回復魔法の魔法持ち
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
これからも一緒にいると約束したい。想いを遂げたカインはアーレンを抱きしめていた腕を緩める。そしてアーレンの体をまじまじと見つめた。
『まじまじと見つめられたら…やはり恥ずかしいな』
「色気がない体…」
「そんな事ありません!」
アーレンの言葉をカインは即座に否定する。カインにとってのアーレンに色気がないはずがない。しかし、カインは別の事を考えていた。
『古傷がある所為でアーレンさんが気に病むんだよな…』
『古傷がなくなれば喜んでくれるかな?』
カインはアーレンの喜ぶ顔が見たい。
カインが口を開く。
「傷なんですよね」
「あぁ傷だ…」
アーレンにはカインの言いたい事が分からない。
「…あっ、いや古傷だ」
アーレンはカインの考えている事が分かった。
「今までカインの回復魔法で回復してきた、でもこの傷はそのままだった」
「もう古傷なんだ」
アーレンがカインに説明する。通常、回復魔法は古傷を治せない。古傷が治った状態なのである。
「でも傷ですよね、魔法は想像なんです」
カインの目には強い光が灯っていた。アーレンはカインの圧に押されて後ずさる。
「あっ」
アーレンは後ろにあったベッドへ倒れこんだ。もうアーレンはカインから逃げられない。カインはアーレンの腹部にある古傷へ手をかざすと最大限に集中する。そして回復魔法を発動させた。
「アァ…アァ…アァ…」
アーレンが言葉にならない声を漏らす。
「アァ…アァ…ウゥアァ…」
カインはアーレンの腹部へ執拗に魔力を流し込んだ。流し込んだ魔力によってアーレンの芯まで根を張る古傷が分解されて消えてゆく。
「ゥアァァァ!」
耐え切れずにアーレンは声を上げた。
カインとアーレンはベットの上でぐったりしている。
「ハァ…ハァ…どう…ですか?…」
カインにとって古傷の回復は初めての経験である。カインは息を切らしながらアーレンに聞いた。アーレンは古傷へ手を伸ばす。
「ハァ…ハァ…古傷が…消えて…いる…」
アーレンの古傷は消えた。体の中に違和感もない。アーレンの目から涙が再び溢れ出る。回復魔法の魔法持ちは過去の傷さえも治した。
アーレンに刻まれていた傷は一つだけでない。
「ハァ…ハァ…もう…許して…カイン…」
「ハァ…ハァ…まだです…残さず…消すん…です…」
カインはアーレンに刻まれていた傷を一つ残らず消してゆく。カインはしつこい。気付くと二人はベットの上で疲れ果てて眠っていた。