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「おはよっ、花織。ごめんね、付き合わせちゃって」
「いいよいいよ。たまには美香子と電車に乗るのも楽しそうだし」
美香子はQ駅構内の売店前で待ち合わせしていた由利花織と合流した。
「きょうもばっちりね」
化粧を施した花織の顔を美香子は指さす。
「そうでもないよー。ゆうべさ、この間ナンパされた男と徹夜で電話してて化粧ノリが悪いの」
「ぷぷっ、ちょっと待って。わたしらまだ高校生だよ。そんなお肌の曲がり角過ぎみたいに――」
「いやぁ、やっぱ睡眠は大切だなって思ったよ。ま、きょうは自転車じゃないから、汗で化粧崩れせんでいいんだけどさ」
「ぷっ、睡眠は大切って――花織の口からそんな言葉聞くとは思わなかった」
派手で遊び好きな花織とは正反対の美香子だが、入学した時から不思議と馬が合い、今や大親友だ。
この交友関係に最初は心配していた母も次第にしっかり者の花織がついていれば安心だと信頼を置くようになっていた。
その親友に教えてもらいながら券売機で切符を買い、改札を抜けた。
全国ニュースで見ていると朝や夕方時の駅は通勤通学の人でごった返しているようだが、この駅ではそれほどの人波はない。
それを花織に言うと、「ど・田舎だもん」と答えが返ってきて美香子は声を上げて笑った。
一番端にある学校方面行き6番ホームへ出るため、地下通路へと降りた。
地下と聞いて暗くて湿った場所だと思い込んでいたが、点在するLEDの照明と各ホームに上がる左右の昇降口から入ってくる仄かな外光が意外と明るく、陰気なイメージは払拭された。
「でさ、そいつが言ってたんだけど――このQ駅って呪われた駅なんだって。知ってた?」