魔導師の家
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
カインとアーレンはアルダの家の前にいる。
「アルダさん、いらっしゃいますか」
「何か用ですか?」
家の扉が開き、アルダが現れた。
「おぉカインか、久しぶりだな」
「お久しぶりです」
カインとアルダは再会する。
「アルダさん、こちらはアーレンさんです」
「アーレンです、初めまして」
「儂は魔導師のアルダだ、初めまして」
カインがアーレンを紹介してアーレンとアルダも名乗りあう。
「魔導書を作るから魔導師、魔法使いを導くから魔導師、という感じだ」
「ジョブではなく勝手に名乗っているだけだから気にしなくても、いい」
「もちろん気にしてくれても、いい」
アルダは魔導師についてアーレンへ説明した。決まり文句のようである。
「魔法使いを導く…」
アーレンが呟きながらカインのほうを向くと、カインはアーレンに笑顔を返した。
ジョブはスキルの活かし方に付けた名前である。その意味で実は魔法使いを導くアルダのジョブは魔導師で間違っていない。
アルダはカインとアーレンを家に招き入れた。そしてアーレンのほうをチラリと見る。
「今日は結婚の報告か何かかな?」
「えっ、あっ、いや」
結婚の報告と言われてカインは狼狽えた。
「な、何故分かったのですか!?」
慌ててアーレンがアルダに聞く。
「仲の良さそうな男女が来てくれたから…」
「二人で用があるなら結婚の挨拶か何かだと思うだろう?」
アルダは事もなげに答えた。しかし違う。
「私が女だと何故分かったのですか?」
「隠していたのか、それは気付かなくて悪かった」
「何故と言われると…」
「何となくとしか言いようがないなぁ」『鑑定のスキルもないし…』
アーレンに聞き直されてアルダは答えた。
「隠しているのなら誰にも言わない」
「人の秘密を言い触らして恨みを買っても、得がないからな」
「…お願いします」
アルダはアーレンと約束する。
「これ、お土産です」
「おぉ今回も…気を使ってくれてありがとう」
落ち着いたところでカインはアルダに土産を渡した。アルダは喜んでいる。
アルダが三人分の茶を淹れ、三人はイスに座った。カインはアルダとテーブルを挟んで向かい合っている。
「強い相手と戦わなければいけません」
「魔法について教えてもらえないでしょうか?」
カインの真剣な表情を見て、アルダも真剣な表情になった。
「分かった、魔法について儂が知っている事を教えよう」
アルダは目を閉じて思案している。魔法について話す事を整理していた。カインは黙ってアルダを待つ。そしてアルダは目を開けた。
「魔法は…」
「精霊を呼び出して、求める事を伝えて、魔力を支払って、現象を起こす」
「これは以前に説明した」
確かにアルダが以前に説明した事である。
「精霊に求める事を伝えるには呪文を詠唱するが…」
「実のところ、精霊は呪文だけじゃなく魔法使いの想像を読み取っている」
想像を読み取るというアルダの言葉は精霊に会った経験のあるカインにとって不思議な事でなかった。
「想像を読み取っているから魔法使いの想像次第で魔法が変わる」
『ハロルさんも魔法はイメージが大事だと言ってたな』
「呪文の詠唱だけじゃなくて魔法の想像も大事という事ですね」
カインはアルダの言葉の意味を確認する。カインの言葉にアルダはニヤリと笑った。
「確かに魔法の想像は大事だが、それ以上だ」
「こっちに来てくれ」
アルダは立ち上がってカインとアーレンに手招きをする。