魔導書屋
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
二人は目的の町に着いた。比較的に大きな町である。
「魔導書屋はこっちだ」
「はい」
ハロルに案内されてカインは魔導書屋へ向かった。道の途中には他にも色々な店がある。
二人は魔導書屋に着いた。思っていたよりも大きい建物である。中には棚があって想像通り本が多く置いてあった。魔導書である。そして店内には広い空間があった。空間の中には魔物のような形をした置物がある。何の為の空間なのか分からない。
「あの空間は何ですか?」
「試用室だな、置いてあるのは的だ」
カインの質問にハロルが答える。
「魔法使いに魔法適性って話を前にしたが…」
「魔法によって得手不得手があったりする」
「どんな魔法か単純に知りたかったりもする」
「だから試しに用いる場所がいる、試しに用いるから試用室だ」
ハロルはカインに説明した。
『なるほど、試してから買えばいいのか…』
『色々試したい!』
「どうぞ気になる魔導書がございましたらご自由にお試し下さい」
「はい!」
「…えっ?」
温厚そうな女が立っている。魔導書屋の店主だった。思考とタイミングが合ってしまい、カインは驚いたと同時に恥ずかしい。
「ようシンディ、久しぶり」
「あらハロル、いらっしゃい」
店主の名はシンディ、ハロルと知り合いであった。
「カイン、使ってみたい魔法はあるか?」
「全部使ってみたいです」
「好奇心爆発だな、とりあえず火魔法でも使ってみるといい」
「はい」
カインとハロルのやりとりをシンディは見ている。
「火魔法だったら…これが最新版よ」
シンディは棚に置いてあった一冊の魔導書を手に取りカインに手渡した。
「ありがとうございます」
『最新版という事は同じ種類の魔導書でも違いがあるのかな?』
そんな事を考えながらカインは魔導書を開いてみる。魔導書に書かれているのは呪文だけではなかった。魔法を使う為にカインは書いてある事を読む。
「試させて下さい」
「どうぞ」
シンディに許可を取り、カインは試用室に入った。試用室に入ると透明な壁のようなもので囲まれる。
「これは…」
「防御魔法の防御壁だよ、建物が壊れたりしないようにな」
不思議そうにしているカインにハロルは説明した。
「なるほど」『…こんな形でも魔法は使われているんだな』
カインは試用室の防御壁に感心しつつも好奇心が抑えられない。
「我に従う火の精霊…」
「我が魔力を糧として…」
呪文の詠唱に合わせて火が現れる。火はどんどん大きくなっていく。
「えっ、えっ、うわぁ!」
カインは驚きの声を上げる。ドゴンという大きな音と共に防御壁は崩れ去った。
「大丈夫ですか!」
「いやあれ、服が焼けただけ?」
シンディは不思議がっている。カインは火傷を負ったが反射的に回復させていた。ハロルはクスクスと笑っている。
『良かった、何ともなっていない』
カインは店内と魔導書を確認した。何ともなっていない。防御壁が機能し、魔導書も魔法に強かった。
「魔力を流し過ぎてる、気持ちを落ち着けるんだ」
「火を出して的に当てるイメージをしながら、呪文を詠唱するだけでいい」
ハロルがカインに助言する。しかし防御壁が消えてしまった。これでは試用できない。
「はい、でも…」
「防御壁は試用室に入り直せば再び現れます」
防御壁についてはシンディが補足した。カインは試用室に入り直す。
「我に従う火の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ火を与えよ、ファイア」
カインはハロルの助言通りにしてみた。初めてのファイアに成功する。
「魔法はイメージが大事だ、イメージして必要な魔力があれば魔法は使える」
「はい」
カインはハロルから魔法の基本的な使い方を教わった。
魔法は他にもある。カインは他の魔法も使ってみる事にした。
「我に従う水の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ水を与えよ、ウォータ」
…
「我に従う雷の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ雷を与えよ、サンダ」
…
「我に従う風の精霊…」
「我が魔力を糧として彼へ風を与えよ、ウィンド」
…
「特に苦手な魔法はないみたいだな」
「そうですね」
どの魔法にもカインは得手不得手を感じていない。カインは火魔法、ハロルは水魔法、の魔導書を購入した。