ギルド
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
カインとアーレンは竜討伐の依頼が出されていた町に来ている。ギルドに着いた。
「あっ、アーレンさん、カインさん」
「…お疲れ様でした、こちらにお願いします」
「あっ、はい」
ギルドの担当者がカインとアーレンに声をかける。二人は奥の部屋へ案内された。
部屋には見知らぬ顔がいる。
「初めまして、私はこのギルドを仕切るギルドマスターです」
カインとアーレンはギルドマスターに初めて会った。ギルドマスターはギルドの責任者である。一介の冒険者がギルドマスターに会う事はない。
「お二人から報告を受けた後、我々のほうでも調査をしました」
「そして実は…いつ目覚めるか分からない魔竜を監視していました」
「お二人だけで魔竜を倒してしまったのですね」
ギルドマスターは神妙な顔で話している。
『まずかったのかな…でも魔竜を放っておくわけにはいかなかったし…』
カインは気を落ち着けようとして横にいるアーレンの手を握った。アーレンも握り返す。
『もし捕まえられて処罰とかなら他の国へ逃げよう…』「…はい」
カインは覚悟して答えた。
「ありがとうございました」
『えっ』
ギルドマスターは礼を言って頭を下げている。後ろで担当者も頭を下げていた。
「国は何もしてくれず、我々の手には負えず、途方に暮れていたんです」
「お二人は…」
「魔竜の攻撃を防ぎ、魔竜を斬り裂き、凄まじい雷で魔竜を沈めたとか…」
「これ程の方々がいるとは思いもしませんでした」
ギルドマスターは理解してくれている。
『怒られるわけじゃなくて良かった~』
カインは安心した。ギルドマスターが神妙な顔をしていたのは役割が故だったのである。
『監視していたって言ってたけど…どこまで知っているんだろう?』
「竜は魔人に寄生されて操られていました」
「倒したのは魔人だけです…竜は生きています」
カインは説明した。魔人を倒した後の事である。
「そうだったんですね」
「竜は守り神と考える人もいるので残念に思っていたのですが…」
「それなら良かった」
竜の復活まではギルドマスターも知らなかった。
『これで竜が生きていて驚かれる事はないな』
カインは更に安心する。
カインは魔人を倒して手に入れた魔石を提出した。魔石はギルドで引き取ってもらう。
「これが竜討伐の報酬です」
ギルドマスターがカインとアーレンに報酬を差し出した。
「待って下さい、僕達は報酬を受け取らないという約束をしました」
「竜も討伐していないので報酬は受け取れません、依頼主に返しておいて下さい」
カインが報酬の受け取りを断る。こういう時にカインは融通が利かない。
「どういう事だ?」
ギルドマスターは担当者を責める。担当者は口籠った。
「報酬を受け取らないと言い出したのは私です」
「私達は依頼を受けずに竜の住処について聞き出そうとしました」
「ですが担当者の方は教えなかった」
「私達が依頼の横取りを考えている可能性があった為です」
「担当者の方はご自身の仕事をされただけ…」
「…なので責められるような事はしていません」
アーレンが担当者の代わりにギルドマスターへ事情を説明する。
「…そうでしたか」
ギルドマスターはアーレンの説明で事情を分かってくれた。
「すまなかった」
ギルドマスターは素直に担当者へ謝る。そして思案を始めた。
「竜討伐の報酬はギルドから依頼主に返しておきます」
「これはギルドマスターである私から魔人討伐の特別報酬です」
ギルドマスターの計らいで竜討伐の報酬は魔人討伐の特別報酬に変わる。
「竜討伐の報酬ではないので約束は破っていませんよね?受け取って下さい」
ギルドマスターからカインとアーレンは特別報酬を受け取った。
後日、竜討伐の報酬はギルドから依頼主へ返される。依頼主も魔人に操られていただけだった。特別報酬はギルドマスターの自腹である。
「功労者に報酬を出さないわけにいかないもんな…」
「…これで良かったんだ」
ギルドマスターは呟いた。真面目な責任者は気を遣う。
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