鍛冶場
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
カインとアーレンは鍛冶場に移動する。やはりオリビアは鍛冶場にいた。
「来たな、二人とも」
「逆鱗の加工が終わったところだ」
オリビアは二本のネックレスをカインとアーレンに見せる。ネックレスに逆鱗が細長い形となって飾り付けられていた。逆鱗が細長い形なのは二つに割ったからである。
「服の中に隠しておけるように逆鱗はネックレスの形にしておいた」
「隠しておけば逆鱗を奪おうとする奴も現れないだろう」
『まぁ、二人から何かを奪えるような奴は…想像できないけどな』
逆鱗をネックレスにした理由をオリビアは説明した。
「なるほど…」『そこまで考えてくれたんだ…』「ありがとうございます」
カインは預り証と代金をオリビアに渡して逆鱗のネックレスを受け取る。
「カイン、ネックレスは自分で着け難いからアーレンに着けてやるんだぞ」
オリビアがカインの耳元で囁いた。
『なるほど、そうなのか…』
オリビアに言われてカインはアーレンの首に手を回す。
「ちょ、カイン、ネックレスぐらい自分で…」
「遠慮しないで下さい」
遠慮と言われてアーレンは抵抗を止めた。大人しく俯いている。カインはアーレンに逆鱗のネックレスを着けた。
「…貸してくれ」
アーレンはもう一本ある逆鱗のネックレスを手に取りカインに着ける。
「ありがとうございます」
「お互い様だ…ありがとうカイン」
カインとアーレンは礼を言い合った。オリビアはカインとアーレンの様子を見てニヤニヤしている。
『これもネックレスにした理由だ、思った以上に上手くいったぞ』
オリビアの企みは見事に成功した。
カインとアーレンは鍛冶場を後にする。しかし、カインには追加の用があった。それはアーレンに内緒の用である。
「アーレンさん、僕は用があるので先にレストランへ行ってて下さい」
「急いでいないんだ一緒に行こう」
「大丈夫です、直ぐに追いかけますから」
別行動を取ろうとするカインは珍しい。
『そうか、一緒に行かなくていいのか…』
アーレンは一抹の寂しさを感じていた。しかしアーレンは気にしないようにする。カインは鍛冶場に戻り、アーレンはレストランへ向かった。
「どうしたカイン、一人で…珍しいな」
「あの…アーレンさんにも内緒で指輪を作ってほしいんです、贈り物にしたくて」
カインはオリビアに指輪作りを依頼する。
「にもって…まぁいい」
「分かった、指輪を作ろう」
「カインの左手を見せてくれ」
オリビアは指輪作りの依頼を受けた。しかし、カインが作ってほしいのはアーレンへ贈る指輪である。
「作ってほしいのはアーレンさんになんです」
「アーレンから「私ばかり」と言われてしまうぞ」
オリビアは作業手袋を外してカインに左手を見せた。薬指にはカリルと同じ指輪が輝いている。
『なるほど』
カインは納得してオリビアに左手を見せた。次はアーレンの指のサイズである。魔法の鎧を創造した時にカインは把握していた。
「アーレンさんの指のサイズは…」
「大丈夫だ、店で魔法の鎧を見せてもらった時に確認している」
『さすがオリビアさんだ』
カインはオリビアに感心している。
「それよりも…どんなデザインがアーレンの好みか、が重要だ」
「どんなデザインがアーレンの好みなんだ?」
オリビアに聞かれたが、カインにはアーレンの好みが分からない。
『アーレンさんの好み…分からないな』
『指輪を贈れば喜んでもらえるんだと思ってた』
カインは答えに困る。
「そういう事も考えられるようにならないとな」
「…はい」
オリビアに言われてカインは返す言葉がない。
「確認してきます」
「分かった」『と言ってもカインがアーレンに内緒でなんて…無理だろうな』
カインとアーレンの指輪作りは保留となった。オリビアはカインに期待していない。