14-8
発進した際、住所を問われ、駅三つ分離れた町の名と番地を伝えた。
だが、完全に日が落ち、辺りが暗くなってきても、近所の見慣れた風景は車窓に映らなかった。
「あの――道、間違ってませんか?」
町名を告げても不案内だと言わなかった。当然知っているのだと安心していたが。
「あーすまない――ちょっと仕事場に寄り道したくて――」
「え?」
それ今すること? 警察への通報も、家への連絡も我慢したのに――早く家に帰して欲しい。
詔一の父親の立場では、玉青を一刻も早く親元に帰し、彼女の両親に真っ先に詫びを入れねばならないのではないだろうか。いくら仕事が忙しくても、口で謝るばかりで全く反省の色がないことに玉青は憤慨した。
会社のお偉い人みたいなのに非常識だ。やっぱりあいつの父親ね――
そんなことを考えていると車が止まった。
辺りはすっかり暗くなっていたが、Q駅のステーションビルの電光看板が真上に見えていたので、駅間近にいるのはわかった。
車から降りた父親は後部席のドアを開け、黙ったまま玉青も出るように手で促した。
「わたしここで待ってま――あ、やっぱもう電車で帰ります」
詔一の家にバッグを置いたままなのでお金は持っていなかったが、駅の交番で事情を話せば何とかなるだろうと車から降りた。
だが、ばたばたと足音が聞こえ、数人の男たちが近づいてきたところで、口元を塞がれすぐ、玉青の意識は途切れた。




