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3-2

「ほなはよ駅へ戻れっ。わしも行――いたたたた」

 立とうとした久雄だったが腰を押さえてソファに尻を落とした。

「お父ちゃん無理せんとき」

 慌てて輝子が駆け寄るのを見ながら、結子は「もう一度かけてみる」とスマホを操作した。

 びょうおおおという風の音とがりがりと引っ掻く音の奥で小さく呼び出し音が鳴っている。

「ああやっぱり――繋がらんわ」

 そうあきらめた時、呼び出し音が止んだ。

「あ、出た――もしもしっ、美香子っ美香子っ」

 だが、風の音と引っ掻き音は鳴り止んでおらず、向こうからの返事もない。

「もしもしっもしもしっ」

 突然何の音も聞こえなくなり、スマホを見るとすでに履歴画面に変わっている。ちゃんと美香子の名前が表示されていた。

 なに? 繋がったんじゃないの? 声が聞こえなかっただけ? なんで切れたの? 美香子が切ったの? それとも勝手に? なんで?

 瓦礫の下で苦しむ美香子を想像して、背筋に怖気が走った。

「お父ちゃんもお母ちゃんもここで待ってて。わたし駅に戻ってみるわ。なんかわかったらすぐ連絡するし」

 そう言ってバッグを持つと玄関に向かい、出張中の夫公志(ただし)に連絡を取ろうとスマホを操作した。

「お母ちゃん、もしかしてわたしのスマホが調子悪いかもしれないから、公志さんと連絡取り合ってくれる?」

 玄関までついてきた輝子が無言でうなずく。

 会議中なのか公志は電話に出なかった。伝言を残していると、今のこの通信では不快なノイズが一切鳴っていないことに気づいた。

 わたしのスマホのせいじゃない?

「かんにんやで、うちがあんたを呼んだばっかりに」

 輝子はエプロンで顔を押さえたままだ。

「大丈夫。きっと美香子は無事や。お父ちゃんには無理させんといてね。また連絡するわ」

 靴を履くと急いで玄関を出る。

「気を付けて」

 輝子の声を後に車に乗り込んだ結子はエンジンをかけると深呼吸してから出発した。


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