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「え~、知らな~い」
「昔々駅ができた頃って基本駅と線路だけじゃん――まあそれだけってわけじゃないんだろうけど。
で、そこから町の発展とともに駅ビルが建ったり、線路を増やしたりして拡張していくじゃん。で、当たり前だけど、敷地を広げてくってことは周囲の土地を利用するってことっしょ?」
「うん、まあそうだね」
「でも、その土地に何かいわくがあるかもしれないじゃん。だから、家建てるときなんかぢちんさいなんてことをするんだと思う」
「おおー、再び花織の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。きょうはどうしたん?」
美香子はくすくす笑った。
「そいつの受け売りよ――でね、そういうのやっても鎮まらない何かがあったとするじゃん」
「あっ、祟るやつね」
「そうそう。
じゃ、しょうがないねー、広げるのやめとこかぁってならないじゃん、そう簡単に。特に一大プロジェクトなんてもんはさ。
で、ここがそういう状態のまま強行突破して造った駅だって言うわけよ、そいつが」
「あ、なるほど。それで呪われた駅か――って信じられるかっ」
「うちもわろたー。ただの都市伝説やんって。
でもね、思い出したのよ――
あ、これはバイト先の賢い先輩が言ってたから信憑性ある話なんだけど、最初この駅造る時に地中から何かの遺跡が出てきたらしいんだよね。だから、しばらく工事が進まなかったんだって。
この辺りの土地ってそういうの多いらしくて、今でも掘ればなんか出てくるんじゃないかって言ってた」
「こんだけ道拡げて、ビルもいっぱい建ってるから、さすがにもうないんじゃない?」
「あはは、たしかに。
でね、先輩の話と合わせたら、昨夜の話はまったく根も葉もないことじゃないかもねって思ったわけよ」
「ふーん」
「で、その呪いの元凶がこの地下通路だって、そいつがいうわけ」
「やめてよ。電車通学、初日にっ」
美香子は立ち止まって眉をひそめた。もちろん本気で怒っているわけではない。
サラリーマンが数人、急ぎ足で二人の脇を通り抜けていく。