買い物の帰り
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
ガルドは仕事で王宮に出向いている。その間にリリアナは遠出の買い物へ行っていた。今はその帰りである。
「リリアナ様、良い贈り物が買えましたね」
「えぇ、ガルドもきっと喜んでくれるわ」
使用人が話しかけるとリリアナは嬉しそうに答えた。リリアナが遠出した理由はガルドの誕生日で渡す贈り物を選んで買う為である。
リリアナは馬車に乗っていた。危険がないように数人の護衛を付けている。突然、馬車の外が騒がしくなった。
「命が惜しければ金目の物を出せ!」
外から乱暴な声が聞こえてくる。
「何事ですか?」
使用人は小窓から外を覗きつつ御者に聞いた。
「盗賊です!」
叫ぶように返事が返ってくる。護衛達は盗賊を対処していた。しかし盗賊の人数が多い。馬車の扉が破かれ、盗賊が乗り込んでくる。
「命が惜しければ金目の物を出せ!」
「盗賊に渡す物などありません」
盗賊に刃を向けられたが、リリアナは毅然とした態度で言い放った。
「だったら殺して奪うだけだ!」
盗賊が雄叫びとともに凶刃を振り下ろす。使用人は身を挺してリリアナを守ろうとした。しかし盗賊の蛮行が止まらない。リリアナは盗賊の凶刃を受けてしまう。
護衛達は盗賊達を倒した。しかし、リリアナも盗賊の凶刃に倒れている。リリアナの傷は深い。護衛達は自分達の役割を果たせなかった。
そこに外套をまとった男が現れる。
「大丈夫ですか?」
男は護衛達に声をかけてきた。盗賊達に襲われた直後だった護衛達は身構える。
「僕は回復魔法が使えます、役に立ちませんか?」
男はフードを脱いで顔を見せながら言った。護衛達は戸惑っている。
「仕方がないか…」
男が呟くと辺り一面が光に包まれた。光が消えると男の姿も消えている。そして護衛達や使用人、何よりもリリアナの負った怪我が完全に治っていた。