独り立ち
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
ハロルは冒険者の仕事を休みがちになった。
「カイン、今日は一人で行ってくれ」
「どうかしたんですか?具合が悪いとか…」
「いや、用事があるだけだ」
冒険者の仕事自体はカイン一人でも出来る。カインは一人で受けた依頼を果たす。そしてギルドで報酬を受け取った。
「ハロルさん、今日の報酬の半分です」
「いやいや、今日はカインが一人で受けた依頼なんだから山分けじゃないだろ」
「そう…ですね」
ハロルの言う通りである。言う通りであるが、カインはハロルと距離を感じて寂しい。
カインが一人で依頼を受けるようになってから時が経った。ギルドで報酬を受け取ってから宿屋へ帰る。ハロルは宿屋の部屋にいた。
「なぁ、カイン」
「何ですか?」
ハロルから畏まった雰囲気を感じる。
「カインは強くなったよな、いや最初から凄かったんだが」
『いや、僕なんて…』
確かにカインは強くなった。しかし、カインはハロルの言葉を受け止められない。
「俺はシンディと結婚する事にした、そして冒険者を引退して魔導書屋になる」
シンディは魔導書屋の店主である。カインにとって世話になったハロルの結婚は嬉しい、嬉しいけれど寂しい。
「おめでとうございます、でも…」
「カインは強くなった、一人でも冒険者をやっていける」
ハロルの言葉がカインの言葉を遮った。ハロルはカインを優しい眼差しで見つめる。
『これ以上は僕の我儘だ、ハロルさんに甘えちゃいけない』
カインはハロルの言葉を受け止めた。
少しの沈黙を挟んでハロルは再び口を開く。
「俺は魔導書屋にいる、会いたくなったら来ればいい」
「そして魔導書を買ってくれ」
ハロルは和ませようとした。
「はい、新しい魔法の載っている魔導書があったら」
カインはハロルに軽口で応える。そして、カインは独り立ちした。
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