面倒な魔物の討伐
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
カインとハロルは町を目指して歩く。ガサガサと草むらから物音がした。
「イタッ」
突然、カインは腕に切り傷を負う。それを見てハロルは火魔法の魔導書を開いた。
「魔物かもしれない、離れるな」
「我に従う火の精霊…」
「我が魔力を糧として我へ火の檻を与えよ、ファイア・ケージ」
ハロルとカインの周りに四角い火の檻が現れる。それはカインが初めて見る魔法だった。カインは直ぐに自身とハロルに回復魔法を発動させる。
「こんな魔法もあるんですね」
「この魔法は対象を火の檻で囲む魔法だ、本来は足止めや捕獲で使う」
「だが、自分を対象にすれば防御壁の代わりになる」
「暑いんだけどな」
そう言ってハロルはニヤリと笑った。
「シャー」
小型の魔物が姿を現し、こちらの様子を伺っている。
「あいつは動きが素早くて面倒なんだ」
「対象に当てられないと魔法が無駄になるからな」
説明が終わるとハロルは集中し始めた。
「我が魔力を糧として我へ火の檻を与えよ、ファイア・ケージ」
ハロルは同じ魔法を詠唱する。一瞬、火の檻が消えた。そして直ぐに再び現れる。
「ギャー」
魔物が火檻の直ぐ外で燃えていた。魔物が魔石になるとハロルは火檻を消す。
「こいつは人を見ると目で追えない速さで切りつけてくる」
「邪魔な檻を一瞬だけ消すと突っ込んでくるから…」
「また檻を出せば火達磨に出来る、間を開けない事がポイントだ」
ハロルは火魔法を使いこなしていた。どうやって魔法を使うか、それも魔法使いの強さである。これがハロルに感じた凄さなのだとカインは理解した。
「大抵、魔物は近くの町で討伐の依頼が出てる」
「討伐できるなら討伐して、後から依頼を受けて報酬を貰えばいい」
「なるほど」
ハロルは討伐した後の対応もカインに説明する。それは冒険者としての知恵だった。依頼が出ていなくても人を襲う魔物の討伐は人の為になる。
ハロルは回復魔法の魔導書を開きながらカインの腕を見た。
「あれ、回復魔法を使ったのか?」
「はい」
カインは既に回復魔法で傷を治している。治す事を待つ理由がカインにはない。
「魔力が勿体ないだろ、俺が治してやったのに…」
ハロルはカインの傷も治すつもりだった。小さな傷に自動全回復の回復魔法は勿体ないと考えたからである。
「実は…」
「回復魔法を複数回使っても余裕があるんです」
「リックさんと一緒にいた時は三人それぞれに使ってました」
「魔力というのが減った感覚も感じた事がありません」
カインはハロルに説明した。ハロルは唖然としている。
「言いそびれてて…すみません」
「ハッハッハッハッ、こっちこそ魔法持ちの魔力量を甘く見てたよ」
「いいもん見れた、ありがとう」
ハロルは笑い始めた。どう答えていいか分からず、カインは頭を掻いている。