鍛冶場
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
鍛冶場は防具屋から離れた町の外れにある。
「来たね、お二人さん」
鍛冶場に着くとオリビアに迎えられた。
「こんにちは」
「オリビアさん、新しい剣で目的を果たす事が出来ました」
カインとアーレンは挨拶し、アーレンは報告する。
「わざわざ報告に来てくれたのか」
「代金は払ったんだから気にしなくてもいいのに…」
「律儀だね、嬉しいよ」
オリビアは喜んだ。
目的は報告だけじゃない。
「それと…お願いしたい事があるんです」
「どんな仕事だい?」
カインは竜の逆鱗をオリビアに見せた。
「随分と綺麗な…鱗?」
オリビアも困惑している。カインとアーレンは魔竜の討伐についてオリビアへ話した。
「竜に…二人は凄いんだね」
話し終えるとオリビアは感心している。
「この逆鱗を二つに割って二人それぞれで身に着け易いようにして欲しいんです」
カインはオリビアに逆鱗の加工を依頼した。
「話に聞いた事しかない逆鱗の加工…出来る機会があるなんて思わなかったよ」
オリビアは感動している。しかし、しばらくして悩み始めた。
「逆鱗の加工、したいんだが…少し待ってくれないか」
「今、別の物を作っている途中なんだ…」
『急いでないし、信頼してる人に任せたいから別にいいよな』
カインがアーレンのほうを見るとアーレンもカインのほうを見て頷く。しかし、カインに好奇心の悪い虫が湧いた。
「別の物というのは何ですか?」
カインは好奇心の赴くままオリビアに聞く。オリビアは答え難そうである。
「…カリルへの贈り物だ」
「分かりました、その後で構いません」
オリビアが答えるとアーレンが直ぐに承諾した。
カインが逆鱗をオリビアに渡す。
「ちょっと待っててくれ」
そう言ってオリビアは奥にいくと紙を持って戻ってきた。そして紙に何かを書いている。
「今日の日付、加工の為に逆鱗を預かる旨、私のサイン、が書かれている」
オリビアは紙をカインとアーレンに渡した。
「そこに書いてある事を確認して、二人の…」
「まぁどっちかのだけでもいいか、サインをしてくれ」
オリビアに言われてカインとアーレンは書かれた内容を確認する。
「加工が終わって二人に逆鱗を返すまで、その紙を無くさずに持っていてほしい」
「そんな事をするつもりはないが…」
「私が逆鱗を自分の物としないように、紙は逆鱗が二人の物だとする証拠だ」
紙の意味をオリビアは説明した。紙は預り証である。預り証にはカインがサインした。
カインとアーレンは鍛冶場を後にする。
「カイン、さっきの話は内緒にしておこう」
アーレンは小声でカインに話しかけた。
『逆鱗を加工してもらう事かな?逆鱗って高価な物らしいもんな…』
「そうですね、逆鱗の事は内緒にしましょう」
カインも小声でアーレンに答える。
「贈り物の事も内緒だ」
「え?…はい」
カインとアーレンはカリルへの贈り物の事も内緒にする事にした。