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塗料臭で咽ている内田を放ったまま、
「こいつマジでヤバイな」
「狂ってる」
とみな口々に言い合った。
「でもぉ、本当に祠の願掛けが叶ったんかなぁ」
「どうして?」
「だってぇ、わたしの願掛けもだめだったしぃ、オカルト仲間たちもぉ、何度も検証したけど効果なかったってぇ。それに手を合わせただけで効果あるなんておかしいよねぇ」
「元の場所だったらいざ知らず、邪魔扱いで移転した場所の祠に力なんてなさそうだしね」
ようやく気持ちが落ち着いてきた美香子は、朝に花織と話していた考察を口にした。
「だからぁ、祠が関係してるんじゃなくてぇ、呪われてる駅に関係してるってことよぉ」
新井の言葉に美香子は首を捻った。
じゃ、桧垣さんって――
「あっ」
花織が通路に目を移して声を上げた。
美香子も含め、みなその方向に振り返る。
桧垣玉青が通路の真ん中に立ち、こちらを睨みつけていた。
「やっぱり彼女、呪いに関係してるのか?」
「でも、うちらが何したっていうの?」
米澤のつぶやきに花織が返す。
美香子はじっと桧垣を見つめていて気付いた。
彼女はわたしたちというより、内田にその怒りの視線を留めている。
内田はまだ自分を睨む桧垣に気付かず、ぜいぜいと息をしながらうつむいて壁に凭れていた。
「ねえ、彼女の制服見て」
と美香子は花織にささやいた。
「あれ? さっきまでのうちらのと違う。セーラー服じゃん。どういうこと?」
「ねえ、桧垣さんっ」
美香子が呼びかけると、先に反応したのは内田だった。
「桧垣?」
項垂れていた顔を上げ、涙の滲む目でじっと通路を見つめている。その口元が微笑むように緩み、
「本当に桧垣だ。でも――そんなはずは――」
すぐ、眉を顰めてかぶりを振った。
桧垣の肌が徐々にどす黒く変色し始めた。それに合わせて、般若のように目も口も吊り上がってくる。角はなく、大きく開いた口内にも牙はなかったが、口の端からどろりと垂れる涎はコールタールのように真っ黒だった。
「これって人間じゃないよね? 桧垣さんっていったい――」
美香子が誰に言うともなくつぶやいた途端、鈍い痛みを伴う頭痛に見舞われた。
それは彼女だけに起きたものではなく、花織や米澤たち、内田までもが痛みに顔を顰めた。




