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【コミカライズ】無垢なる奴隷聖女は人間不信の魔眼騎士様に溺愛される  作者: りょうと かえ


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23/25

23.目が覚めて

 どれくらい時間が経っただろうか。私は唸りながら目を覚ます。最初に見たのは、嬉しそうにしているミーナとラーベの顔だった。


「あっ……うぅ……」

「ああ、よかった! 目が覚めたのね!」

「ラーベ、ミーナ……ここはウェルナーク様のお屋敷?」

「んにゃ。そーだよ」


 ふかふかのベッドともう見慣れた部屋の中。ああ、帰ってこれたんだと心の底からほっとした。身体がだるいけれど、気を失ったときよりはかなりマシだった。


「私は……あ、ウェルナーク様は!?」

「待って待って。慌てないで、順番に説明するから」

「そうそう、ハチミツジュースでも飲んで」


 ラーベが私のそばを離れ、テーブルの上にある木のコップを持ってくる。ゆったりと揺れる黄色の飲み物を口に含むと、心が落ち着いてきた。


「まずあなたは丸一日寝ていたの。それで今、ウェルナーク様はお仕事中よ」


 丸一日も……!?

 そんなに寝たことなどなかったので、そっちのほうが驚きだった。


「魔力を使いすぎて、身体が耐えきれなくなったのよ。はぁ……でもラーベを助けるためだものね。この程度で済んで良かったと思うしかありませんわ」

「うにゃ、実験のときとは魔力の出方が違ったからね」

「は、はぁ……魔法というのも便利なばかりじゃないんですね」

「でも、あなたを助けたのも結局は魔法よ。ウェルナーク様が倒れたあなたをつきっきりで看病したんだから。私は交代で来ただけで、特に何もしてないし」

「いえ――ミーナを見て、すごく安心できました。ありがとうございます。」

「そう? なら良かったわ」

「ちなみに僕も無事だよ。君のおかげでね」


 ラーベが顔をこちらに向けたまま、すいーと私のベッドの上を飛ぶ。


「お礼に僕のしっぽを撫でる権利をあげよう」

「おお……ついに触らせてくれるんですね」


 ラーベのしっぽはこれまで触るのを拒否されていたところだったので、これはとても嬉しいことだった。ラーベが布団の上、撫でるのにちょうどいい場所へ着地する。


「アルティラ・ベルダとブレア公爵は逮捕されたわ。どういう罪状かは今後次第だけど……アルティラ・ベルダはかなり重い罪になるんじゃないかしら」

「殺人未遂だからね。これまでとは訳が違うよ」

「……私としては二度と会いたくないですね」


 これまで言えなかったことが口から出た。でも、もういままでの私とは違う。私にも意志があり、それを貫く強さもあるのだから。


 そしてラーベを撫でようと布団の中から手を出してみて――私は気付いた。左手にしていた指輪にいくつもひびが入り、石も透明に戻っている。


「ああ、これ! どうしてひびがっ……!」


 私が悲鳴を漏らすとミーナがふぅと息を吐いた。


「ん、それはね……あなたの身代わりになったのよ。悪くない指輪だったけどね」

「この指輪が?」

「あなたにいくら才能があるっていっても、限界はある。指輪はそれを手助けしたけど、1回限りってことね」

「うぅ……とても残念です」


 これはウェルナーク様と魔力を合わせた指輪だったのに。私が他の人と繋がりがあると信じられる象徴だった。


「……これはもう直したりはできないのですか?」

「んんー、できなくもないけれど。でも、一度あなたとウェルナーク様の魔力に同調してるから、私じゃ直せないわ。あなたとウェルナーク様じゃないとね」

「でも直せるんですね……? なら、私は……直したいと思います」

「んにゃ。直すというか作り変えるレベルだけどね」


 さわさわ……。ふわふわのラーベのしっぽをてのひらですくい上げる。とてもいい。

 少しの間そうしていると、ラーベが首をお屋敷の外に向ける。


「うに、ウェルナークが帰ってきた」

「じゃあ、お出迎えに……」

「まぁまぁ、まだ寝てなさいよ。自分の家だし迎えがなくても大丈夫でしょ」


 ベッドから出ようとするのをミーナに止められる。

 話したいことがたくさんあるけれど、うまく言葉にできるだろうか。もう私はベルダ伯爵家に戻るつもりはなかった。とはいえ、博士は……どうしてあんなことをしたのだろうか? 全部、ベルダ伯爵家が関わっているのだろうか?


 結局、ラーベにもウェルナークにもミーナにも迷惑をかけてしまった。今のままでいいはずもなく――本当に色々なことが私の頭の中をぐるぐると駆け回っていた。

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