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14-4

 塗料臭で咽(むせ)ている内田を放ったまま、

「こいつマジでヤバイな」

「狂ってる」

 とみな口々に言い合った。

「でもぉ、本当に祠の願掛けが叶ったんかなぁ」

「どうして?」

「だってぇ、わたしの願掛けもだめだったしぃ、オカルト仲間たちもぉ、何度も検証したけど効果なかったってぇ。それに手を合わせただけで効果あるなんておかしいよねぇ」

「元の場所だったらいざ知らず、邪魔扱いで移転した場所の祠に力なんてなさそうだしね」

 ようやく気持ちが落ち着いてきた美香子は、朝に花織と話していた考察を口にした。

「だからぁ、祠が関係してるんじゃなくてぇ、呪われてる駅に関係してるってことよぉ」

 新井の言葉に美香子は首を捻った。

 じゃ、桧垣さんって――

「あっ」

 花織が通路に目を移して声を上げた。

 美香子も含め、みなその方向に振り返る。

 桧垣玉青が通路の真ん中に立ち、こちらを睨みつけていた。

「やっぱり彼女、呪いに関係してるのか?」

「でも、うちらが何したっていうの?」

 米澤のつぶやきに花織が返す。

 美香子はじっと桧垣を見つめていて気付いた。

 彼女はわたしたちというより、内田にその怒りの視線を留(と)めている。

 内田はまだ自分を睨む桧垣に気付かず、ぜいぜいと息をしながらうつむいて壁に凭(もた)れていた。

「ねえ、彼女の制服見て」

 と美香子は花織にささやいた。

「あれ? さっきまでのうちらのと違う。セーラー服じゃん。どういうこと?」

「ねえ、桧垣さんっ」

 美香子が呼びかけると、先に反応したのは内田だった。

「桧垣?」

 項垂れていた顔を上げ、涙の滲む目でじっと通路を見つめている。その口元が微笑むように緩み、

「本当に桧垣だ。でも――そんなはずは――」

 すぐ、眉を顰めてかぶりを振った。

 桧垣の肌が徐々にどす黒く変色し始めた。それに合わせて、般若のように目も口も吊り上がってくる。角(つの)はなく、大きく開いた口内にも牙はなかったが、口の端からどろりと垂れる涎(よだれ)はコールタールのように真っ黒だった。

「これって人間じゃないよね? 桧垣さんっていったい――」

 美香子が誰に言うともなくつぶやいた途端、鈍い痛みを伴う頭痛に見舞われた。

 それは彼女だけに起きたものではなく、花織や米澤たち、内田までもが痛みに顔を顰めた。


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