火の精霊
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
夜になると村人達がそれぞれの家から出てくる。そして、ぞろぞろと祠へ向かって歩き始めた。
「グゥーアー!」
祠のほうから叫び声が聞こえてくる。叫び声が聞こえてくるとともに村人達は怯え始め、それぞれの家へ戻っていく。カインは祠へ向かう。
カインは森の中の開けた場所に着いた。
「何だこれは!誰だこんな事をした奴は!」
祠を囲った檻の前で何者かが猛っている。
『あれが火の精霊?』
遠目には人に見えたが人でない。カインには魔物に見えた。檻は破壊されていない。破壊されていないという事は祠の中にいなかったという事である。カインは自身に回復魔法を発動させてから火の精霊と思われる存在の前に飛び出した。
「お前は何者だ」
カインの言葉で火の精霊は振り返り、カインを睨みつける。
「これをやったのはお前か…火の精霊様に逆らうのか!」
火の精霊はカインに襲いかかった。感じる殺気が尋常ではない。
「我に従う守の精霊…」
「我が魔力を糧として我へ防壁を与えよ、バリア」
間一髪でカインは火の精霊の攻撃を防いだ。しかし攻撃が凄まじい。防御壁は砕け散ってしまった。こんな攻撃を受ければ魔法使いは即死である。
「我に従う風の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ高位の風を与えよ、ハイ・ウィンド」
カインは火の精霊を弾き飛ばした。火の精霊と距離を取りたい。
『火なら水が有効かもしれない』
「我に従う水の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ高位の水を与えよ、ハイ・ウォータ」
カインは火の精霊に水魔法を放つ。しかし火の精霊は平然としていた。
『通じない?火なら水じゃないのか、それとも…』
「火の精霊様に水魔法なんて通じないぞ?」
そう言いながら火の精霊はニヤニヤ笑っている。その様子を見てカインは気が付いた。
「やはりお前は火の精霊じゃない」
「俺は火の精霊様だ!」
再び人型の魔物はカインに襲いかかる。
「我に従う雷の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ高位の雷を与えよ、ハイ・サンダ」
「ギャー!」
カインの雷魔法は人型の魔物に絶大なダメージを与えた。しかしまだ、魔石にならない。
「人間ごときが…これ程の…」
魔石にはならなかったが人型の魔物の動きは止まる。
「村人達の様子がおかしかった、お前がやったのか?」
「そうだ…自ら…殺されに…来るように…操って…」
「滑稽な…人間共を…眺めて…」
人型の魔物は今までの魔物とは違っていた。人を操る能力を持っている。人を下等生物としか思っていない。
「我に従う火の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ高位の火を与えよ、ハイ・ファイア」
「ギャァアー!」
人型の魔物は魔石になった。これで生贄騒ぎがなくなる。
カインは祠を囲っていた檻を消す。
「失礼しました、火の精霊…は本当にいたのかな?」
カインは祠に向かって話しかけた。
「ありがとうございました」
「ウワァ!」
今回の件を頼んだ男がカインの横にいる。気配は感じなかった。
「い、いらしたんですね…」
「ずっと貴方の傍にいます」
「えっ?」
「私の名を騙る魔物に心を痛めていたのです」
「えっ?」
「魔導書が嵩張って、お困りでしたよね」
「あっ、はい」
男は火魔法の魔導書の中に消えてゆく。その後、火魔法の魔導書はカインの手首で腕輪となった。腕輪には赤色で楕円の玉が付いている。
「今まで通り、呪文の詠唱という形で呼んで頂ければ力添え致します」
男は火の精霊だった。




