戦士との会話
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
町へ向かう間もカインとリックは話をする。
「ワケあって一人で生きていく事になりました」
「住む場所と仕事を探さないといけません」
「そうか…確かに仕事は必要だよな、金がないと生きていけない」
ワケをリックは聞かなかった。話したくない事かもしれないからである。
「でも俺は…決まった場所に住んでいない、冒険者だからな」
「そうなんですか…」
現在、カインは金銭を持っていない。住む場所が要らないというのは都合がいい。
「泊れる時は宿屋に泊るけど、町から町へ移動している時なんかは野営している」
「どこにでも仕事があるからな、一つの場所に住んでいられない」
リックの話をカインは真剣に聞いていた。
「…実際には命の危険がある仕事だから部屋を借りられない」
「そして持ち家は高くて手が出せない」
冒険者の厳しい現実である。出会った時、確かにリックは死にかけていた。
「ただ、危険な代わりに自由と可能性が冒険者にはある」
「金を貯めて…商売を始めたり、悠々自適な生活をしたり、な」
リックの言う通り、冒険者には自由と可能性がある。
「冒険者かぁ…」
カインは呟いた。
「俺のジョブは戦士だから魔法使いの事はよく分からない」
「魔法使いには他の生き方があるかもしれないから…」
「仕事は町に着いてから考えればいいさ」
リックはカインを諭す。と同時にカインには疑問が湧く。
「ジョブって何ですか?」
「えっ、それも知らないのか」
「まぁ、魔法が使えるのに魔法の事を知らなかったんだから当然か」
カインはジョブというものを知らなかった。リックの口ぶりからすると誰もが知っているような事らしい。
「ジョブは父親から継承するんだ、ジョブによってスキルが変わる」
「スキルは…才能とでも言えばいいのかな、あるとないとで能力に差が生まれる」
ジョブとスキルについてリックがカインへ説明した。
「…例えば騎士はどんなジョブを持っているんですか?」
「いや、騎士がジョブだな」
「確か…身体や武器に関するスキル、あとは馬術のスキルを持ってたはずだ」
リックがカインの質問に答える。いずれのスキルもカインは自分にあると思えなかった。
「…どんな魔法が使えるんですか?」
「魔法を使うジョブは魔法使いだな、騎士が魔法を使うってのは聞いた事がない」
リックの答えはカインが騎士でないという事を明確にする。
「…ありがとうございます」
「どうかしたのか?」
「いえ、何でもありません」
その後、町に着くまでカインは平静を装う事で精一杯だった。