だった。
「消し損ねていたか人間」
竜はカインとアーレンを見つける。
「我に何をされたわけでもなく…」
「自分達の脆弱さも理解せずに何度も刃を向ける、愚かな人間」
竜は静かな怒気を発していた。
「違うんです、話を聞いて下さい!」
「冒険者達は魔人に…」
「何を今更になって言い訳を!愚かなり!!愚かなり!!!愚かなり!!!!」
カインとアーレンは竜に訴える。しかし竜は猛っていた。声が届かない。
「グゥオァー!」
竜が前肢でカインとアーレンを薙ぎ払う。アーレンはなんとか避け切った。しかしカインは風圧で弾き飛ばされる。すぐさま竜がカインを踏み潰そうとした。
「危ない!」
アーレンはカインを庇う。カインの代わりにアーレンが竜に踏み潰された。
「グワァー」
アーレンの苦しむ声が響き渡る。カインは自分の中で何かが沸き立つのを感じた。
「我に従う水の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ高位の水を与えよ、ハイ・ウォータ!!!!!!!!」
巨大で重い水の塊が竜の巨体を押し退ける。よろけてから竜は水の塊に弾き飛ばされた。
「アーレンさん!」
カインはアーレンのもとに駆け寄る。
「なんて事を…いや、ありがとうカイン」
アーレンは生きていた。カインは安堵する。しかし状況は悪化していた。
弾き飛ばされていた竜が起き上がる。
「グゥオァー!!!!!!!!」
竜は怒りに呑まれてしまった。
「カイン、鎧を頼む」
アーレンは覚悟を決める。
「我に従う守の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ鎧を与えよ、アーマ」
カインは魔法の鎧を具現化させた。アーレンは外套を脱ぐ。
竜が襲いかかった。竜の攻撃は猛烈である。カインでは避けても無事で済まない。
「カインは身を潜めて援護を頼む」
『情けない、でも僕がいたらアーレンさんに余計な負担がかかる…』「はい」
カインは身を潜めた。
「我に従う雷の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ高位の雷を与えよ、ハイ・サンダ」
「我が魔力を糧として彼へ高位の雷を与えよ、ハイ・サンダ」
「我が魔力を糧として彼へ高位の雷を与えよ、ハイ・サンダ」
…
カインは繰り返し竜へ魔法を放つ。しかし竜は意に介さない。
『カインの魔法が効いていない…』
アーレンは竜の堅牢さを目の当たりにした。アーレンも剣を振るう。やはり竜の硬い鱗には傷一つ付ける事が出来ない。
『隙間なく硬い鱗が重なりあって…厄介だ』
『竜も生物である以上、頭部ならダメージがあるかもしれない』
『…でも大き過ぎる、届かない!』
アーレンには打つ手がなかった。届くとすればカインの魔法である。
「我が魔力を糧として彼へ高位の雷を与えよ、ハイ・サンダ」
「我が魔力を糧として彼へ高位の雷を与えよ、ハイ・サンダ」
「我が魔力を糧として彼へ高位の雷を与えよ、ハイ・サンダ」
…
カインもアーレンと同じ事を考えた。しかし、頭部への攻撃でも竜の動きを鈍らせる程度である。
『逃げるか…いや、逃げられるとは思えない』
『逃げられたとしても、竜が追ってきたら村や町に被害が出てしまう』
既に退路がない事をアーレンは自覚した。カインとアーレンは竜から逃げられない。
『カインの最初の攻撃、私が踏み潰された事で感情が昂ったんだろう』
『あれなら竜をどうにかできる』
『私が力尽きれば…カインが何とかしてくれる…』
アーレンは絶望的な希望を胸に抱きながら竜と戦った。




