魔導書屋
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
カインとアーレンはハロルのいる町に着いた。
「先輩は冒険者なんだろう、この町にいるとは限らないんじゃないか?」
「冒険者を引退して魔導書屋を営んでいるんです」
「なるほど」
カインとアーレンは魔導書屋に着いて店内に入る。
「いらっしゃいませ、あらカインさん」
「ちょっと待ってて下さいね」
カインとアーレンを出迎えてからシンディは店の奥へ入っていった。ハロルを呼んでくる為である。
「今の方は?」
「先輩の奥さんです」
「あっ、結婚されているのか」
「はい」
カインとアーレンが話していると店の奥からハロルが出てきた。
「久しぶりだな、カイン」
「久しぶりです、ハロルさん」
カインとハロルは挨拶を交わす。ハロルはアーレンのほうをチラリと見た。
「こっちは冒険者仲間のアーレンさんです」
「初めましてアーレンです」
「アーレンさん、初めましてハロルです」
カインはアーレンをハロルに紹介する。
「アーレンさんも魔法使いですか?」
「いえ、私は剣士です」
「そうですか、じゃあ…アーレンさんが前衛でカインが後衛という事ですね」
「カインの事をよろしくお願いします」
ハロルはカインの事をアーレンに頼んだ。ハロルはカインの事を気にかけている。
「はい、カインは私が守ります」
「アーレンさんの事は僕が守ります」
カインはハロルとアーレンの会話に割り込んだ。
「二人は仲がいいんだな」
そう言ってハロルは微笑んだ。二人の姿を見てハロルは安心している。
「そんなカインに見せたい新しい魔導書があるんだ」
ハロルは棚に置いてある防御魔法の魔導書を持ってきた。
「この防御魔法の魔導書には盾と鎧の魔法が載ってる」
ハロルに防御魔法の魔導書を紹介されて、カインは自分が持っている防御魔法の魔導書を恐る恐る取り出す。
「もう持ってるんです」
「!」
「持ってたか~」
カインの言葉にハロルは一瞬唖然とした後に天を仰ぎながら残念がった。カインが新しい魔導書を買う機会はないかもしれない。
ハロルは話を変えた。
「実はな、俺とシンディに子どもが生まれたんだ」
「そうなんですか!おめでとうございます」
「おめでとうございます」
嬉しそうなハロルにカインとアーレンは祝いの言葉を伝えた。
「店には俺とシンディが交代で立って、もう一人が奥で子守りをする」
「と言っても男は母乳が出ないからなぁ…無力さを感じるよ」
そう言いながら、やはりハロルは嬉しそうである。
「ハロルさんが店に専念しようとは考えなかったんですか?」
「いや、そのほうが効率的かもだけど…少しでも子どもの顔が見たいんだよ~」
「そうですよね」
アーレンは微笑んだ。常にハロルは嬉しそうである。店に来た時はシンディが店に立っていた。という事はハロルが子を見ていたはずである。
『タイミングが悪かったかな…』
『でもハロルさんにアーレンさんの事を紹介できて良かった』
「そろそろ僕達は失礼します、行きましょうアーレンさん」
カインはアーレンとともに魔導書屋を後にした。
「子どもが生まれて嬉しいんだろうな…」
独り言のようにアーレンは呟く。アーレンの顔は笑顔だった。しかしカインには寂しそうに見える。
『何でだろう?』
カインには分からない。